カテゴリー「黎明のカタルシス」の記事

2008年6月14日 (土)

第1部(第74話)

笑い声をたどりながらふいに覗き込んだその先には・・・いかにも風体の悪そうな連中が酒を飲みご馳走を囲み何も考えていないかのように笑っていた、なにかの宴なのか奥のほうには宝石や女に囲まれて笑う男が1人それを眺めていた・・・それを見てディルは一瞬でそいつがこのスラムのボスだと確信した、だが今時分1人で乗り込んで何が出来るだろうと迷っている・・・飛び込んで戦ったところで勝てるはずはないと頭では解かっていたが・・・だが戦わなければ周りの大人は自分を認めないだろうと言う葛藤が彼の中で戦っていた

「(僕はどうすればいい・・・このまま逃げるのか・・・・・・それともここで戦って、そんなことして僕が勝てるはずなんて・・・)」

一瞬足がすくんだようにも感じながらもディルはその様子を眺めながらまだ迷っていた・・・だがその均衡はすぐに打ち破られる、壁際から引きずっていたマントが見えたのか中にいた1人に見つかりその場で騒ぎが起こる・・・血の気が引くのを感じたディルも危険を感じその場を去ろうと走った・・・・・・子供がいくら全力で走っても大人の体力に敵うはずがない、その事はディル自身解かっていたが屋敷はほとんど迷路のように入り組んでいたため彼らをまく事は容易ではなかった、だがその反面脱出するルートも解からないまま彷徨う事にもなる事など知る由もなかった

「はぁ・・・はぁ・・・(危なかった・・・何とか逃げ切ったはいいけど、これからどこへ逃げればいいんだろう・・・きっと今頃騒ぎになってるんだろうなぁ・・・)」

そう思いながらもディルは何とか屋敷から出ることを考えつつ中を歩き回りながら出口を探した・・・だがそんなことが数日も続くはずがない、約2・3日経った頃疲れ果てて・・・眠ってしまったところを見つかってしまった、彼が次に目覚めた時には目の前にはスラムのボスと思しき男がそこにいた

「お前か・・・最近この辺をうろちょろしてるガキは?」

「ガキって・・・僕は子供じゃない!僕は・・・」

「親びん、こいつ例の・・・」

「ああ・・・そうか、お前か・・・北側にある塔に住んでるって言ういっぱしの組織まとめてるガキは」

「・・・・・・」

「まあいい・・・後でたっぷりと吐いてもらうとするかな、連れてけ!」

男の命令でディルは屋敷の地下まで連れて行かれた、自分がいた塔よりも暗く恐ろしい気配のするそこは・・・彼にとって最悪の世界である事は目に見えていた

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2008年6月 7日 (土)

第1部(第73話)

ルチルの一件から数時間後・・・部屋に閉じこもったディルは自分の力のなさを実感していた・・・・・・もっと自分に力があればルチルを止められたかも知れないと後悔していたが翌日には何を想ったのだろう・・・誰の目にも触れぬように塔を抜け出しそのまま街の中を歩き、彼が最初に向かった先は病院だった・・・

「(確かに今はルチルの事は心配だけど・・・僕に何が出来るというんだ・・・今の僕になにが・・・・・・)」

病院の窓からルチルの様子を覗き見ようと何度も試みようとするもなかなか決心が付かずすぐに諦めてしまう・・・やがてそそくさと病院を後にしたディルは街中を歩き回りなにかを模索するように考えながら足を進める、だがしばらくして一瞬我に返ると・・・そこはもう街はずれのスラム街だった

「・・・あれ?」

ディル達の構えているナイトメアスティング本部のある塔を挟んで街の北と南では治安がかなり違っている、塔自体はほぼ北寄りのためディルの今いる場所よりは治安はいい方だ・・・と言うのも北側は大半彼らの力の影響もあってか南のスラムより事件が起こる事はまず少ない・・・だが今彼のいる南側は違った、そこは盗賊や殺人者などが多く集まり気がつけば地元の保安隊でさえも手を出せないほどの無法地帯と化してしまっている・・・それでもディルの父親が生きていたころはまだ今より治安はいいほうだった、それが彼の死で一気に均衡が崩れ今のようになったとディル自身それは自覚していた

「何で僕こんなところに来ちゃったんだろ・・・(とにかく早く帰らないと多分みんなが心配する・・・でも・・・今はそんなことを考えている余裕なんてないはず)」

何を想ったのか、ディルは引き帰すどころかどんどん先のほうへと進んでいく・・・路地裏をいくつか進んだ先には多少雑に組み立てられた屋敷のような建物がどっかりとそこにあった・・・彼らはそこを根城にして暮らしていると踏んだディルは迷うことなくその門の中へと入っていく、その中は想ったよりも静かでまるで人の気配を感じられなかった・・・だがどこかに潜んでいるとも限らない事をうすうす察しながらも先へ進むと奥のほうで笑い声が聞こえてきた・・・1人でこんな場所に乗り込んだことを内心後悔しながらも好奇心の方が強いせいかその声のするほうへどんどん進んでいった

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2008年5月31日 (土)

第1部(第72話)

ルチルが退院した翌日、彼女はナイトメアスティングのアジトでシノ・リゼルグと共にラキルの事について相談をしていた・・・ルチルも医者から事情を知るまでは何も解からず・・・また事情を知った今でも状況を把握することがほとんど出来なかった

「ラキル殿のお腹の子は国を滅ぼしたものの子供だったとは・・・また複雑な状況だ」

「そうだよね・・・とりあえず外部の情報はソムニルが極力全力で調べてるし、ラキルにはジェムカも付いてるから多分大丈夫だろうけど・・・今の俺達がボルクに勝てるなんて絶対に難しい」

「そうよね・・・私もラキルの事ほとんどよく解からなかったけど、無事に生きててよかったって・・・想いたかったけど・・・・・・あんなことになるなんて想わなかったもの・・・私・・・どうしていいか全然解からないし・・・」

俯いたまま彼女は涙をごまかす様に突っ伏していた・・・だがこれ以上どうすることも出来ないことも解かっていたルチルは自分自身に腹が立って仕方がない、そんな感情がずっと燻っていて何も出来ず手を拱くだけの自分の姿を恨めしいとさえ感じている

「私は・・・どうしたらいいのかな・・・・・・ラキルのお腹の子はあの男の子供だって知っていながら助けることも葬ることも考えられない・・・実際手をかけようとした連中はラキルがみんな殺してしまった・・・普通に考えたらラキルがそんなことをするはずがないって信じたかったけど・・・それも私のわがままで変える事なんて出来やしない事実だって解かっているのに・・・何を考えてるの、私・・・」

「ルチル殿・・・」

「お願い・・・一人にして・・・・・・」

言われるがままにシノとリゼルグは部屋を後にする・・・部屋を出た二人は同じように部屋に引きこもったままのディルの元へと向かい様子を伺うと部屋に鍵はかかっておらずそこには彼の姿はどこにもなかった、それに組織の者が気づいた時彼は塔から姿を消していた・・・当然の事ながらそれを知ったほとんどの者は彼を探しに街中を走り回りリゼルグやシノもディルを探した

「いくら組織をまとめる者としての立場があるとは言えあのものはまだ子供だ・・・大方責任を感じて家出したというのが自然だろう」

「でも数日も前から引きこもってたんだよ、それがいきなり家出って言うのもおかしくないかい?」

「あの年頃の者は複雑なのだろう・・・細かい事は拙者にも解からん」

「言ってくれるなぁ・・・でも・・・・・・こういう時ソムニルがいたらもっとすぐに見つかるのかなあ?」

「かも知れないな・・・だが今は拙者たちの手で出来るだけすぐ見つけたほうが早いだろう」

「それもそうだね・・・」

この時になってリゼルグは改めて自分がパーティをまとめるリーダーとして足りないものを見た気がした・・・とは言ってもディルとは規模があまりにも違いすぎるというのもあってか戸惑いも感じている・・・だがこのままディルを見過ごすわけにも行かないと言うのが彼の中では一番強かった

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2008年5月24日 (土)

第1部(第71話)

ルチルが倒れてから約数時間が経った・・・ほとんどの怪我や傷は何とか治療を完了させたものの出血がひどいのと衝撃が強かったせいか彼女の意識はまだ戻ってはいない

「ルチル殿は・・・大丈夫、彼女のようなものがそう簡単に死ぬとは到底思えぬ」

そういいながらシノは苛立つ気持ちを何とか押さえつけながら別の部屋に運ばれたルチルのそばで成り行きを見守っていた、そして同じように自分の猜疑心と戦っていたものがもう1人・・・

「みんな・・・みんな僕のせいだ、僕がもっとちゃんとしていれば・・・ルチルはこんなことにならないで済んだのに・・・・・・」

レジスタンス組織をまとめるものとしては仲間の危機を見過ごすわけにも行かなかった、だがそれを止める術を持たない彼にとってそれがどれだけもどかしいものか・・・そう感じさせる空気が部屋中に伝わりその場にいたものも一瞬凍りつくとすぐになにかに気圧された様にしばらくの間静まり返る

「やはり彼のようなものをこの組織をまとめるものとしてはふさわしくないのではないだろうか・・・」

「だが彼は先代の残した最後の希望だぞ、子供とは言え見捨てるわけにも行くまい・・・・・・とは言えこのままではなんともいえんな」

「そもそも彼をリーダーにした時点でこのような間違いが起きてしまったではないか」

などという話が彼の知らないどこかで聞こえていそうな・・・そんな疑心暗鬼な感情が自分に向かってくるのではと不安な気持ちでいっぱいになる、どういうわけかこの日を境にディルは部屋から一歩も外へ出なくなってしまっていた・・・

あの戦闘から約1週間後・・・

「おめでとうルチル様、無事に回復してよかったですよ」

「ええ・・・みんなには面倒をかけてしまったわね、まぁ・・・おかげでこっちは何とかなったんだけど・・・・・・」

ルチルは何事もなかったかのように回復しすぐ退院した、意識が戻らないと想っていたのはただの気絶で治療を終えた約2日後に目を覚ましあっという間に回復したのだ・・・今まで以上に歩き回れるまでに回復した彼女は何を想ったのかラキルのいる部屋へと向かっていった、だがそこにはラキルの姿はなく部屋中赤茶けたような模様がいくつか残っていただけだった

「ルナティア・・・これは一体どういうことなの?ラキルはどうしたの・・・ねぇ!」

部屋の様子を一瞬で察したのか錯乱したようにルナティアの肩を掴み掛け揺さぶりながら叫んだ、ルチルのあまりの形相に動揺したルナティアは部屋で起こったことをすべて説明する・・・それを聞いたルチルはショックのあまりその場に座り込んでしまった・・・ルナティアもこんな話をすること自体気が引けていたがラキルの起こした惨劇をそのまま黙っているわけにも行かず思わずしゃべったことを少しだけ後悔したと想った、そのラキルはと言えば・・・

「やはり原因は今のところ不明か・・・」

「あそこまで発狂し人を大量に虐殺するほどの力・・・こんなことが何度も続けば彼女だけではない、彼女の中の命まで危険に晒しかねない」

病院の地下で何人もの医者がラキルを調べているが彼女の力に関してはほとんど不明のままだった、だが彼らの力でいくつか解かった事は・・・ラキルの中にいる子供がボルクの子供であることとそれが双子であること、それと・・・それらの因果関係でラキル自身の体にも大きな影響を及ぼしたということだけで詳しい事はほとんど解からずじまいだった

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2008年5月17日 (土)

第1部(第70話)

街へと戻った彼らは病院へルチルを担ぐとそれを見つけた医者は手術室まで彼女を運ばせる・・・後は彼女が助かるかどうかの瀬戸際の問題・・・それまではどうすることも出来なかった

「ここからは・・・ルチル次第だよ」

兵士の一人にリゼルグがそう声をかける、彼はルチルの近衛兵騎士団見習いで何事もなければ晴れてその一員になるはずだった・・・だがこうして目の前の護るべき存在が命の危機に瀕しているこの状況下・・・さすがに冷静でいられるはずはなかった

「すみません・・・私達がもっと強かったら、ルチル様をこんな危ない状態にすることもなかったのに・・・・・・」

「あなた方はよくやった方です・・・俺は、あなたのような人を憎んだり恨んだりはしません・・・」

「リゼルグさん・・・」

「ただ・・・ルチルの行動力にはいつも驚かされるけど、今度ばかりはちょっとやりすぎたな・・・・・・」

涙ぐんだような目で彼はリゼルグが拾った槍のベルステルとアスティルの国旗を握り締め俯きながらそっと涙を流す・・・それを見て軽くため息をつきながらリゼルグはその場を離れる、ルチルが運ばれたことを知ったジェムカも手術室の前で落ち着きなくドアの前をうろうろしていた・・・

「・・・(ルチル・・・大丈夫かな・・・・・・こういう時俺何も出来ないから本当にどうしていいか解からないし・・・)」

「ジェムカ殿・・・少しは落ち着いてはどうだ?」

あまりにも落ち着かないジェムカに業を煮やしたようにシノが嗜める、ソムニルはナイトメアスティングのアジトへ向かいこれまでの経緯をすべて話すが大半の者は同様を覚え中には彼の話を信じようともしない者も現れる始末だ・・・ソムニル自身本当はどこからが現実でどこからが夢なのか・・・解からないまま頭の中でのすべてをまとめ上げようとしていた・・・だがどんなにあがいてもそれが現実だという事実に変わりがないことでまた絶望を覚える

「・・・はぁ(俺何やってるんだろ・・・なんか、訳の解からないまま突っ走って訳の解からないうちにすべてを失う・・・・・・いつもそんな繰り返しのように思えるな)」

樹海で起こったあの悲劇を・・・彼はまた繰り返すのではないのかと内心不安に想いながら自分でどう行動すべきか、少し迷い始めていた・・・・・・毒術師がハルニムと手を組んでいる可能性が否定できない以上下手をすれば自分だけでなくみんなをそれこそ危険に晒しかねないし最悪の状況になれば・・・なるだけそんなことを考えたくはなかった、そうさせないためにもソムニル自身身体を震わせ零れ落ちそうになる涙を必死にこらえていた

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2008年5月10日 (土)

第1部(第69話)

玉座の間に近づいたリゼルグ達はそのドア越しから大きな物音が聞こえるのを感じた・・・一瞬3人はその物音が目の前の大きなドアで聞こえたのを察したのか焦るように走り出しそのドアを開ける・・・その先には真っ赤な血の海に沈んだルチルと玉座からそれを眺めてほくそ笑む返り血を浴びたような赤い服を身にまとった男、その間にはなにか強い力でボロボロに割けたルチルの槍が転がっているのが見えた

「ルチル・・・」

「間に合わなかったか・・・」

「という事は・・・こいつが」

ソムニルはなにかを察したのか男の方を睨み付ける、自分達の集落を焼き払い家族を殺したのがそいつだと彼自身察していたのだ・・・リゼルグとシノはルチルの身体を起こしながらその男に恐怖を覚えながらも漂う緊張感の中で彼の動向をじっと見ていた

「その女・・・ルチル姫は私に刃向かいそして死んでいく・・・・・・なんとも哀れな運命だと想わないかい」

「ふざけるな!誰もあんたの思い通りなんてさせてたまるか!!」

「ソムニル殿・・・今の拙者達でこやつに勝てるとは到底思えぬ、それにルチル殿はまだ生きてはいる・・・だが一刻の猶予を争うのも確実だ」

「だけど・・・こいつは俺の・・・・・・俺達の未来を奪ったんだよ!そんな奴を野放しになんて・・・」

「・・・シノさんの言うとおりだよ、ソムニル・・・・・・とにかく今はルチルを助けることを優先させよう」

「リゼルグ・・・」

ソムニルは悔しそうにうつむきリゼルグ達の元へ駆け寄るとルチルの身体を支えながらリゼルグとシノの肩に彼女の腕を乗せそのまま部屋を後にした・・・背後には男が笑いながら彼らを見送るように威圧をかける・・・まるで自分が捕食者であるかのように・・・・・・

ルチルを抱えた3人は兵士達の元へと戻ると怪我の軽い者を集め彼女の治療に当たらせる、ルチルの連れたベルステルの兵士の中に衛生兵は数えるほどもいなかったが半数近くの者は薬草などに長けていてルチルの傷の大半は近くにあった草などを使いある程度のものまでは彼らの手で手当てをすることが出来た・・・だが大量に流れた血や胸に受けた大きな傷はさすがに彼らの力でも限界がありルチル自身助かるかどうかもわからない状況であることに変わりはなかった

「ルチル様・・・しっかりしてください」

「やはりここでは無理があるか・・・」

「ああ、一度戻ってルチル様を助けなければ・・・」

兵士達で動ける者をかき集めると急いでルチルを街へと移動させる準備を進める、リゼルグ達もそれを手伝いながらルチルの容態を見守っているがあれだけ無茶な戦闘をしても彼女自身はまだ戦うことを諦めていないのか壊れた槍のかけらをしっかりと握り締めていた、やがて彼らは乗ってきたボートに乗り込むと大急ぎで街まで戻っていった・・・

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2008年5月 3日 (土)

第1部(第68話)

ルチルとボルクが戦いを始めるその少し前にリゼルグ達3人はハルニム帝国の城の前まで来ていた、その周辺にはルチルが率いていた騎士や兵士達がハルニムの兵士達と交戦し倒れている姿がいくつも見えていた・・・・・・

「これは・・・」

「ルチルの奴・・・無茶してなきゃいいけど」

「確かに・・・彼女は戦士である前に滅んだとは言え一国の皇女だ、彼女の存在がなければ国を復興することなどまず出来ないよ」

「そうだな・・・拙者達でルチル殿を止められればいいのだが」

「でもルチルの事だからもう手遅れって可能性もあるんじゃないのか・・・?」

「そんな事は・・・多分あるかも知れないけど、でも俺は・・・彼女を信じてみたいんだ」

リゼルグはルチルが無事でいることを切に願いながらその拳を強く握り締める、ソムニルとシノも何かを感じたのか一瞬笑いかけ二人でソムニルの肩をたたきながら彼の想いに答えるように前を進む・・・今のこの3人に迷いはない、彼らは何かを確信していた

「リゼルグがそう言うのなら・・・俺は最後まで付き合うよ」

「拙者も、ルチル殿の無事を願うのなら最後まで戦うぞ」

「みんな・・・・・・ありがとう」

3人はルチルへの思いを胸に誓い城へと入った、城の中は交戦の跡がいくつも残っており中には負傷した兵士達が敵味方問わず倒れている姿が彼らの目の前にあった・・・中には生きているのかさえ解からない者もいたが誰一人リゼルグ達に声をかけるものはいなかった・・・皆生死の間を彷徨っている者たちが多いのか彼らに生気は感じられない、誰が生者で誰が死者なのか区別が付かないほど疲弊している者が多く自分達が死ぬか生きるかの瀬戸際で頭がいっぱいなのだろうか、リゼルグ達に声をかけないというよりかけようにも自分達の事で手一杯でいるせいかそれどころでもない状況で自分達が死ぬか生きるか・・・それだけで皆精一杯だった

「かなりひどい状況だな・・・拙者達で何とか助けたいが今はルチル殿が心配だ」

「そうだね・・・」

リゼルグも内心その場にいる兵士達を助けたいが今はルチルがどうなっているのかが気になって仕方がなかった、それよりもなによりも彼自身街に残したジェムカの事も気にはなっていたが今はルチルを助けることが自分に出来る最善の方法だとリゼルグ自身が信じている・・・その事はソムニルとシノもどこか理解しているのかそれ以上の事は口にすることはなかった・・・・・・とは言う物のこれまでのルチルの行動を知るリゼルグとソムニルは内心ルチルの身になにかあってからでは遅いという不安もよぎっていた事は言うまでもない話だ

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2008年4月26日 (土)

第1部(第67話)

妹ラキルのために戦うルチルはラキルの異変を知ることのないままボルクの前に立ちはだかるように戦闘体制のまま攻撃の機会をうかがっていたが隙を見つけることが出来ないのかいつまでも先へは進めないまますでに数時間が経とうとしていた

「どうした・・・かかってこないならこちらから行くぞ」

ボルクは余裕のある口調でルチルに近づく、だが彼女も危機感を覚えたのか距離をとるように後ろへ下がる・・・だがすぐに彼女の背後の壁がそれを遮り動きが止まった・・・・・・ルチルの顔色が一瞬で青ざめボルクの気迫によって足元が竦むのを感じていた

「さっきまでの威勢はどこへ行ったのかね、ルチル・エルドリヒ」

「うるさい!私は・・・私は・・・・・・」

明らかに自分の声が上ずっているのは動揺している証拠だと一瞬確信する、だがここで逃げたら何のためにここまでやってきたのか解からなくなりそうでルチル自身何かを恐れていた・・・・・・それでも彼女は何とか最後の気力を絞るように目の前の男に向けて槍を構え恐怖と緊張で震える足元を何とか押さえ込もうと踏ん張るがそれでも目の前の男はなおもルチルを威圧する

「私にも・・・まだ護らなきゃならない人がいる・・・・・・護らなきゃ、私が・・・」

「ラキル姫は・・・どこへ行ったのかな?」

「ラキル・・・そうよ・・・・・・ラキルはあなたが汚した・・・だから、だから・・・だから私はここへ来たんだ!!」

ボルクの言葉で彼女の怒りと焦りは一瞬にして頂点へと達し、絶叫とともにボルクの元へと駆け出し手に持っていた槍を突き立てるように向け・・・その身体に突き刺した・・・・・・はずだった、ルチルの持っていた槍はボルクの体に触れた瞬間破裂音とともに先端から裂け、手元までそれが来ると彼女自身も何かものすごい力に押されるように後ろの壁へと突き飛ばされ衝撃と同時に身体中にいくつもの大きな傷を負いその場で伏せるように倒れこんだ

「ぐあぁっ・・・!」

薄れ行く意識の中でルチルは真っ赤になった目の前の光景で・・・自分が倒すべき男がほくそ笑みながらこちらを見ている姿が映っていた、目を閉じると・・・・・・ラキルが自分を呼んでいるような・・・そんな声も一瞬だけど聞こえた気がしていた

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2008年4月19日 (土)

第1部(第66話)

ラキルの目線はどこかおぼろげに何を見ているのかルナティアには解からない・・・だが今の彼女が危険であることはどこかで察知していた、そう感じていたとき彼女の脚は恐怖と緊張で震えその場から動くことすら出来ないでいた、ラキル自身の気配は周りのものを凍て付かせるほど残虐なものを漂わせながらただそこにいるものに恐怖を与えるには十分なほどの気迫を持っていて触れようものならその場で自らの命を奪えるほど恐ろしいものだった

「ラ・・・ラキル・・・・・・様?」

意を決したルナティアは何とかラキルに近づこうとゆっくり部屋の中へ入ろうとする、目線を合わすまいと足音を立てないよう匍匐前進でラキルの元へと向かう・・・ところがベッドの真下までたどり着いたとき、突然大きな物音が上から響く・・・思わず頭を上げ様子を見ると・・・ラキルはベッドの上で突っ伏していた

「ラキル様!!」

ルナティアはラキルの体を起こし安否を気遣うも彼女自身命の別状はなくお腹の中の子供もそれほど影響を受けてはいなかった・・・だが今のは何が起こってどうなってしまったのかそれを見たルナティア自身理解する事はほとんど難しい話だった、程なくして騒ぎを聞きつけた医者や看護婦達がその惨状を見るや否や死んだ戦士達の死体を運び出しルナティアもラキルを別の病室へと運びこむことになる・・・だがこの時誰も気づくことはなかった・・・・・・ラキルの中で大きな異変が起こり始めていることに

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2008年4月12日 (土)

第1部(第65話)

彼女の怒りはどこまでも果てしなく燃えるようにただ一点に集中させていた、だがそんな彼女の思いをあざ笑うかのように彼はそこにいる・・・

「私の妹に手を出した罪は重いわ・・・それに私の大事な人達を傷つけ私の国を滅ぼした・・・・・・あなたは私に恨みでもあるというのか、それとも・・・」

「ルチル・エルドリヒ・・・お前は何も解ってはいないようだ、所詮はただの小娘と言うことか」

「黙れ!!この・・・」

怒号を発したルチルの声は一瞬詰まった・・・どう返していいか解らないほどの怒りに彼女はうち震えている、今ここで目の前にいるボルクを倒すことはそう難しいことでもないのに動揺しているせいなのか・・・それともこの男の気迫に気圧されてるのか、ルチルの足はその先へ進むことを拒んでいるようにも感じた

「どうした・・・そこまで私が憎いか?ならばなぜそのまま来ない・・・?」

「・・・・・・」

一瞬心を見透かされたようにルチルは焦った、だがこれ以上自分に何が出来るのか・・・それすらも考えてしまう・・・・・・このままこの男を倒せば全ては終わる・・・だがラキルのお腹にはこの男の子供がいる事が・・・彼女にとって最大の足枷となり彼女の思考と動きを鈍らせていた

同じ頃・・・病院内ではラキルの病室前で何人かの戦士達が押しかけるように集まっていた、彼女の様子を伺いに来たルナティアは彼らの動きを察し病室のドアの前に立ちはだかる

「一体何事ですか!」

「この中にボルクのガキを孕まされたって言う女がいるって噂を聞いて何人か集めてきたんだよ・・・そのガキを殺すためにな」

「待ってください、ラキル様はまだ病状が思わしくないんです・・・面会謝絶なんです!!」

「どけ!お前じゃ話にならねぇ!」

男の1人はルナティアを突き飛ばし病室のドアを強引に開けるとそこにはラキルがゆっくりと眠りについていた・・・彼女は自分の身に降りかかる危機など察する様子のない表情でそこにいるがルナティア1人では戦士達を止めることなど敵うはずもなく彼らの剣は今まさにラキルに向けられようとしていた、このままではラキル自身が危ない・・・ルナティアはそう感じてはいるものの自分の非力さを悔いるかのようにその場から動く事も助けを呼ぼうと声をあげることも出来なかった、だが彼らはそんなルナティアに構う事無く眠っているラキルに剣を向ける・・・届かない祈りに目を背けようとしたその時・・・突然男達の動きが止まり空気が一瞬凍りついたかのように冷たい気配が部屋一体を漂ってきた、再びそこに目をやると・・・・・・そこには男達が自らの剣で血を流し倒れる姿が数多く見られベッドの上ではラキルが氷のように冷たい視線をそこに向けたかと思うとルナティアを見つけそっと笑っていた

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2008年4月 5日 (土)

特別編 その10

ナイトメアスティング・・・それはかつてアスティルに使えていた騎士やアスティルと同じようにハルニムに滅ぼされた国々の戦士達の集まる組織、現在それを指揮しているのは若干12・3歳の少年だった、彼はかつて組織を指揮していた両親の遺志を継ぎ組織をまとめる存在となってはいるがまだ誰も彼をそうと認めるものはいなかった・・・実力を買われたシノ・リゼルグ・そしてベルステルの生き残りと再開したルチルは組織の仲間として活動を始める・・・だが素性の解からないジェムカは内心不安を覚えていた・・・・・・そんな中リゼルグが助けた女性が病院へと向かった時ルチルはショックを隠せなかった・・・自分と血を分けた双子の妹ラキルの変わり果てた姿に彼女自身怒りを震わせついに兵士を率いてハルニムへと旅立つ、リゼルグ達からラキルを任されたジェムカもまた自分の過去の片鱗を垣間見る・・・そしてルチルは自らの手で決着をつけるべくボルクの元へとたどり着くが・・・・・・

この先に待ち受ける未来とは?果たしてその先に何が見えてくるのか・・・第1部もいよいよ終盤です

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2008年3月29日 (土)

特別編 その9

マツカゼの剣士シノは数年前のアスティルでの紛争の際母親を亡くしている、その事実を知る父や周りの友人達は極力彼女の力になろうと精一杯の振る舞いで彼女を慰めていた・・・だが彼女も悟っていたのか自分でそれを避けることもあったが彼女に見えていたのはもはや母の面影と剣だけに見えた・・・そんな折彼女は突然マツカゼを出て直接ハルニムへと乗り込む、が途中でハルニム軍と遭遇し戦闘の末ジェムカたちにより救出される・・・そこで彼女を助けた街には「ナイトメアスティング」というハルニムに対抗するレジスタンス組織が存在していた

来週で特別編は終了します、再来週からはいよいよ第1部クライマックスです

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2008年3月22日 (土)

特別編 その8

今回はその1でやってきたこれまでのストーリーのまとめを簡単にご説明させていただきます

エアルク帝国にたどり着いたジェムカ達はそれぞれの過去を語る・・・ハーフエルフのソムニルは樹海の炎上により家族を亡くし、そのためジェムカを探しともに行動を取ればいつか仲間や家族の仇をとれると考えていた、同じように家族を奪われたルチルも新たな誓いを胸に再びエアルクを旅立ち東の国マツカゼへ向かう途中リュウシロウと出会う、彼はマツカゼの御庭番でアスティルやベルステルの情報集めの帰りでマツカゼの国王に会うと言っていたジェムカたちを案内する・・・・・・だがそこでパーティに亀裂が走り4人は散り散りになってしまう

ジェムカは散々迷った挙句「人斬り小町」の娘であるシノと出会い彼女の世話になる、リゼルグは御庭番達の酒盛りに巻き込まれ、ルチルは1人でも妹を助けたい一身だけで山を登り体を壊しかけた・・・城の動向を探っていたソムニルはそこで大臣の行動を不振に感じながらも仲間と合流し対策を立てるため一度城へと集まった

多分ペース上は多少遅くなるとは想いますがまとめられるだけまとめて行きますので次回もお楽しみに

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2008年3月15日 (土)

特別編予告

来週の土曜日から3週にかけて特別編をお送りしたいと想います、内容はこれまでのストーリーのまとめを中心にお送りしたいと想います

前回アップした特別シナリオはまた別の特別編のときに載せる予定となっております、夏休みの特別編ごろにはそれと同時に第1部のまとめも載せますのでお楽しみに

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2008年3月 8日 (土)

第1部(第64話)

ハルニム帝国・・・かつてはアスティルの政策大臣だった男が恐怖政権で治める国として近隣のもの達が恐れをなす国となっている、だがそんな皇帝を倒すべく立ち上がったルチル達旧ベルステル軍は城へ乗り込んだ瞬間から戦闘を繰り広げていた・・・皇女ルチルを先頭に彼らはひた走り自分達の国を滅ぼした張本人を血眼になって探しその途中で数多くの人間が血を流し敵味方問わずみな倒れていく、彷徨いながら走り回って行くうちに玉座の間へとたどり着いたのは彼女1人・・・そしてその目の前には最も憎むべき男がその玉座に堂々と腰を下ろしていた

「見つけたわ・・・ベルステルを滅ぼした私達の敵」

その男は城の騒ぎと目の前のルチルを相手に動じることもなくただじっと見つめているだけだった、ルチルは彼に対し槍を向けながらじりじりと近付き攻撃の隙をうかがう

「お前は・・・ベルステルの皇女だな、もう1人の皇女は私の手の届かないところへ逃げてしまった・・・・・・お前を探すために」

「そうでしょうね・・・ラキルの事は私もいろいろな意味でショックだった、やっと見つけたと想ったら彼女の中には新しい命が宿っていることに・・・」

「知ってるのか・・・」

「ええ・・・私だって何も知らないほどバカじゃないわ、あなたは・・・私のたった一人の・・・・・・大事な妹を傷モノにした・・・あなただけは・・・・・・あなただけは許すわけにいかない!!」

顔を上げたルチルの目には涙が溢れるほど浮かんでいた・・・ラキルを護れなかった自分の無力さ、そのラキルに何も出来ないふがいなさ・・・それよりも何よりもラキルに手を出してのうのうと自分の目の前にいる敵を前にしての怒りが彼女の涙の証となっていた、それを思うと彼女はさらに涙をあふれさせ目の前にいる男を睨みつけながら攻撃のチャンスを待ってみるが先ほどから動じることのないその男は余裕の笑みでルチルを見ていた・・・そして彼女は確信した、この男・・・ボルクには隙がない事に・・・・・・だがここで引き下がるわけには行かないと感じさらに槍を向けながら近付いていった

「どうした?それで私を倒そうというのか?」

「確かに・・・今のあんたに隙があるとは思えない、でも私だってプライドがあるの・・・・・・ベルステルの皇女というプライドがね」

「それはまた結構な話だな」

「あんたは私の半分を傷つけ・・・それでも平然とそこにいる・・・・・・許せない、そう言うのって・・・許しちゃいけない気がする」

声を震わせ怒りをあらわにし・・・今目の前にいる男を手に掛けたいとルチルは心から願っていた、自分達の未来を踏みにじったこの男だけは絶対に許すわけに行かないと胸に抱きながら・・・

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2008年2月16日 (土)

第1部(第63話)

ジェムカは赤ん坊の自分の姿を今実感している・・・きっと心の片隅に忘れたはずの記憶の断片が何かのきっかけで呼び起こされたのだと想っていた、だが次の瞬間ジェムカが顔を上げると赤ん坊は姿を消し国王達も消えていた、しばらく彷徨うように城の中を歩くとやがて大きな部屋へとたどり着いた・・・そこには5つくらいの子供が部屋中を駆け回り召使や乳母と遊んでいる姿が見える・・・その子供はジェムカに気づくと手を振り呼びかけてきた

「こんにちは・・・」

「あ・・・こんにちは」

突然の呼び掛けに戸惑いながらもジェムカは微笑みながらその子供の元へと向かう、その子供はジェムカの手を握った瞬間周りの者達と共に姿を消す・・・辺りを見回すが一瞬で人の気配が消えてしまい一気に不安がよぎる、そう想いながらもジェムカは部屋を後にしようとした・・・するとドアノブに手を掛けた瞬間突然熱のようなものが通り過ぎるのを感じ想わず身を引くがその後に窓から熱風が吹き外からかすかにだが炎のようなものが見える、だが廊下に出ると熱気は感じるものの火の手の気配は感じられない・・・いよいよ不安に駆られたジェムカはそのまま中庭の方へと走り出した、するとそこには炎の中泣き叫びながら両親を探す子供の姿が見えた・・・その子供はさっき見た子供と似ているが少し成長している・・・・・・その時ジェムカは一瞬その場に倒れこみ頭を抱え込んだ

「くっ・・・う・・・・・・うわああああああ!!」

そんな彼の目の前で泣き叫んでいた子供は急に大人しくなりジェムカの方へと歩き出した・・・

「ねぇ・・・お兄ちゃん、僕の事・・・・・・覚えてる?」

「・・・・・・?」

子供はジェムカの方へ近づき彼の手を取るとそっと微笑んだ、目線があった瞬間ジェムカは一瞬これと同じ光景を自分も見たような・・・そんな出来事をまるで自分が体験したような・・・・・・そんな錯覚にさえ感じていた、だがその次の瞬間子供の元へ騎士が1人駆け寄ってくる足音が聞こえてきた・・・その騎士は子供を見つけるとすぐに抱え上げ炎の中走り出して行った一瞬見えたその騎士の顔は・・・ジェムカのよく知っている彼女そのもので自分が死んだ時に「忘れてくれ」と言っていたあの騎士・・・・・・リーチェだった

「・・・し・・・・・・師匠」

追いかけようと立ち上がるが足が想うように動いてくれない・・・体を想うように動かせないもどかしさで半ば諦めかけた時、さっきリーチェの出て行った場所から1人の女性が倒れこむのを見つけた・・・背中から大量の血を流し息を荒げながらもすぐに立ち上がり向かってくる敵をその場で斬りつけながら彼女は城の中へと進もうとする、だが扉の前にたどり着く直前で彼女はまた倒れこんだ

「く・・・そ・・・・・・あと少し、もう少しで・・・」

彼女がその時何を言いたいのかは解らなかったが命が事切れる直前・・・たった一言呟きながら伸ばした手をたたき付ける様に意識をなくした・・・・・・・「シノ・・・ごめん」と小さな声でそう言っていたのがジェムカにも聞こえた気がした

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2008年2月 9日 (土)

第1部(第62話)

仲間達の帰りを待つジェムカは1人でラキルの側でみんなのことを考えながらも目を覚ましては発狂を繰り返す彼女を見張っていた・・・ルチルやリゼルグ達が旅立ってからその症状の間隔は徐々に短くなり数日後にはジェムカの眠りさえも許されないほどひどくなっていた、ジェムカ1人ではこのままラキルの不安定な精神面を支えきれなくなる事を示唆したのか医者はラキルに鎮静剤を毎日打ちジェムカは彼女の元を離れ一人病院の近くの宿屋に避難する形で彼はそこに隔離された

「(ラキルさん・・・大丈夫かな・・・・・・)」

さすがに不安は残るものの半日も経って日が暮れれば彼はすぐ眠りに付いた・・・発狂したラキルを押さえ込んだり医者を呼ぶのに走り回ったりで体力を消耗しきったのも要因の一つだ、彼はそれまでの疲れを忘れるかのようにその場で倒れこむ・・・下の階で宿泊客達の酒盛りを気にする様子もないまま彼の眠りは深くどこまでも遠くに感じるほど・・・その時彼は思考そのものをフリーズさせながらいろいろな事を思い出すような夢の世界へと向かって行った

ジェムカの目の前には華やかな町中の風景と大通りを行進する国王と王妃の姿、そして王妃の腕には小さな赤ん坊がすやすやと眠っているのが見えた・・・

「ここは・・・一体、それに・・・・・・俺はこの光景を知ってる・・・のかな?」

自分が今見ている景色を疑りながらもジェムカは先へ進むようにその行進の後を追っていく、行進を追いかけていけば何か解るかも知れない・・・彼は何かを確信していた・・・やがてその行進は城の中へと入って行き門が閉まり切るギリギリでジェムカも駆け込む・・・だが彼が入ろうとしたその時になって門の前の兵士達はそれに気づく様子を見せなかった、振り返ると兵士達は門が閉まったのを確認するとまた元の場所に立って見張りを続けているだけの様子にジェムカは不審に想い思わず兵士達の前に立って声を掛けてみる事にした、目の前で手を振ってみたり大声で叫んだりしながら気づくかどうか確かめるがやはり彼らはボーっと立って城の前であくびをするだけに過ぎない・・・結局ジェムカは関わるのを諦め城の中を歩くことにした

「(何で誰も俺に気づかないんだろ・・・もしかして俺・・・・・・夢でも見てるのかな?そう言えば病院から出てルナティアさんに宿屋に連れられて・・・その後は・・・・・・何があったんだ?何にも覚えてない・・・いや、そんなはずは・・・・・・)」

城の中を歩きながらジェムカはふと考えてみた・・・たとえ夢の中だとしてもこんなに鮮明な風景が夢であるはずがないと疑い試しに自分の頬をつねってみた・・・すると確かに痛みは感じるし風景は変わらないところを見ると夢ではないと確信を得る、そう実感し彼は国王達のいる謁見の間へと向かうがほんの少し歩いただけですぐにたどり着いた・・・彼自身この城の事はよく知らないしそんな簡単にたどり着けるはずはないと不審に想いながらその大きな扉をあける・・・そこには国王と王妃が赤ん坊と戯れている光景がジェムカの目に飛び込んでくる、それを見た瞬間彼は思わずその場で涙を零した

「(なんで・・・なんでここはこんなにも暖かくて懐かしいんだろう・・・・・・俺は、この光景を・・・この場所を・・・・・・知ってる)」

さっきまで両親にじゃれていた赤ん坊がジェムカに気づき、彼らの元から離れ四つんばいでジェムカに近づいてくる・・・その満面の笑みはまるでジェムカを知っているかのように・・・・・・涙を流しながらジェムカはその場に座り込み近づいて来たその赤ん坊をそっと抱き上げた、赤ん坊の手元にはジェムカが持っているペンダントと同じものがしっかりと握られていて彼もまたそのペンダントを取り出しながら同じものを見比べるとそれは間違いなくジェムカが持っているペンダントそのものに間違いはなかった、その時彼は確信した・・・今自分が抱いているこの赤ん坊は・・・・・・生まれて間もない幼い頃の自分自身だと言うことを

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2008年2月 2日 (土)

第1部(第61話)

ルチルの追跡を開始したソムニル・リゼルグ・シノの3人は最後にシノが交戦したと想われる岸辺まで船を向かわせる・・・あの時の戦いからかなりの時間が経過しているためシノの頭では多少うろ覚えの点も多くどこでどうなったか曖昧なところもあるが現場に付くと彼女の目つきはあの時と同じように眼光の鋭い眼差しであの時の状況を思い出すように記憶をめぐらせていた、身体のあちこちにまだ痛みと血の流れる感覚を頭の中で思い浮かべつつ彼女は先頭を歩いていく・・・多少何度もよろめくが先を急ぐように彼女は重い足取りのまま進んで行きたどり着いたのはあちこちに草の生い茂る獣道だった

「この先を進めば恐らくハルニムへ着けるはず・・・だが何があるかわからぬ、油断はするな」

獣道の中を進みながら3人はそれぞれ先を急いだルチルや街に残したジェムカとラキルの事を考えていた、もしルチルに何かあったらラキルはどうなるとか・・・ラキル自身に何かが起こればそれをルチルにどう伝えるべきか・・・とか、3人の頭にはそんなことが何度も頭をよぎっていた

同じ頃、ハルニムへ向けて軍を率いていたルチルはようやくハルニム城下町の近くまでたどり着いた・・・

「やっと着いたわ・・・みんな、これから先何が起こるかわからないけど・・・気を引き締めてちょうだい」

緊張感の漂う空気の中でルチル達はハルニムの城下町へと入っていく・・・町中はにぎわっている様子もなくただ静まりかえり、人々の姿もほとんどなかった・・・所々で飢えと貧困に喘ぎながら路上で商売をするものがいるだけでそのほとんどの店は人が口に出来るようなものなどほとんど置いてはいなかった・・・その現状を見ながら兵士達は何かに恐れおののき、ルチルも悲しみと怒りで手の振るえと涙が止まらなかった

「(こんな現状が・・・あっていいものだろうか、いや・・・恐らく今頃ベルステルもこうなっているに違いない・・・・・・早く何とかしなきゃ)」

彼女は明らかに気持ちが先走っているようにも見えたがそれを自分の中で抑えながらもハルニムに対する怒りは兵士達の間にもひしひしと伝わっていた、町の雰囲気と合わさるかのように彼らの間でただならぬ緊張感と異様なほどのルチルの気迫に押されるかのように重苦しくも恐ろしい空気が流れて行く・・・そんな事をルチル自身が感じる事のないまま彼女は城の方へと歩き出す・・・その一歩一歩がまるで誰かに対する死の宣告を告げるかのように・・・・・・

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2008年1月26日 (土)

第1部(第60話)

ハルニムへ向けて出陣したルチル率いるベルステルの部隊はシノが最後に上陸した地点へと辿り着いた、そこは兵士達の血痕がうっすらと残っていて変色し茶色くなった跡がいくつかあった、木々についている血痕のほとんどは木の色とあまり変わらないように見えるがよく見ると明らかに不自然な跡そこにはある

「どうやら・・・シノは最後にここで戦い倒れたと言う訳か、それでも彼女があの傷で生きているのも不思議なくらいね・・・・・・(でも今の私達には立ち止まっている時間も惜しい・・・あの時の騒ぎ以来不自然なくらい静かだ・・・もっと部隊を増員しているかと想っていたけどそうでもない見たいね、でも・・・罠の危険だってない事もない・・・・・・戦場で私は今まで何を見て来たと言うの、それくらい解るでしょ・・・私・・・・・・そのことを1つ理解しての戦士・・・・・・それが・・・ルチル・エルドリヒの戦い方じゃない!)」

「どうしますか・・・ルチル様?」

「先へ急ぎましょう・・・立ち止まってる時間だって惜しい、私達は・・・ようやくこのチャンスを掴む事に成功したんだ・・・・・・時を待ってみんなが集まって・・・そしてこの私が戦場で自ら指揮を取る・・・1人の戦士として、ベルステルの皇女として・・・私が私として戦場に立って・・・・・・そしたら私はその命を散らせても・・・ラキルのために・・・」

「ルチル様、我々は何があろうとも貴方をお守りします・・・」

「・・・・・・そう、ありがとう・・・」

不意に告げられたその誓いに彼女は振り向きそっと微笑む、こうして自分が皇女として戦えるうちはみんなもまだ戦士として死んではいないと実感する・・・今ここで戦いをやめるなんてみんな出来ない相談だからだ、それに・・・ラキルを助けたいと想う気持ちがはやりこの場所まで来ても彼女達の心が満ちたわけではない・・・これから向かう戦場がそうさせているかのように彼らの心を渇望させる、だからこそ皆ハルニムへ向かっているのだ・・・

時を同じくして病院を飛び出したソムニルは急いでナイトメアスティングの本部へと走り出していた、当然入り口付近で見張りに止められるが彼はそれを振り切り中に突入すると大急ぎでリゼルグとシノを探しに走り回った

「リゼルグ!!シノさん!!ルチルを止めてくれ!ハルニムには・・・毒術師がいるかも知れないんだ!」

騒ぎを聞きつけた戦士達は急いでソムニルの静止に当たる、が彼を止められるものはその場にはほとんどおらずソムニルも勢いが衰える事のないまま地下のシノの部屋まで到達する事が出来ただが彼女はそこにはいなかった・・・辺りを見回すと騒ぎを聞きつけた戦士達がソムニルの周りを取り囲むように集まりだしている、このままでは話を聞いてもらう前につまみ出されてしまう、そう想い動揺しそうになりながらも彼は走り続けた・・・逃げ回りながら塔の中を一気に駆け上り気がついたら屋上に辿り着く、辺りを見回し人影を探すとそこにはリゼルグの姿がようやく見えた

「はぁ・・・はぁ・・・・・・やっと見つけたぞ・・・リゼルグ」

「・・・!?ソムニルじゃないか・・・何をやってるんだ?こんな所で・・・」

「それどころじゃないんだ、ルチル達を・・・止めて欲しいんだよ・・・ハルニムには・・・・・・毒術師がいるから危ないって伝えようと想って・・・」

「・・・・・・どういう事?」

「俺の集落の長老を殺した毒と・・・こっちの前のボスを殺した毒が・・・・・・同じグランギニョルを元にして作られた毒だからだよ、グランギニョルを扱えるのは毒術師だけなんだ」

「グランギニョル・・・って・・・・・・あの猛毒の?」

「ああ・・・」

息を切らせながらもソムニルは話を続ける、焦りを見せるような口調のまま何とか状況をまとめて言葉にしようとするもなかなかそれを完全に伝えるには不十分にも聴こえるがリゼルグは彼が何を伝えようとしているのかどことなく伝わってはいた・・・リゼルグ自身も多少なりとも薬草や毒草に関しては詳しくグランギニョルがどれほど危険なものかも理解している、そのためリゼルグも今の状況がどれほど危険かをすぐに察すると2人でシノを探しに走り出した

「確かにこのままルチルをほうっておくわけにも行かない・・・ね」

「早くシノを探してルチルを追いかけようよ!でないと・・・ルチルが死んじゃう!!」

騒ぎを聞きつけソムニルを追いかけていた兵士達も2人の会話を聞いているうちに想わずその動きを止める、その直後に兵士達の後ろからシノが現れソムニル達の元へと近づいた・・・・・・事情を知ると3人は急いで病院へジェムカに事情を伝えようと走り出した、その一連の行動を見ていたディルはただその様子を眺めるだけでそれ以上行動を起こす事はしなかった・・・だがこの時ディルは悟っていた・・・自分が何も出来ない無力さかこんなにも歯がゆい事を・・・・・・

「俺達はこれからルチルを止めなければならない・・・もっともこんな事は何度もあったけど今回ばかりは君を連れて行くわけには行かないんだ、色々と危険みたいだからね」

「そのセリフ・・・ルナティアさんにも言われた、やっぱり・・・俺の素性が解らないから・・・・・・なんてことじゃないよね?」

「心配せずとも・・・ジェムカ殿は拙者たちが護って見せる、それに・・・ジェムカ殿にはルチル殿の代わりにラキル殿を守るという重要な役目もあるであろう・・・」

シノは微笑みながらジェムカの肩を軽くたたく、今は・・・自分の事よりもルチルの事を心配しなければならないと自分に言い聞かせながらジェムカはそっと頷いた・・・それにソムニルの証言をそのまま信用するなら・・・・・・今は何よりも得体の知れない毒でアスティルの王子を失う事など・・・他のみんなにとっては一番あってはならないと判断した結果だ、ジェムカ自身はそれにまだ気付いてはいないだろうがもしそれをもっと早い段階で彼が知れば・・・恐らく今のルチルと同じ行動を取るかも知れない、リゼルグとソムニルはそれを示唆してジェムカを戦場へ行かせないためにラキルを使ったのだ・・・それに今はラキルも身重の身体の上精神的にかなり衰弱していて色々な意味ではかなり危険な状況だというのもあながちバカには出来ないだろう、だからこそ今はジェムカのような者が残ってラキルを見守る事が最善の手であると皆は一様に願いつつルチル追跡のため出発した

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2008年1月19日 (土)

第1部(第59話)

ソムニルがルナティアに頼んで調べてもらった猛毒はかつてソムニルの住んでいた集落の長老を殺したもの、強いてはルナティアの所属しているナイトメアスティングの前のリーダーで現リーダーディルの父親を殺した物と同じ猛毒で成分上は本来イルニア樹海にしかない植物「グランギニョル」が使われている事が解りソムニルはある確信を得ていた、それは集落を抜けた毒術師・・・タナトスの者でしか扱えない植物で今ではマンドラゴラ以上に貴重とも言われている物だった(実質マンドラゴラを改良した結果出来たのがそのグランギニョルだが栽培方法を知るのは毒を扱うタナトス家しかいないためとも言われている)

「もし・・・ハルニムに毒術師が加担しているのなら・・・俺達だけじゃない、ルチル達も危ない・・・・・・これ以上犠牲者を増やすわけには行かないよ・・・俺・・・・・・行ってルチルを止めてくる」

そういってソムニルは立ち上がると病院を飛び出す形で走り出した、跡に残されたジェムカはソムニルを追いかけようとするもルナティアに制止される・・・これ以上あの猛毒によって犠牲者を増やしたくはないと想っては見るも彼女に出来る事と言ったらジェムカを止める事だけで精一杯だった、それに今のジェムカでは猛毒についてもこの状況についてもほとんど理解は出来ない・・・それならばいっそこのままラキルの下に繋ぎとめておいてしまった方がまだ彼を護る手段としては確実性がある、それにジェムカを護るのはルチルの命の1つでもあったが彼女にとってはなにか騎士として本能めいたような何かがそうさせたようにも感じていた

「ジェムカさん!・・・私達はここでラキル様を護っていましょう、大丈夫ですよ・・・ルチル様の事ですから・・・ルチル様だからこそ・・・・・・護りたいものを・・・自らが護らなければならないものを手放してまであの方は戦い続ける・・・きっと心でそう決めたのではないでしょうか」

「・・・・・・ルナティアさん・・・貴女は一体・・・?」

「私は・・・ベルステルの次期騎士団長候補でした、本当はもう1人いたんですけど・・・ルチル様とラキル様を護って死んでしまい・・・今ではある種私が最後の生命線みたいなものなんです」

「そう・・・だったんだ、じゃあ街や病院の騒ぎも・・・」

「ええ、ルチル様は・・・最初からそのつもりで出たのでしょう・・・・・・私にはここに残ってラキル様やあなた方を護るように言われたのですが・・・たった今ソムニルさんは出て行ってしまいましたし、このままほうっておくわけにも行かないでしょうね」

「ソムニルの事だから多分大丈夫だと想うよ・・・俺も彼と一緒にいて色々と大変なの解ってる・・・気がしてたのかな、実質俺より大変な目に遭ってるかも知れないのにあんなに平然としているのって・・・多分俺には出来ないと想うんだ、ほら・・・俺って自分でも素性が解らないでしょ?そのせいなんじゃないかなって想うんだ・・・」

笑ってごまかそうとするジェムカの眼には・・・うっすらと雫が滲んでいるように見えた、彼の中では「自分だけ取り残された」という孤独感がどこかにあってそれが表情に浮き出ているように感じさせる・・・・・・何しろ素性が解らない自分自身に対してそれ自体が自分を追い込んでいるように感じる、そのせいで仲間達も自分より先に進んでいってしまう・・・ジェムカにとってそれが一番怖く感じてしまう、自分が前に出て危険を煽るような目に遭ったら・・・そう考えると余計に血の気が引きルナティアに掴まれた手が震えてしまう

「・・・・・・・ジェムカさん、私は・・・貴方の素性が解らなくてもいいです・・・・・・でも・・・・・・貴方にも・・・貴方を失って悲しむ人がたくさんいるかもしれない・・・・・・その人達のためにも、私は・・・・・・貴方を護ります・・・・・・いいえ・・・護らせてください!」

「・・・えっと・・・・・・俺は・・・・・・俺は何者・・・なのか、その・・・よく解らないけど・・・でも・・・・・・」

「今は何も考えなくてもいいんです、貴方は・・・貴方のままでいてくれれば・・・それでいいんですから」

俯き掛けた顔をジェムカの方へと向ける・・・彼女はジェムカの表情を見透かしたように悲しそうな顔で見上げていた、ルナティア自身・・・どこかで予感していたのかも知れない・・・もしジェムカに何かあったら・・・ベルステルもアスティルも・・・・・・この世界さえも助けられないかも知れないと、心の中でそう騒いでいるように感じていた・・・でなければここで自らを犠牲にする覚悟でも彼を護る、いや・・・死んでもジェムカを護れと本能が叫んでいる・・・・・・だからこそ彼を止める義務がルナティアにはあるのだ

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2008年1月12日 (土)

第1部(第58話)

街の人達は裏手から現れた戦士の一団を見て一瞬動揺するも通り過ぎた後は何事もなかったかのように日々を過ごす、病院にいたジェムカとソムニルはその様子を知ることなくラキルの様子を見守るだけで精一杯の状態だが外が物々しいのは気配ですぐに察していた

「なんか・・・外が騒がしいね」

「ああ・・・(なんだか嫌な予感がする・・・ルチルの事だ、きっとまた無茶をするんじゃないかな・・・・・・)」

頭では解っていても自分達が手を出す事ができない悔しさをソムニルは実感していた、でもだからこそ自分達で出来る事を探す必要がどうしてもあった・・・それがたとえどんなに悲惨な結果になろうとも探したいものがあると確信している以上動き出すしかないのだ

「ラキルさん・・・このままって事はないよね?」

「俺は医者じゃないからよく解らないけど・・・最悪の場合この前よりも酷い事になるかも知れない、そうなったら・・・今度こそ俺達で止められる保障はないと想うよ」

「そうだよね・・・なんとなく薄々は感じてた・・・でもこのまま放って置いてラキルさんに何かあったら・・・・・・その時こそルチルは・・・・・・」

「可能性は・・・高いね、でも・・・(それを知った所で何をどうしろって言うんだ・・・)」

ソムニルは自分が今何を考えているのか・・・・・・ジェムカは気付く様子はなかった、それどころかナイトメアスティングに行ったリゼルグ達が今どうなっているのかそれが気がかりでしょうがなかった、それに・・・自分の素性が解らない以上彼らに協力する事が出来ない事を実感しつつ何が出来るかを模索してみる・・・・・・そんな最中に病院中が少し慌しい様子を見せ始めるナイトメアスティングの方で動きを見せた事を察したのか院内では急いで様々な器具や薬などを運び出す準備を進めていた、その中でただ一人焦る様子もなくジェムカ達のいるラキルの病室にルナティアが数枚の書類を持って入って来た、深刻そうな面持ちでその書類をソムニルに渡すと近くにあったいすにゆっくりと腰掛けた

「ルナティアさん・・・これは一体・・・・・・?」

「2人とも・・・今から私の言う事を聞いててもらえますか?」

「・・・・・・あの、外の様子と何か関係があるんですか?」

不安そうにジェムカは尋ねる・・・その様子は多少動揺しているものの嫌な予感だけがすることだけは解っていた、いや・・・心のどこかで何か恐ろしい事が起こるのではと不安を感じていたのかも知れない

「・・・・・・ルチル様は、たった今ベルステルの騎士や戦士達を連れてハルニムへ乗り込むため街を出ました・・・もちろんこの事はディルには話していませんがリゼルグさん達は恐らく気付いていると思います、あの人は昔からラキル様の事となると見境がなくなる性分なので今回の事でそれに拍車をかけたのかと・・・」

「確かに・・・路線上そんな無茶をするようなタイプではあるけど、その彼女を止める方法ってないの?」

「ラキル様がああなってしまった以上・・・もはやあの方を止められる者はいません」

「だろうね・・・」

彼らの会話は明らかにルチルの出陣を示唆するようにも想えるが事実彼女はベルステルの兵達を連れ街を出てハルニムへと向かっている、誰にも知られずに自ら死を覚悟してまで戦場へと向かう彼女達は滅ぼされた自分達の国やラキルのため・・・自分達の力だけで戦う事を選んだのだ、ルナティアもその知らせを受けた時病院に掛け合った結果急いで負傷者を受け入れるための準備を進めているがそれでも間に合うかどうか・・・・・・正直な話皆不安だった

「そう言えば・・・この前俺が頼んだ猛毒の事だけど、ハルニムでも使われるのかな・・・やっぱり」

「そのためにこちらも解毒剤の開発を進めてみたのですが今のところはまだ未完成のものが多くて実用性には欠けます、ですが調べていくうちに1つ解った事があるんです」

「・・・・・・やっぱり、これの事だね・・・」

そう言うとソムニルは書類の1枚に記された文面を指差しながらルナティアに見せる、彼女はそれを見るとゆっくりとうなずき先ほどよりも冷静な口調で話を続けた

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2008年1月 5日 (土)

紅き日の想い出(前編) 4

夜明けと共に雨は静まり雲の切れ間からわずかな星と空を照らし出すように月がもうすぐ現れる太陽の光によって同調するかのように森に光をもたらす、ルチルとラキルはその月光と太陽の2つの光によってその眼を開ける、するとその眩しさで想わず眼をそらすがすぐに眼が慣れ木の根元から出ると今度は心地のいい木漏れ日が2人の周りを照らした・・・少し進むと完全に昇りきった太陽の光が夜中のうちに降り続いた雨粒の名残で残った水滴に反射しきらきらと宝石のように輝いて見えて・・・そこはまるで小さな宝石がそこにあるかのように見えた、雨上がりの光景をしばらく歩いているうちに2人は森の外の光に向かって進んだ・・・その先は2人のよく知っているヴォルカント砂漠でその少し先には2人を心配してキャンプを張って待機していた兵士達が2人の捜索のために作戦会議を開いている最中だった、もちろんその中にフィルテオもいて彼の表情は明らかに動揺と不安でいっぱいだったが2人の姿を見つけるとその瞬間驚きと喜びに変わり半分泣きそうになりながら2人のもとへと駆け寄った

「ルチル様!ラキル様!お2人ともよくご無事で・・・」

「ごめんなさい・・フィル、心配かけさせてしまったわね」

ルチルは落ち着いた表情でフィルテオをなだめるがラキルは安心したのか想わず泣き崩れてしまった、こうしてルチルとラキルの初めての冒険(?)は幕を閉じた・・・国王と王妃も2人の無事を心から祈ったおかげでみんな無事に帰って来れた事は確かだが・・・ルチルはこれをきっかけに外への世界に興味を持ったのか城中の本と言う本を片っ端から読み漁るようになった、森へ出た事で彼女の中で何かが変わったのだろう、以前のようにはしゃいで城中を駆け回ることはなくなったが変わりに何か思いついたことがあれば城の外へと飛び出し砂漠で魔力を抽出する訓練を独自でするようになり、気が付けばアスティルとの交流の証である槍を持ち出しては槍に魔力を集中すると言う大技をやってのけるようになる・・・彼女はあの冒険から約3年の月日をかけて魔導武器「インストール」と言う技を自らのものにする事に成功したのだった・・・一方のラキルはと言えば、姉とは対照的にあまり外へ出たりすることはなくほとんどを城の中で過ごしながらも少しでもルチルの力になりたいと想ったのかルチルの魔導武器開発と同じ時期に医療魔導の勉強を始めた、戦いで傷つくルチルを助けようと彼女もまた様々な薬草や毒草などについて自分の部屋と中庭の小さな温室を往復しながら独自に薬を開発する事もやってみたが今のところそれらしいものを完成させるにはまだまだ程遠く彼女自身試行錯誤の日々を送っていた・・・・・・

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2007年12月29日 (土)

特別編 その7

今回初の特別シナリオは「紅き日の想い出」このストーリーはベルステル共和国のルチルとラキルの幼少時代のストーリーをまとめたものとして作られたものです、今回は今一度この国の歴史について軽く触れてみたいと想います

本編のシナリオでは時系列上すでに滅ぼされルチルとラキルは離れ離れになったところから話は動いています、ルチルは目の前でさらわれたラキルを助けるためジェムか・リゼルグの2人と共に旅を続けていくうちにラキルの元へとたどり着くも強い絶望と憎しみ・怒りが彼女を奮い立たせついには反乱組織「ナイトメアスティング」で生き残ったベルステルの兵士を率いハルニム帝国へと旅立っていきます・・・

ベルステル共和国はかつてアスティルとの親交もありルチルが持っている槍はその証としてアスティルから受け取ったものとして国にとっては大事な国宝になっている、その時ベルステルはアスティルへ送ったものがベルステル領のミレス火山でしか採掘されない宝石を付けヴォルガント砂漠の魔力を籠めた杖でその杖自体はアスティルが滅んだ時にボルクの手に落ちてしまっている、だがその事実を知るものはほとんどいない、だがそのボルクとの面識があるのはシナリオ上ジェムカとラキルの2人だけだがジェムカは王子としての記憶がなくラキルはほとんど地獄のような記憶しかないためそれに気づくことはない

この国が滅んだ主な理由としてはハルニムに抵抗するアスティル復興派と判断されたためと言うのがシナリオ上通説とされているが実質的な理由としてはジェムカの救出後彼を国王とするための準備を進めると言うのが復興につながるとされジェムカを保護される前にボルクが手を打ったことで国は滅び2人の姫も離れ離れになってしまう、結局国側でジェムカを助けることは叶わなかったがエアルクの騎士であったリーチェや同じ戦場で命を落としたサヤのおかげで彼は無事に生き残ることが出来た、ともあれ王子として記憶をなくした彼は仲間達のおかげで自分の素性を知らないまま旅を続けているがそれをうすうす実感していたルチルは内心ジェムカを守ろうと躍起にはなっているもののそれをどう自分で納得して解ってもらえるかいまだ模索していた・・・その結果彼女のとった判断が復讐と言うもっとも過酷で残酷、そして危険な選択だった・・・ジェムカを守るため、ラキルを助けるために自ら命を落としても彼女は戦いにしか身を置く事が出来ない状況の中その先に何があるのだろうか・・・・・・

今年最後と言うことなので今回はこのような感じになりましたがいかがでしたでしょうか、来年は1月5日に特別シナリオの続きを1つ送り12日より通常のシナリオに戻ります

これからも「黎明のカタルシス」をよろしくお願いします

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2007年12月22日 (土)

紅き日の想い出(前編) 3

フィルテオは慌てて2人を探しに森中を駆け回る、程なくして空模様が暗くなり激しい雨が降り注いだ・・・森中を走り回ったルチルとラキルはいつの間にか自分達が迷っている事に気づかないまま雨の中走り続け近くにあった洞窟で雨が止むのを待っていた・・・雨が止むのを待つというより、勢いではぐれてしまったフィルテオがいつ来るのか・・・・・・ルチルにはそれが不安でしょうがなかった

「ルチル・・・寒いよぉ・・・・・・」

「大丈夫だよラキル・・・すぐにフィルが助けに来てくれる」

ラキルの手前で強がってそう言うものの・・・ルチルは武者震いをごまかすようにラキルと抱き合いながらフィルテオが来るのを待っていた、しばらくして雨脚が遠のき周りの空気は再び静寂と沈黙に包まれた・・・ようやく雨は上がったものの空は一向に光を届けてはくれない、ルチルは洞窟を出てその理由にすぐ気付いた・・・どうやら雨宿りの場所を探すあまりこんな遠い所まで走っていた事に気付かず進んでいた・・・そんな事実を悟ったルチルは想わず愕然となるがラキルはそんな彼女の事を知っての事だろうか、そっとルチルの手を握り締めいつものように微笑んでいた

「大丈夫だよルチル・・・あたし達は助かるよ、だって・・・あたし達には頼もしい騎士がいるんだもの」

「ラキル・・・」

2人は手を握り合い励まし合いながら真っ暗な森の中を歩いた、雨が上がっても暗いのは・・・ずっと先は森としては深くベルステルの人間でなくても危険である事は周辺の者でも知っている・・・もちろん生まれて始めてこの森に足を踏み入れた2人にとってはそんな事を知るはずもなく気付かないうちにどんどん奥へと入っていく、しばらく歩いていくうちに不安を覚えながらもルチルは先へ進もうとするがラキルは何か危険を感じたのか急に足を止めルチルの手を強く握った

「・・・ラキル?」

「ルチル・・・ここどこ?あたし達・・・・・・帰れるの?」

「解らない・・・でも私達は絶対に帰れる・・・・・・大丈夫だよ、今頃フィルが私達を探してる・・・すぐに見つけてくれるよ」

「でも・・・あたし怖い、だって・・・ここなんかいやな予感がするんだもの・・・」

「・・・でもここで留まってたら2人とも風邪引いちゃうよ、とにかく今は雨宿り出来る所を探さないと・・・フィルもそこにいるかも知れない」

寒さと不安・・・そして陽が傾いたせいで方向もいよいよどこにいるかも解らなくなってしまい森中を歩き回るルチルとラキル、繋いだ手をお互い放すまいと震わせながら先を歩く・・・どれだけ歩いたのかも解らなくなるほど森をさまよった2人はこの森で一番大きな大木の根元で雨宿りのできる場所をようやく見つけた、2人が根元の窪みに入ると雨はさらに激しさを増してついには視界さえも雨で見えなくなるほどのどしゃ降りになり2人は寒さと恐怖でその場から動く事は出来なかった・・・その間にもフィルテオは自分達を探している・・・・・・2人はそれを信じながらその中で誰かが来るのをじっと待っていた

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2007年12月15日 (土)

紅き日の想い出(前編) 2

それから5年後、2人の姫は日々成長を重ねほぼ同時期に魔法を覚え始めた頃・・・姉のルチルは人一倍おてんばに・・・・・・妹のラキルはそれとは対照的におとなしい性格に育った

「ルチル様!お待ちください!!」

「ここまでおいでーだ!」

乳母や大臣を困らせては城中を走り回るルチルは誰よりもすばしっこく誰も彼女に追いつく大人はいなかった・・・ただ1人を除いては

「今日もあたしの勝ちだね!・・・わぁ!」

後ろを振り返り大臣達が疲れきったのを確認しながら進むといつも彼女の進む前には彼がいた・・・

「いたた・・・」

「また大臣達を困らせて・・・ダメですよ、ルチル様」

「ちえ・・・またフィルにやられちゃった」

この国でおてんばのルチル相手にまともにやりあえる大人は両親を除いて彼以外存在しない・・・フィルテオは数年ほど前からこの城に使えている青年で自分の事に関しては殆ど話した事はないほど素性に関しては色々な意味で謎が多いがルチルにとってそれは何の支障も感じてはいない、むしろ今の自分にとって対等な相手が誰であれそれで十分だと考えていたからだ

「さぁ、ラキル様のところへ戻りましょう」

「はぁい・・・ねぇフィル、フィルはあたしとラキルのどっちが好き?」

「え・・・さぁ、私には何とも・・・・・・」

「答えになってないよ、それ」

フィルテオと話しているときのルチルは走り回っていたときとは違いおとなしかった、幼い少女の中でそれがなんなのかよくは解らない・・・でもきっとフィルテオに対しての想いが大臣や国王に対するのとは違うのだと少し感じてはいる、それがはっきりと解ったのはそれから2年ほど経ったある日の事・・・・・・この日はルチルとラキルは砂漠を抜け近くの森へと出かけた、砂漠の外を始めて歩く2人にとっては何もかもが始めてで・・・何もかもが彼女達の興味を魅いた

「砂漠の外ってすごいね」

「うん!国でも見た事のない花がいっぱい咲いてるし・・・こんなに木があるなんて・・・・・・」

「もっと向こうに行ってみようよ!」

「2人とも、あまり遠くへ行ってはだめですよ」

「解ってるって・・・」

「あたし達なら心配しなくても大丈夫だよ」

国を治める者としての激務で2人を連れて行けない両親に代わりフィルテオが2人を森へ連れて行っていた、2人とも始めてきた砂漠の外ですっかり舞い上がっている・・・その様子をフィルテオは見守っている・・・・・・しばらくすると木漏れ日の暖かさのせいか彼は想わず転寝をしてしまう、再び眼を覚ますとそこに2人の姿はなかった・・・

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2007年12月 8日 (土)

赤き日の想い出(前編) 1

その日・・・東にある砂漠の国・ベルステルでは国中を挙げての一大事が起きていた、と言うのも国王と王妃の間に2人の子供が生まれるからだった・・・・・・城の者達は慌てふためきながら産気づいた王妃の下で準備に勤しみ国王もその近くでそわそわと新たな命に緊張と不安を覚えていた

「王妃様!大丈夫ですか?」

「しっかり!」

「もう少しで生まれてきます」

子供を取り上げる侍女達は動揺を押し殺しながら王妃に声を掛け続ける・・・やがてドア越しで落ち着きなく待っていた国王の下に元気な産声が届いた、それを聞いた国王はドアを勢いよく開けたった今生まれたばかりの子供の顔を一目見ようと駆け寄るとそこには可愛らしい女の子の赤ちゃんが2人並んで侍女の腕に抱かれていた

「みなの者・・・ひとまずご苦労だった、一区切り付いたらみんな休んでいてくれ」

国王は喜びをこらえ切れない表情で赤ちゃんを見ている様子を侍女達が「国王様のほうが一番子供みたい」と笑っていたのは言うまでもない話だが・・・それから数ヶ月してベルステル王家は国中の人達へ子供達をお披露目する式典へ向けて緊張のさなか子供達を見ながら何とかして緊張をごまかそうと必死になっていた、もちろんそれを見ていた王妃は何事もないかのようにただ微笑みながらそっと見守っていた・・・王家の姓として使われている「エルドリヒ」と言うのは元々『護る者』と言う意味合いを持ち国の名である「ベルステル」は『女神の神託』と言う言い伝えがある、そのため王家の者は『女神の神託を護る者』としてこのヴォルガント砂漠に住む人達の間で語り継がれてきた・・・そのおかげでこの砂漠に住む全てのものは女神の力がこの地に宿るとさえ信じている、まるでその女神の降臨を祝うかのように国中は2人の姫を祝福した・・・・・・

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2007年12月 1日 (土)

今後の予定

今後の小説の予定ですが来週より特別編の公開を開始します、内容は来週8日より「紅き日の想い出」の前編をお送りいたします

本編はカテゴリー「黎明のカタルシス」にて公開中ですので特別編の前にぜひ一度ご覧くださいませ

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2007年10月27日 (土)

第1部(第57話)

この街へ着てから幾度目かの朝を迎えたその日、街の裏手にあたる路では騒々しいほどの足音がいくつか響いていた、しばらくの間その一体は慌しさと物々しい程の緊張感と張り詰めた空気の中彼らは終結した・・・そう、これらは全てルチルの指揮の下に集められた元ベルステルの兵士達がハルニムへ乗り込むための準備を終えて1つの大隊として結集した事で彼らはすぐにでも出陣出来るようここまで育てていたのだった、そしてこの日・・・とうとうその日の目を迎えたと彼女は実感しこの朝早くから準備を進めていた

「みんなご苦労だった・・・私達はこれからハルニムへ乗り込み我々の国を滅ぼした首謀者とラキルを傷物にした者の首を討ち取りに向かう、長い地獄の日々も・・・いよいよこれで終わらせる事が出来る、そう想うと私としては・・・これほど待ちに待った日はなかった」

「ルチル様・・・」

「ラキルの方は私の仲間達で何とか護ってくれる・・・それに、私達の同胞もいる・・・私達は何のために戦うのか・・・・・・出陣の前にもう一度考えて欲しい・・・」

彼女は仲間達に問いかける、何のためにここへ来て・・・そして自分達の目指す先に何を見るのか・・・・・・それは国の敵かラキルの仇か・・・同じ敵であるならばそれは全てベルステルにとって敵である事を改めて認識させる、彼らはそのためにここへ集まり・・・そして動き出す機会を得たと彼女と合流した事で改めてそれを実感する・・・・・・

「今出発すれば日が傾ききる頃にハルニムへ着く、それで私達の作戦は・・・ハルニムへ夜襲をかける!!それだけはまず忘れないで」

「しかし・・・いきなり夜襲など危険ではありませんか?」

「危険だと言うのははなから解ってるし・・・・その前提で私は・・・・・・私達は動くんだと想うの」

「ですが、ルナティアを置いてしまっていいのでしょうか・・・彼女は次期騎士団長としての腕前だけでなく医療技術も我々の中では優れています・・・もし負傷者が大量に出てしまったら・・・」

「その時はその時よ・・・玉砕くらい覚悟してるわ」

「もし貴女の身に何か起こってしまったらラキル様はどうなさるんですか・・・?」

「今は・・・ラキルをそっとして置いてあげて、もし私が死んでしまっても・・・今の彼女を助ける事なんてほとんど不可能だもの・・・・・・だったら私は戦場でこの命を燃やし尽くしてもいい・・・そう想ってるの・・・」

「ルチル様・・・」

持っていた槍を天に翳し今までにないくらい冷酷な目でその先を見上げた、兵士達も彼女に合わせるように剣を抜きその切っ先を天に翳す・・・彼女の意思が本能の呼ぶままにベルステルの軍はハルニムへ向けて出撃した・・・が、それを塔の上から眺めていたディルはその様子を伺うと真っ先にリゼルグの部屋へと向かった・・・・・・ナイトメアスティングのメンバーとして入ったリゼルグとシノは塔で寝泊りする事でなんとか宿を確保してはいたが素性の解らないと言う理由で入れなかったジェムカやここで騒ぎを起こした事で同じように入れなかったソムニルの事について2人はなるだけ触れないようにはしているものの・・・やはり心配で仕方がなかった、リゼルグも本来はジェムカを護るために一緒に行動していたと言うのにわがままでもない理由で結局また離れてしまった事で今度ばかりは不安ばかりが募ってしまう

「(俺は・・・このままここにいてもいいのだろうか・・・・・・確かにジェムカのことも心配だが、彼らが何を想ってこの組織を立てたのか・・・それも俺は知らなければならないのかもしれない)」

心の中では組織に対する興味もあったがやはり今はそれどころではないことくらい悟ってはいた、でもそれを言ってしまえば彼らは自分達の知らないどこかで戦い命を散らせてしまうかも知れない・・・・・・そうなってしまえば全ては水の泡になってしまう・・・・・・そんな恐怖感がジェムカに対する想いと吊り合うように彼の中で天秤が平衡を保っている、シノも同じような考えを持ってはいるものの、実質彼女にとって今は母が最後に何を見たのか・・・気が付けばその想いの方が強く募り彼女は一人塔の屋上に立ちルチル達がハルニムへ向かっていくのを上から眺めていた、本当は彼女自身ルチルと同じように一緒に行きたいと言う気持ちも強くあったが今自分が離れてしまえばジェムカやソムニルにも危険が及ぶと想ったのか踏みとどまっている自分に少なからずジレンマを感じていた・・・・・・

「(本当ならあのままルチル殿と一緒に行ってしまった方がよかったのやも知れぬ・・・しかしそれでは残されるジェムカ殿達に迷惑が掛かるやも知れぬし、何かあってはエアルクもただでは済まぬだろうし・・・)」

などとまだ見ぬ他国の心配までしてしまうほど彼女は動揺していた・・・だが彼女はそれを表に出す事を知らないのかその表情はいつもとあまり変わらない様にも見えた

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2007年10月20日 (土)

第1部(第56話)

翌朝・・・ジェムカとソムニルは病室に現れた看護婦よりルナティアに呼び出された、ラキルの事で色々と聞き出したいルナティアは2人から昨夜何があったのか詳しく知りたかったからだ・・・ラキルが誰の呼びかけに答えない事も落ち着いたと想ったら突然錯乱した事も・・・そして誰が彼女をあんな風にしてしまったのかを、彼女はベルステルの騎士としてどうしても知りたかった・・・

「いくら俺達でも解る事と解らない事がある・・・これはさすがに俺の力でもどうにもならないよ」

「そんな・・・ソムニルでも何にもならないなんて・・・・・・それじゃあラキルさんがかわいそうだよ」

「・・・・・・すみません、無理を言ってしまって・・・でもどうしてもラキル様を助けたいんです!それだけは信じて・・・もらえますか?」

「ああ・・・あんたがルチルやラキルの事を考えているのは解る、俺達も・・・ルチルやみんなが心配だからね・・・先走って何かやらかすんじゃないかって今でもひやひやしてる」

「・・・でも、ラキルさんの事があるならいくらルチルでもそう簡単に動く事なんて・・・・・・」

「いいえ・・・ルチル様のことですから、必ず何か事を起こしてでもラキル様を護るはず・・・あの方は元々そう言う人です・・・・・・危険だと解っていてもあの方はラキル様を傷物にした者に報復する・・・お願いですジェムカさん、ソムニルさん・・・どうか・・・どうかルチル様を・・・・・・助けてあげてください」

哀願するようなルナティアの声は・・・悲しさと恐怖で震えていた、ラキルだけでなくルチルまで失いたくない・・・彼女の心はそれを訴えるように言葉を紡ぐ・・・砂漠で行き倒れになっていたルチルを助けた時、彼女も・・・ラキルを助けたい一心だけでようやくここまで辿り着いた・・・・・・その事を想えばこそジェムカはルナティアの願いを受け入れようと決心する・・・もしハルニムに自分も行ければ・・・なくした自分の記憶の事も何か解るかも知れないと内心想っても見たがもしそれが自分にとって自らの命を危険に晒すような事になってもそれを受け入れようとジェムカ自身その決意を固めていた

「でも・・・あんたが言いたいことは解ったが、俺とジェムカはあんたの言う組織には入れなかったぞ・・・・・・一体なんなんだ?あのリーダーとか言うチビは?」

「ああ・・・ディルの事ですか?彼は元々両親の作った組織を護るために名目上組織をまとめてはいます・・・ですが組織に残った者も新たに入った者もそのほとんどは彼をリーダーとは認めていないんです」

「それじゃあどうして・・・?」

「元アスティルの騎士だった何人かの大人達でなんとか組織は保っているのですが・・・それもまたいつ均衡が崩れるか・・・それに最近前のリーダーだったディルの父親も戦争の時受けた古傷とそこから入った猛毒で死んでしまったんです・・・」

「そう・・・・・・ですか」

「その猛毒って・・・どんなのだった?」

「えっと・・・新種の猛毒だと聞いてます、その時彼を診たのは私ではなかったのですが・・・・・・ハーフエルフの使う物とも違うとの話でした」

「・・・・・・そうか、ありがとう」

「・・・?」

猛毒の話でソムニルの顔つきは今までにないくらい冷酷なものになっていた、新種の猛毒については彼もまた樹海の集落でそれらしい噂を聞いたことがあったせいだ・・・樹海が火事になる前に長老は猛毒によって命を落としている、その猛毒と同じものだとしたら・・・そいつは戦争を利用して猛毒を実験に使い実証された所で長老を手にかけたに違いない・・・彼の直感がそう思わせる、戦争当時と同じ猛毒ならまだしも長老を殺したものがそれよりも強力だとしたら解毒剤を作るなど容易には出来ない・・・もし出来たとしてもまた改良されて新たに解毒剤を作りなおさなければならなくなる、どう考えると予想されるいたちごっこは避ける事は難しいだろう・・・

「どうかしたの・・・ソムニル?」

「・・・(長老を殺した猛毒と形状さえ近ければ少なくとも解毒剤くらい何とか作れない事もない、だが情報が少なすぎる・・・もしそれらを得たとしてもそれを作れる奴なんているのか?

第一俺やジェムカだけで何が出来る?このまま手を拱いて長老を殺した仇を見過ごすなんて絶対にしたくないし・・・)」

「ソムニル?」

「・・・・・・?あ・・・ジェムカ・・・・・・ごめん、俺・・・ちょっと・・・・・・彼女に用事があるから、ラキルさんのところに行っててくれないか?」

「それは構わないけど・・・俺1人じゃ今のラキルさんの事・・・護れないと思うよ」

「それなら大丈夫だよ・・・ここには俺も彼女もいる・・・何かあったらすぐに呼んでよ」

「うん・・・」

不安げなジェムカ1人を病室に戻るよう促すと、2人きりになったところでソムニルはバッグのポケットから小さな小瓶を1つルナティアに手渡した

「おそらく・・・あんたのところの大将がやられたものと形が近いかも知れない、俺の住んでいた樹海の長老もこの毒でやられたんだ・・・それに・・・戦争が始まる前後に樹海に住んでいた毒術師が失踪した、それともし関係があるのなら・・・俺はどうしてもその事を知りたいんだ!!」

真剣な眼差しでソムニルはそう告げた・・・ルナティアは何か彼に対しそう言ったことに関する想いを感じた気がしたが自分が果たしてどれだけ力になれるか、同時に不安も覚えた・・・だが彼女は心のどこかで1つ確信にも似た実感を得た・・・それは様々な国や種族を壊滅的状況に追い込んでまで自分達の適が何を遣らかそうとしているのかを・・・恐怖を感じそうになりながらも引き下がろうとせずソムニルから受け取ったそれを握り締めながら急いで病院の中へと戻って行った

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2007年10月13日 (土)

第1部(第55話)

医者の話に寄ればこのような事態になった事が精神的ショックを与えたのではと言う事なのだが・・・ソムニルはルチルの行動も合わせてこれまでの事を想い返して見る、その間ジェムカは眠りに付いたラキルの様子をじっと見ていた・・・またいつ彼女が発狂するとも限らない、医者が最後にそう言い残した言葉がどうしても気になっていたからだ・・・どの道今の所彼らは泊まる宿を決めていない、ラキルの面倒を見るという条件で病院に泊めさせてもらっている事にはなったが・・・恐らくこのままここにいていいのだろうかとソムニルは考えてみた、その間にルチルがまた先走ってハルニムへ乗り込むとも限らない、そうなってしまってはせっかく見つけたラキルはどうなるのだろうかと・・・不安を覚えた頭でどうしていいか解らなくなっていた

「ソムニル・・・もう寝たら?」

「大丈夫だよ・・・俺は平気、だけど・・・ルチルが気になってしょうがないんだよ・・・」

「ルチルか・・・そう言えばあの子一体何者なんだろ・・・あのマントについてあった紋章、俺どこかで見た事あった気がするんだけど・・・どうしても思い出せないんだ」

「そっか・・・(あの紋章・・・間違いなくアスティルのものだったな、あのジェムカの様子を見る限り・・・多少なりとも自分の記憶のほんの片鱗に触れ始めたくらいだ・・・アレだけじゃまだ決定打に欠けるな)」

「それに・・・リゼルグもシノさんも・・・やっぱりあの反乱組織と・・・一緒に・・・・・・戦うの・・・かな・・・・・・」

疲れが来たのだろうか・・・ジェムカは話しながらうとうとと眠そうな目をラキルに向けるがそのままベッドに突っ伏したように意識を切らせた、その瞬間ジェムカは座ってイスのバランスを崩し突っ伏した状態でイスから落ちたが睡魔の方が強かったのかそのまま眠りこけたようにベッドの下に転がっていた

「だ・・・大丈夫か?」

ソムニルが様子を伺うとジェムカは寝息を立てながら穏やかながらも不安げな表情を浮かべたような寝顔をしていた、隣の空いたベッドまで自分よりも身体の大きいジェムカを運ぶソムニルは想わず「こんな兄貴がいたら俺が護ってやりたいかな・・・」などと考えてみた、だが体格差もかなり違うし何よりも自分はハーフエルフ・・・人間より力がそんなにあるはずがない事くらい解っていた・・・ジェムカをベッドに運び終えると不安げな表情は相変わらずだが大きな様子を見せないまま眠りこけているその様子をソムニルはじっと見ていた、もし今・・・ジェムカを自分のものに出来たらどうなるだろうかと・・・同時に想った、でもそんな事絶対敵うはずがないと・・・心の中で諦めようとも想っていた

「やっぱり・・・俺みたいな奴じゃジェムカと2人きりになっても・・・・・・ダメだろうなぁ」

想わず口にしてしまった独り言は・・・誰の耳にも届くことなく消えて行った、ソムニルはジェムカの手をそっと握りながら自分が何を考えているのか・・・ジェムカに対してどう想っているのか・・・それに気づいた時には・・・そう言った想いが自分の中にもあるのだと言う事を心のどこかで思い知ったと感じた

同じ頃、ナイトメアスティングのメンバーとなったリゼルグとシノは組織内の1個小隊を任されたルチルの元にいた・・・彼女はナイトメアスティングに入った途端ベルステルの兵士達を集め組織内で小隊を1つ結成させるまでの統率力を早速見せ付けた、組織として受け入れられなかったジェムかとソムニルについては3人ともさすがに口にする事はないがリゼルグにとってそれは一番気が気でない事実でもあった

「私達はこれだけの小隊を結成させた・・・後はディルの判断次第、それによって私はそのままハルニムへ攻め込む」

「そう・・・やっぱり君の決断は変わらないんだね」

「拙者もルチル殿に同意見だ、母上が何を考えここまで動いたのか・・・拙者はそれを知りたい」

「君達の気持ちはよく解った・・・でも俺にはエアルクの事もあるし・・・・・・」

「何を言ってるの!?あなたにとっては仲間の敵を取れるチャンスでもあるのよ!!」

「それはそうだけど・・・でも・・・・・・」

「・・・・・・まぁ、私もさすがに今はそこまで強制しない・・・でもエアルクを護りたかったら・・・・・・護りたいものがあるのならやる事は解るでしょ!?」

この時ばかりはルチルも必死だった・・・ラキルをせっかく見つけてもあの状態では恐らく自分が話しかけても何の見返りも期待できない事くらい解っていたからだ、それに・・・ある種国とラキルと・・・自分のプライドの仇を取るためである戦いだと彼女は実感する、そうでもなければここまで来た意味はないと感じているから・・・だからこそ彼女は持っていた槍を強く握り締め改めて自分が誓った想いを胸に強く刻みつけた

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2007年10月 6日 (土)

第1部(第54話)

ナイトメアスティング・・・彼らはハルニム帝国を倒しアスティル王国を始めとするハルニムによって滅ぼされた国々を復興するために集められた戦士達の事である・・・・・・が、彼らは今重要な問題に直面していた・・・と言うのもあの少年・・・・・・ディルが今その組織を率いている事で彼らの指揮力が極端に下がってしまったと言う事だった、もちろんその事はディルもそう感じてはいるが・・・父が護ってきたこの組織を何とか保っているのは自分の父親の力があったからこそだと彼は想っている、だがそれではいつ内部分裂が起こってもおかしくはない状況だ・・・・・・ある者は言った・・・「アスティルを復興させるのならやはりジェムリクア王子の行方を捜すのが得策なのではないか?」と、だが別の者は言う、「どこで生きているのか死んでいるのか解らないような人間を探すのは我々にとってもあまりいいことではない、ならエアルク帝国に協力を求めてはどうだ?」と・・・そこでまた別の者は言った「エアルクは確かにあの戦争で騎士を失っている、だからと言ってその者の敵討ちの真似事だけで動かすには無理があるのではないだろうか・・・それならば最近滅ぼされたと言うベルステルの皇女様を探すのはどうだ?」と・・・このように彼らは意見を交し合うも最悪の状況から免れる保証はなかった・・・だがある時、彼らに転機が訪れた・・・・・・

「ベルステルのルチル皇女様がこの街に来たと情報が入りました・・・どうします?」

突然彼らの元に舞い込んできた知らせに皆一抹の不安と疑念を持っていたが彼女を実際に見に行った一部の戦士達(と言ってもほとんどベルステルから逃げてきた騎士達だが)は改めて主人の無事を確認するかのように安堵の表情を浮かべながら彼女を率いる方法を考えてみた、その事が後に病院に潜伏しているルナティアの耳に入り彼女もまたルチルを仲間に率いるための作戦を実行しただが彼らにとって予想外だったのはその双子の妹であるラキルが身ごもってしまった事・・・相手は誰だか今の所誰もつかめていないがもしそれが判明したらすぐにでも彼らは動くだろう皇女に傷をつけたその人間を抹殺するために・・・ルチルはラキルの状況を知った途端ショックも重かったがそれがかえって彼女にとってハルニムへの復讐心をさらに煽る結果となった

「こんな事をするのはハルニムの連中以外ありえないわ!!私は・・・ラキルを護れなかった・・・・・・みんな、私と・・・ラキルを助けてくれるわね」

ルチルは・・・ルナティアの導きで辿り着いたナイトメアスティングでかつて自分の国にいた騎士や戦士達をかき集めハルニムへ乗り込む手立てを考えていた、本当はすぐにでも行きたかった・・・だから判断力の弱いリゼルグと組むよりかは自分の力で何とかしたいと焦る気持ちがそうさせたのだろう、その結果ルチルとリゼルグの間には壁のようなものが立ちはだかってるようにも見えるジェムカやソムニルがそう感じた時には・・・すでに手遅れだった、気が付いたら・・・ジェムカとソムニルはアジトの外の・・・・・・街並の中いた

「・・・反乱組織か・・・・・・こんなものの存在があるなんて俺も知らなかったよ、だけど・・・何で俺とジェムカだけ追い出されちゃったんだろ?」

「騒ぎを起こしたからだと想うよ・・・それにリゼルグはエアルク帝国の騎士でシノさんはマツカゼだけじゃなく近辺の町や国でも有名な侍だものね・・・俺は自分でも素性が解らないしソムニルはあの時見張りの人といざこざ起こしてたから・・・そのせいじゃない、力の云々は解らないけど・・・」

「だろうなぁ・・・あーあ、俺なんて事しちゃったんだろ・・・・・・」

「とりあえず病院に戻ってリゼルグが連れて来たあの人の様子でも見に行こうか、まず俺達に出来るのはそれくらいだと想うよ」

考える事を面倒だと考えてみたジェムカはひとまず病院へと引き返した・・・リゼルグの連れて来たその女性、ラキルは2人が思った以上に大人しかった・・・と言うより何か大事なものをなくして心の中にぽっかりと穴が開いたような表情を浮かべながら天上を見上げている、ドアの開く物音がしてもジェムカ達が呼びかけても彼女は答える様子を見せようともしない

「・・・あの・・・・・・ラキル・・・さん?」

「やめときなよジェムカ・・・」

ソムニルが引きとめようとする中でもジェムカは必死になってラキルに呼びかけ続ける、だが彼女は答える様子を見せない・・・しばらくすると一瞬瞳孔が開き突然意味不明な言葉を叫んだかと想うと近くにいたジェムカの両腕を強く掴み揺らしながらものすごい形相で睨みつける・・・事の事態に気付いたソムニルはすぐに医者を呼び彼女は鎮静剤を打たれようやく眠りに付いた

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2007年9月29日 (土)

第1部(第53話)

その場の空気に想わず押されそうになったジェムカとソムニルはところどころに感じる殺気の中でルチルの元へと向かう・・・もちろん彼らの大半はルチルの事情を察しているのか2人を警戒するほどの者もいたが何とか彼女と話を付けたい一心でジェムカは緊張感を感じさせながらも声を掛ける・・・・・・が、あまりにも周りに気圧されたのか想わず声が上ずってしまう

「ル・・・ルチル・・・・・・その・・・・・・えっと」

「(何やってるんだよジェムカ・・・もっと何か言ってやってよ)」

「(そんな事言われたって・・・)」

小声で話す会話でさえも想わず緊張感で声が裏返る・・・それを見たルチルは大きくため息を付き2人に背を向けその場を去ろうとする、慌てふためくジェムカとソムニルを他所に彼女は何も言わず部屋を出て行ってしまった・・・・・・ようやく2人が落ち着くころには彼女の姿がない事に気付きさらに動揺する、周りの者達も彼らの状況をただ呆れてみるしかない状況で囲んでいる・・・2人を敵視するように浴びせられる目線はまるで彼らをルチルに近づけさせまいとちくちく攻撃しているように感じた

「俺達なんかやったかなぁ・・・?」

「・・・・・・(もしかしてさっきの騒動で・・・俺達警戒されてるのかも?)」

ジェムカはここへ辿り着くまでの間を想い返してみた・・・するとすぐに心当たりのある出来事を想い出すと一気に顔が蒼ざめる、あの時・・・ルチルを探しに無理に乗り込んだ時だ・・・・・・そう想った瞬間ジェムカは動揺し混乱した状態でソムニルの身体を激しく揺らした

「どうしてくれるんだよぉぉぉ!!ソムニルが変な交渉に持ち込むからみんな誤解しちゃったじゃないか!」

「え・・・俺のせいなの!!?(って言われて見れば・・・そうなるのかなぁ・・・・・・)」

ジェムカの言葉でソムニルも自分の起こした行動のせいで誤解を招いてしまった事に気付き一瞬凍りつく、自分が起こした行動がどれほどの騒ぎを呼んだのかを身を持って知ることになったソムニルはこの時になって後悔したというより取り返しが付かなくなるかもしれないと言う事態をどう収拾するか頭で考えてみる・・・が、ジェムカの慌てふためく様子を気にしてか彼の思考はそこまでは回らない、それどころか周りの戦士達は自分達の事を明らかに不審者だと想っていると感じたせいか足元も思考もすくんでどうしていいか解らない・・・このままだとルチルに取り合う前に自分達の命の方がやばいのではと恐怖さえも感じていた・・・・・・このままここで終るのかと諦めかけた次の瞬間、突然扉が開き・・・そこにはルチルがリゼルグ・シノ・ディルと共に部屋の前に立っていた

「お主達・・・いつまで経っても戻ってこないと想ったら・・・・・・それにこやつらは一体?」

「随分と面倒になっちゃったみたいだけど・・・大丈夫だった?」

「い・・・いろんな意味で・・・・・・ね」

リゼルグとシノが心配する中ルチルだけは浮かない顔でジェムカ達の様子を伺っていた、さっき取った自分の行動のせいでもしかしたら彼らにとんでもない誤解を招いてしまったのではないかと一瞬そう感じては見るがそれよりも何よりも彼女は焦りで動揺しているようにも見える、やはりラキルの事が気になるのだろう・・・しばらく彼女は誰とも言葉を交わす様子もなくただ俯いたままジェムカ達と地下を後にした

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2007年9月22日 (土)

第1部(第52話)

同じ頃螺旋階段と逆の直線階段を下っていたジェムカとソムニルは螺旋階段と同じように塔の真下へと続く先へと進んでいた・・・どこまでも続く暗闇に2人は想わず足をすくませながらも階段を降り続ける、さすがにどこまで降りたかさえ解らなくなるほどの暗闇の中で一瞬不安がよぎった・・・本当にルチルがこの中にいるのかどうかさえも不安に想うほどこの暗闇は全てを恐怖と不安・・・それに自分達の持っている「心の傷」さえも煽られるようで想わず何度も足を止めてしまう

「な・・・なぁ、やっぱり引き返したほうがよかったかな?」

「俺にも解らない・・・でも行かなきゃならない気がする、だって・・・俺達はルチルを探さなきゃならないんだもの・・・」

「やっぱり・・・あんたは強いよ、俺なんかと全然違う」

「そんな事は・・・(なんだろう・・・さっきから胸が痛むような・・・・・・一体これは)」

足を止めたその瞬間ごとに・・・ジェムカは越えてはいけない一線のその先を垣間見たように動揺を覚える、何か知ってはいけないような・・・そんな警告音のようなざわめきが彼の胸の中で騒ぎ立てているように感じる・・・もしかしたら自分の過去と・・・・・・触れてはいけない何かと関係があるのではと彼は確信したが彼の中にある曖昧な意識だけではそれを確証に変える事は出来ない・・・それが幸いしてなのか彼はそれを繰り返しながらも先へと進み、やがてその奥で小さく光る何かが階段のそばでみつけた

「何か光ってる・・・もしかしたらこの先にルチルがいるかも知れない」

「確かにこんな地下なら・・・部屋の1つや2つ・・・あっても珍しくはないな、ただちょっと・・・・・・俺達がどこまで下りたか解らないけど」

「確かに・・・でも階段の壁をさっきから伝ってる間って時々ドアノブみたいなのとか継ぎ目が引っかかったりしない?」

「だとしたら・・・やっぱり地下から先は一面中廊下でもあるって事だよなぁ、踊り場に集中してるあたり考えると」

ソムニルは頭の中で今いる場所の見取り図を描くように探ってみた、もしジェムカの言う事が合っているのならここにいるのはそれ相応に大掛かりな組織とも読み取れる・・・元々情報収集に長けているソムニルの勘なら組織の構図や構成員などについてもすぐに察しが付く、どんなに大掛かりと言っても所詮は反乱組織・・・叩かれてしまえばそれこそ元も子もない・・・一瞬頭でそれがよぎったようにも想えたが今はそんな事を考えている余裕などなかった・・・もしルチルに何かあったらそれこそ一大事だと感じたからだ

「もしかしたら・・・ルチルは本気かもしれないな、俺達から離れてまでも彼女は妹を護れなかった事を悔やんでこの組織に・・・・・・彼女の事だ・・・本気でハルニムを潰す気でいるよ」

「だとしたら・・・俺達で何とか助けるなり彼女を止めるなり出来ないの?」

「それは解らないけど・・・どうなるかこれも賭けってことになるんじゃないかな」

冷静に話してはいてもやはり仲間1人の命が掛かっていると解っているのか彼らの周りで不穏な空気が渦巻いているように感じている、光の漏れる扉の前に辿り着いてもそれがまだどこかに残っているような感じがして2人にはそれをどうする事も出来ないと想っていた・・・だがジェムカはそんな感情の中で手を震わせながらドアノブに手を掛ける、そのドアを開けた先の光には・・・ルチルの他に各地で集められたと想われる屈強な戦士達がそこにいた

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2007年9月15日 (土)

第1部(第51話)

扉の中はどこまでも長い廊下に続いていた、その左右には互い違いに同じような扉が設けられていて鍵の掛けられていないその1つを覗くとそこは小さな個室があるだけだった・・・どれだけ進んだかは解らないが先を進んだそこには上に伸びた螺旋階段と下に続く直線階段が1つづつ伸びていた、この街には大きな塔がいくつか建っていたがその1つがこの螺旋階段らしい

「ルチルはどっちに行ったんだろう・・・?」

「こういう場合は・・・上かな、なんとなくそんな感じがするよ」

「拙者も同意権だ」

「大抵のパターン上下に行くのはよほどの事だ・・・念のため俺は下を探ってみるよ」

ソムニルは下の階段に目線を向けるとジェムカの腕を引っ張りながら降りて行った、リゼルグとシノもそれを見送ると同じように螺旋階段を昇り始める・・・ソムニルとジェムカの降りている階段は松明の様に光がないと先へ進めないほど暗く、リゼルグとシノの昇っている螺旋階段は窓が等間隔にあるため対照的に明るい・・・それぞれ階段の先を進んで行くうちに気が付けばお互いの声の届かないほど遠く感じるようにも思えた

「随分と長い階段だ・・・これだけ高い塔ならそれだけあっても不思議ではないが・・・・・・地下の方も相当深いと見ていいな」

「多分・・・俺達の行ってるこっちより地下の方が深かったりして、何であれ反乱分子の集まるような場所だからそれぐらいあっても不思議じゃないだろうし」

「自信があるのか・・・その言葉には?」

「残念だけど・・・これはあくまでも憶測で自信なんてたいそうな物は持ち合わせてないんだ」

「言ってくれるな・・・」

「シノさんだって・・・本当は色々と気にしていたんじゃないんですか?お母様の事とか・・・」

「母上か・・・そう言えば最初はそんな目的を持っていた気がしていたな、いつの間にかどこかで忘れていた気がしたよ」

シノは笑いながらそう答える、リゼルグは立ち止まり数段下にいるシノを見下ろしながらそっと微笑む・・・その表情に彼女は何事もないような表情で返し先を進む・・・・・・どれだけ歩いたか解らないが階段を昇りきったその先には赤く染まった空ときらめく太陽が窓から差し込んでいる、そして2人の前には扉が1つだけありその扉を開けると・・・その先は塔の屋上だった・・・そこに流れる風は強く時々砂嵐のように砂ぼこりが舞ったりもするが2人はその先へと足を進める、2人が進んだその目線の先に人影のような物が見える・・・深紅の大きなマントがその存在感を物語るかのようにそこにいた、強い風の中で何事もないかのようにそこに立っている人物は気配に気付いたのかそっと振り返りただそっと微笑みかける・・・リゼルグとシノが悪い人間でないと察したのかのように2人のもとへと近づいてくる・・・2人もそれに気づき剣を握る事さえもする事はなかった

「君達も・・・ハルニムに抵抗する者達かい?」

「えっと・・・俺達は・・・・・・(ハルニムと戦争するかどうかって聞かれたら今の所何ともいえないだろうけど・・・)」

「拙者は母上の敵のためにハルニムに一矢報いたい、そのためならなんだってして見せる」

「お姉さんは・・・相当ハルニムが憎いようだね、その気持ち・・・解るよ」

その少年は・・・どちらかと言えば子供に近く、大きなマントの半分はその少年の足元に付くほどで・・・見た目からしてハーフエルフであるソムニルよりも幼く見える・・・・・・恐らく少年は普通の大人よりも違う観点を持ち生まれた時から多くの戦場を生き抜いてきた眼で彼らの剣を見る・・・

「やはり君達も・・・僕と同じ人間だね」

「待て・・・お主は一体・・・・・・それに拙者達はルチル殿を探して・・・」

「ルチル・・・ああ、それってベルステルの皇女様の事?」

「彼女は・・・どこにいるんだい?ここにいる事は間違いないと想ったんだけど・・・」

少年は微笑みながらリゼルグの手を握る・・・何かを確信したのか2人を見ながら微笑み、冷静な口調で言って来た・・・・・・

「ようこそ、反乱組織・ナイトメアスティングへ」

彼から発せられた言葉は・・・2人を組織へ招き入れたある種の服従宣言だった

ディル・ファルシオン(ディラック・ヴィラス) 12歳「7月11日生」
・ハルニムに対抗するレジスタンス組織「ナイトメアスティング」のリーダー(先代の1人息子)、父の死後すぐに組織を盛りなおすため「ナイトメアスティング」として反乱組織を起こす(と言っても仲間達は皆先代であったディラックの父の意思を引き継いだ者達がほとんどで息子である彼はまだ幼いせいで戦士としては認めてもらえていない)彼が羽織っているマントは父の形見で留め金には父のつけていたアスティル騎士団の紋章が付いている

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2007年9月 8日 (土)

第1部(第50話)

ソムニルは扉の近くまで行くと扉の前に立っていた男性に声を掛けた、当然の事ながら彼にとってソムニルは一瞬不信な侵入者にも取られたが彼はソムニルが何を考えているのか・・・それが不安でならず思わず扉から動く気配を見せなかった

「お兄さん、こんな所で何をやってるの・・・?さっき俺の連れがここに来た気がしたんだけど・・・知らない?」

「何の事だ・・・私には知らん、さっさと帰れ!」

「ソムニル!戻ってきてよ!!」

ソムニルの後ろから小声ではあるがジェムカの不安そうな声がする、やがてそれがソムニルに届いたのか想わず振り返るも何を想ったのかそれに向かって「任せろ!」と言わんばかりの笑顔で返されてきた、ジェムカの中でよりいっそう不安がよぎったのは言うまでもない話だが・・・

「さっきその中に女の人入ったでしょ?俺知ってるよ」

「お前には関係のない話だ、とっとと帰らんか・・・」

「・・・・・・ああなると収拾付かなくなっちゃったね、どうする?」

「それをどうにかするのがリーダーであるお主の役目であろうに、これでは話が進まぬぞ」

「・・・俺、行って来る・・・」

何を想ったのか、ジェムカは意を決したようにソムニルの元へと向かった・・・他にも仲間がいると知った男は何を想ったのか想わず近くにいる仲間を呼ぼうと炸裂弾を取り出しその場の石畳に向かって投げつける、するとその直後にけたたましい破裂音が鳴り響き程なくして同じような服を来た男達が集まって来た・・・ジェムカとソムニルはあっという間に囲まれてしまい彼らに槍を向けられてしまった

「あ~あ・・・結局交渉決裂かぁ・・・まいったなぁ」

「それは俺のセリフだって・・・でも・・・・・・あのままソムニル1人に任せても結果は変わらないと想うんだけどなぁ」

「やっぱり・・・ストレートに聞き出そうなんて無謀だったかなぁ」

「一体ソムニルは何を考えていたんだか・・・」

「とにかく2人を助け出そう・・・ルチル殿のことを聞くのはその後でもよいはずだ」

囲まれた2人を助けるためにリゼルグとシノも同じように歩き出すと彼らはそれに気づき同じように槍を向ける・・・が2人は動揺を見せる様子はない、それどころかどんどんとジェムカ達に向かって歩き出しやがてジェムカとリゼルグの元へ辿り着くと何事もないような笑顔で交渉を始めた

「彼らは間違いなくルチルを追ってここへ来た、俺達も彼女を探してようやくここまで辿り着いたんだけど・・・なんならルチルをここへ呼んで来てもらえないかな?それなら解ると思うよ、どうかな?俺の話信じてくれる?」

「・・・・・・少し待っててくれ」

男の1人が引き下がるようにその扉の中へと入る・・・少ししてそこから現れたルチルは俯き気味で感情を表に出すような事を見せる様子はなくただ目の前にいるジェムカ達の状況を何事もなかったかのように眺めているだけだった、それを見て様子を察したのか顔を上げる事もなくただ事の成り行きを見守るだけに過ぎないその眼には・・・何も映し出す事はない

「あなたの仲間と主張しているこやつらの事をどういたしますか・・・ルチル姫」

「・・・私には・・・・・・何とも、ただ・・・これ以上彼らを私達と関わらせるわけには・・・・・・」

そう言うと直後にルチルは再び扉の向こうへと消えて行った・・・一瞬その場が静まり返ると男達は再びジェムカ達にやりを向けた、彼らに残された選択肢はない・・・だがリゼルグはこのまま引き下がるわけにも行かないと感じたのか、彼女を追いかけるように扉の方へと走り出す・・・彼らもそれを阻止しようと攻撃を仕掛けるがリゼルグの剣の前に誰も太刀打ち出来る者はいないそれからどれくらい経ったのだろうか・・・気が付けば男達は皆リゼルグと戦いその場で倒れていた、不安に想いながらもジェムカ達はリゼルグに続くようにその扉の中へと入っていった

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2007年9月 1日 (土)

第1部(第49話)

シノの診察も終わり彼女はジェムカ・ソムニルと共に病室を後にすると病院の前でリゼルグたちと合流した、ルチルの表情は明らかに憎しみとショックで混乱しているのが窺える・・・彼女は受け取ったメモを槍と一緒に握り締めながら突然どこかへと走り去る、みんなはルチルの後を必死になって追いかけると袋小路へ入ったはずの彼女を見失ってしまった・・・そう言えば以前にもこんな事があったような・・・と、ソムニルは頭の中でその出来事があったところまで記憶をさかのぼらせる・・・・・・そうだ!大臣が消えたあの時・・・確かその時も袋小路で姿を消していた、それなら・・・きっと隠し扉か何かあるに違いないと盗賊・・・・・・いや、スパイとしての勘が彼の中で働いていた

「ねえ・・・もしかしてどこかに隠し通路とかあったりして?」

「地下水路とか・・・そう言うところへ行けるような所なら解りやすくていいんだけど、見つけられそう?」

「甘いなぁ、俺の事なんだと想ってるわけ?これでも一応スパイだよ?」

そう言うと地面に手を付き何かを探るように袋小路を探り始める、突き当たりの壁の近くまで手を滑らせるもののやはりそれらしい仕掛けを見つける事は出来なかった・・・

「おかしいなぁ・・・大抵隠し通路はこう言う地下とかに仕掛けがあると想ったんだけど・・・・・・」

「多分ルチルの事だからこの壁を乗り越えてったとかだったりしてね・・・」

ジェムカが笑いながら奥の壁に手を付くと突然壁が回転を始め仲間達の前でジェムカの姿が消えてしまう、一瞬何があったのか誰もが予想だに出来なかったがシノはそれと似たような仕掛けをどこかで見たような記憶を呼び起こすと・・・それはアヤメの家にもあったのと同じからくりである事に気づき同じように壁に手を付く、すると壁は再び回転を始めるがそれを途中で止め壁の向こう側で突然起こった出来事に驚き呆然となっていたジェムカを見つけた

「やはり・・・こんな所にもこんなからくりがあったとはな」

「(からくり・・・か、もしかしたらマツカゼの大臣が消えた謎もこれで解るかも知れない)」

今のからくりを見たソムニルはマツカゼで見た大臣の行動に何かの確信を得る、背後から聞こえる声に気付いたジェムカは振り返り仲間の姿を見つけると我に返った・・・

「これは・・・一体、それにここは・・・」

「からくり扉の向こう側ってところ・・・だね、この先にルチルが行ったのなら・・・・・・そこに何かあるのは間違いないみたいだよ」

入り口から既にからくりがあったあたりでみんなは少し警戒しながら先へ進む、回転扉のせいか次は何か飛んでくるのではと想いつつもルチルがその先にいる事を考えるとそんな事をいちいち気にしている場合でもない、からくりへの恐怖感とルチルへの想いを頭の中で混ざりつつも先の道をどんどんと進むとその先の扉の前にルチルが立っているのが見えた・・・遠めでそれを見ると彼女はその扉の前で誰かと話しこんでいるが会話まではうまく聞き取れない、やがてその会話が終るとルチルはそそくさと扉の億へと消えて行った

「ルチル・・・あんなところで何やってるんだろ?」

「さぁ・・・でもあの先に何かあるのは確かだよ、だけど・・・」

扉の前には先ほどまでルチルと何かを話していたと想われる人物が立っていてその場から離れる気配はない、それを見たソムニルは瞬時に何かを理解したのか何の躊躇いもなくそこへと向かって行った

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2007年8月25日 (土)

第1部(第48話)

シノのいる病室へと戻ってきたルチルはいきなりジェムカ達を叩き起こすと今まで以上に真剣な面持ちで息を切らせたまま構うことなく話を始めた、突然の提案に当然の事ながらジェムカもソムニルも驚きを隠せないが彼女が何を考えているのか・・・大方解っているのかこれ以上つっこむ事はなかった、と言うよりはそれ自体が禁句のようにも想えて言えないのが本音なのだが彼女の想いを考えると止める事さえ違う意味での恐怖を感じたと言うのが正しいのだろう

「みんな・・・いきなりなんだけど、ハルニムに突入しようと想うの・・・私」

「え・・・どうかしたのルチル!?」

「そうだよ・・・いくらなんだって急過ぎやしないか?もうちょっと時期を待ってからでも・・・」

「確かにみんなそう想うでしょうね・・・でも、私はどうしても・・・成し遂げたい事がある・・・・・・すぐにでもね」

彼らの話に興味を持ったのか起こされなかったはずのシノもルチルの話を聞き始める、とは言え怪我人だと言うこともあるせいかルチルも放っておくはずだったのだがルチルのあの慌てようから何かを察したのか鋭い目付きでルチルを見る・・・このまま行かせれば恐らく母と同じようなるかもしれないと言う本能が彼女を奮い立たせたのだろう、シノはどうしてもルチルを止めたかった

「ルチル殿・・・少し考えてみてはどうだ、おぬしとて何か手があると言うのならそれも結構だが・・・・・・そのままではお主だけではない・・・お主の周りの物すべてを危険に晒しかねぬぞ」

「それくらい・・・解ってるわ!でも・・・でもね、私達は・・・私は・・・・・・ただ・・・ラキルを助けたい一心だけでここまで来たような物だったの・・・それなのにあんな事になるなんて・・・リゼルグ、あなたがさっき連れて来たあの人・・・・・・あの子は・・・私の・・・・・・私の妹なの」

「そんな・・・だってそんな事一言も言ってなかったのに・・・・・・そうか、きっと彼女は君に罪悪感を感じていたのかもしれない・・・だから何も言わなかったんだよ・・・自分がベルステルの皇女だったことも・・・君の事も・・・・・・」

ルチルもリゼルグも先ほどまであった事を想い出すように記憶を廻らせる・・・するとリゼルグの連れて来た女性について2人は何かあまりにも不自然な彼女の行動について思い当たる節を見つけたのか同時に顔を見合わせた

「だからあの時・・・私の顔もまともに見ようとしなかった・・・・・・なんでもっと早くに気付いてやれなかったのかしら」

「あの、ラキル・・・さんって・・・・・・一体・・・」

「彼女は・・・言いにくいんだけど、今・・・彼女の中には新しい命が宿っているんだ」

「・・・!?」

「新しい命って・・・でもなんで・・・もしかして相手に何か問題が・・・・・・!?」

「多分・・・」

ラキルの行動パターンについてはかなり曖昧な推測を残したままリゼルグとルチルは彼女の様子を見に先ほどの診察室へと向かった、すると蒼ざめた表情でルナティアが出てきた・・・彼女はルチルの姿を見つけると困惑とショックのあまりその場で泣き出しそうな目でルチルの下へと駆け寄ってくる、彼女もラキルの身体の事でショックを受けていたのだろうか・・・・・・落ち着くまでかなりの時間が掛かったもののその時聞いた医者とラキルの会話を恐る恐る話し始めた

「正直な話・・・私も信じられませんでした、こんな形でラキル様と再会する事になるなんて・・・・・・あなたが連れて来てくださったんですってね・・・済みませんでした・・・お礼も言わずに・・・私もルチル様もラキル様の事で色々と心配はしてたのですがまさかこんな事になっていたなんて・・・正直想っても見ませんでしたよ」

「本当に・・・あれほどショックな事はないわ、ラキルをあんな傷物にした男・・・・・・私がこの手で裁きを下して見せるわ!!」

ルチルは手に持っていた槍を強く握り締め改めてハルニムへの復讐心を滾らせる、それはまるでラキルを傷つけた者への憎しみにも見えるかのように・・・彼女の想いを知ってか知らずかルナティアはリゼルグにそっと一言だけ・・・「皇女様の事はあなた方に任せます・・・」それだけ告げると再び仕事へと戻って行った、彼女も今のルチルが何を考えているのかを察した結果なのだろう・・・今までルチルがどんな想いでラキルの事を心配していたのか、それを想うと尚更不安を覚えてしまいそうで・・・ルナティアは今自分が出来る事がこれで精一杯である事を悟ったような気がしていた

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2007年8月18日 (土)

特別編 その6

本来なら今回の特別編で公開するはずだった特別編小説ですが結局原稿が間に合わなかったので後半の今回はそのあらすじだけを紹介しようと想ってます(小説本編の公開は年末以降になります)

特別編小説1:「紅き日の想い出」ベルステルでの想い出と家族・仲間への誓いを胸に秘めたルチルの過去の話、広大な砂漠で過ごした静かな日々が語られる

特別編小説2:「忘桜の舞い散る頃」シノの父・ミナトがサヤと出逢った頃のお話、大臣になったばかりのミナトは春のマツカゼで全ての運命を彼女と出会うことで変えていく・・・

書き始めが確か6月前後で殆ど本編ペースだったためこちらまでそれが回りませんでしたね(汗)とは言えもうしばらくがんばれば本編の第1部も終っているかと思います(なので公開時期は第1部終了時点になります、順番は上記の通りですが)

気が付けばもうこのシナリオも随分と書いてきたものです・・・恐らく今のペースでは第1部が終るのは少なくとも今年が終るかどうか位ですね(笑)第1部が終了したら第2部を書き上げるまでの間数週間ほど間が空いているかもしれません(爆)

それでは引き続き「黎明のカタルシス」をお楽しみください

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2007年8月11日 (土)

特別編その5

気が付けばこの小説もとうとう1年やってるんですね(意外と長いです・・・汗)と言う事なので今回の2週間はこれまでの旅の経緯と番外編小説のあらすじなどを紹介していきたいと想います、今回はジェムカ達のこれまでの旅の経緯を順を追って説明していきたいと想います

エアルク帝国にようやく辿り着いたジェムカ達はソムニルやルチルの過去を話し出す、彼らはハルニム王国を倒すために自分達が戦っている事を明かし今後の戦いにおいての話も進めるが妹を救いたいと言うルチルの想いが焦るあまり皇帝との謁見を果たすことなく東の国マツカゼを目指すことになる、城門を出るとそこには皇帝の姿が・・・彼は直属の部下であるリゼルグに「生きて帰って来い」と一言だけの命令で送り出した、マツカゼはエアルクよりもずっと東にありパーティは誰もその場所について知るものはいない

東の国マツカゼ(東洋の伝統・技術を頑なに護り続ける国でアスティル以外の国交はほとんどなかったがアスティル滅亡後ハルニムの使者が何度も訪れるもシノによって交渉が蹴られるため大半は彼女の活躍で護られているようなもの)

マツカゼは深い森の先の港町から船を乗り継いでの長い道のりだ、少々きつい道のりと解ってはいても行かずにはいられない・・・そして港町で乗った船の上でマツカゼから来たと言う政宗竜斯朗という男と出会う、彼はマツカゼの国王直属の親衛隊である御庭番衆の1人である事を伏せ彼らと共にマツカゼへとたどり着く・・・城の前で別れた後ジェムカ達はどうするかを考えるもその判断はリゼルグにとっては大きな試金石となり彼の前に立ちはだかった、パーティの分散・・・町中を彷徨ったジェムカは茶屋の前で綺麗な女性と出会うが彼女は大臣の娘・春美弥紫乃だった、そうとは知らず共に行動するジェムカ・・・やがて再び仲間達と出逢った時彼らは彼らの知らない間に向かう先が定まらない事に誰も気付かなかった、そして紫乃は母の想いを持って国を出てしまう・・・国王のムサシの願いで彼らは紫乃を追うためマツカゼから彼女の足取りを追い続け・・・負傷した彼女を見つける、紫乃は母の想いを辿りながらかつてアスティルのあったハルニム帝国を目指すために旅をしていたと話す、だがハルニム帝国は彼女の予想以上の勢力を誇り到底1人で乗り込めるようなところではないと力量の差を思い知る

なんだか約20本近くのシナリオで急なストーリー展開、果たしてこの先リゼルグとルチルは理解し合えるのでしょうか?そしてジェムカの思いは、ソムニルの願いは?

次回は番外編小説のあらすじを少しだけ紹介します

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2007年8月 4日 (土)

第1部(第47話)

リゼルグの連れてきた女性を医者の元へと運んだルチルは彼女の顔を一瞬見た途端に青ざめた表情で診察室へと消えた彼女を見送っていた、自分にとって信じがたい現実がこんな形で突きつけられたことにルチル自身どうしていいか解らなかった

「どうして・・・どうしてこんな事に・・・・・・」

女性の顔にはルチルも見覚えがあった・・・無理もない、あれは・・・

「ルチル!ルチル!!」

「ラキル!待って・・・ラキル―――――――!!」

「どうして・・・あの子がこんな事に・・・・・・」

あれは・・・間違いなくルチルと同じ血を分けた双子の妹、ラキルだった・・・リゼルグはそれを知らずにここへ彼女を連れて来ていたがルチルもあの時はラキルが自分の事を知って顔を見せてくれなかった事に何の疑問も抱かなかった、そのせいで・・・気付くまでの間何も知らない自分に対し思わず怒りがこみ上げるように感じた

「(やっぱり私も・・・リゼルグと何も変わらない、どうして気付いてあげられなかったのかしら・・・ラキルの事を)」

俯き零した涙が痛みで流れた血の様に感じる、まるで哀しみと怒りが血の涙になっているように・・・何かとてつもない後悔をしたような・・・今の彼女は心の中で大きく深い傷を自分で作ってしまっていた、その痛みがこの涙なのだと・・・実感した

「あの・・・大丈夫です・・・・・・か?」

偶然通りかかった看護婦の1人が彼女に声を掛ける、それに気付いたルチルは振り返りおびえた表情でじっと見上げていた・・・看護婦もその場でしゃがみこむとルチルの肩を軽くたたきながら彼女を慰めるようにイスに座らせ泣いたままのルチルに優しく言葉を掛けた、少しすると落ち着いたのかルチルはいつの間にか手渡されたハンカチで目元の涙をふき取っている

「よほどつらい事があったんですね・・・その人のためにもあなたは生きなければならない、そうでないとその方も浮かばれませんよ」

「いや・・・まだ死んでないんですけど」

「あれ・・・違うの?私てっきり誰かが死んだからそれで落ち込んでいるのかと・・・」

「まぁ・・・・・・違う意味ではそうかも知れませんね、彼女があんな事になるなんて・・・夢にも想わなかったし」

ルチルはその看護婦にここへ連れてこられたラキルの事を話す、彼女の話を聞いた看護婦も昔はベルステルにいた事があったのか話を聞いているうちに想い出し話が終わると同時にルチルの前で跪くように頭を下げていた・・・

「ルチル皇女様・・・ご無事で何よりでした、私は・・・ベルステル国近衛兵騎士団のルナティアです・・・・・・と言っても覚えてないですよね」

「ルナティア・・・って、あの・・・ルナティア・メイデン・ヴィンセント!?あなたの事は覚えています・・・国があんなことにならなければあなたは次期団長になれた・・・済まない事をしましたね・・・ルナティア」

「いえ・・・私達もベルステルを守れなかった事を、痛く後悔しております・・・」

気が付けば・・・彼女達の周りだけが・・・・・・そこだけが一瞬王族のいる城に戻ったような気がした、皇女としてその場にいたルチルとその忠実なる騎士として跪くルナティア・・・彼女達はその間だけベルステルでの栄華を・・・想い出す様にそこにいた

「ルナリスさん・・何をしてるのですか?」

「あ・・・ごめんなさい!」

偽りの名を呼ばれたルナティアは一瞬我に返りそそくさと持ち場に戻る、ルチルの元を離れる際彼女はルチルに一枚の紙を手渡し病院の廊下をそそくさと走っていった・・・その紙は長い間その手にあったのか少々ぼろぼろにはなっていたが中身の文字ははっきりと読めるほど鮮明だった・・・その文面には暗号らしき言葉が残されているだけでそれ以外の事は何も書かれていない、だがそのメモを見たルチルは何かを感じたのかそそくさとジェムカ達の元へと戻って行った

ルナティア・メイデン・ヴィンセント 21歳「9月18日生」
・元ベルステル近衛兵騎士団の一人(次期団長とまで言われるほどの高い実力を持つ)、近隣でレジスタンスを集めながらハルニム攻略を目指すため近くの街で看護婦として潜伏している、そのためハルニム周辺には彼女達のようなレジスタンス組織がいくつも点在していてその中でもそこそこ大きい組織のひとつとして数えられている(潜伏時の名前はルナリス・ヴィンセント)シノとラキルが来た事でルチルと再会を果たす

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2007年7月28日 (土)

第1部(第46話)

病院に着いたリゼルグはいきなりルチルと遭遇する、彼女はあまり怒っている様子もなくただリゼルグと目を合わせる様子もないようにも見えた

「今までどこに行ってたのよ・・・心配したのよ」

「ごめん・・・ちょっと色々とあってね」

「色々とねぇ・・・まぁいいけど・・・・・・どうしたのその人?」

「あ・・・この人どこか遠い所から来たらしいんだけど、お腹も大きいから中に子供がいるんだ・・・それで連れてきたんだけど」

「大変だったんじゃない・・・私の肩に掴まって、何とか先生の所に連れて行くから」

ルチルはそう言うと女性の腕を自分の肩に回し病院の中へと入っていった、リゼルグも病院の中へ入るとシノのいる病室でジェムカとソムニルが眠っているのを見て少し安心した・・・シノ自身は入ってきたリゼルグを何事もなかったような様子で見る、退屈そうな顔をしていたシノだが特に大した怪我もなくずっと安静にしていたのか回復も良好ですぐにでも退院できると言われみんなは安心する、そんな彼女は物静かな様子で近くのイスに座る彼をただ見ているだけだった

「2人ともリゼルグ殿が心配で待っていたのだが・・・拙者も退屈でもう少し遅かったら眠っているところだったぞ」

「そっか・・・ごめん、俺が至らなかったばかりにこんな事に・・・君にも迷惑をかけた」

「いや、これは拙者が悪い・・・こればかりは他人のせいにするわけにも行かない」

「だけど・・・俺・・・・・・その・・・えっと」

「拙者もあまり気にはせぬ、怪我の様子もそんなに悪くはないからすぐに出られるそうだ」

「それなら・・・いいけど」

申し訳なさそうな顔でリゼルグは俯いていた、だがその様子をシノは許せないと想ったのか彼の頭に軽く手刀を入れた・・・

「いて・・・」

「いつまでもそんな顔をするな・・・お主はこの一団の団長なのだろ?先頭に立つものがそれでは他の物にも示しが付かぬ・・・これは拙者の母から教わった事だ、お主もこの一団をまとめる物なら少しは皆の事を想って行動出来るようにならぬとな、とは言っても・・・すぐには無理だろうが」

「うん・・・それは俺もよく解ってるんだ、だけど・・・やっぱり俺には無理だよ・・・・・・ルチルには迷惑かけっぱなしだしジェムカやソムニルも・・・こんな俺の事何とか助けてくれてるけどやっぱり今の俺じゃ何も出来ることなんて・・・」

「お主も一度このパーティをまとめるのなら、いつまでもその考えを持つのはやめろ・・・でなければ・・・・・・斬る」

シノの鋭い眼光がリゼルグに向く・・・これ以上何か弱音を吐くようなことになれば間違いなく斬られると一瞬確信を得てしまいそうになるが何とか落ち着かせるように考えをまとめてみようと試みた、今までとは違う・・・エアルクの騎士団をまとめているのとは訳が違う事くらい自分でも解っているはずだと心の中で言い聞かせた・・・そして何を想ったのかリゼルグはシノと目線を合わせ何か吹っ切れたような表情で彼女を見た

「確かに・・・俺は弱気になっていたかもしれない、あなたに斬られても当然の事だと想う・・・・・・このパーティは確かに俺が今まで仕切っていた騎士団とは訳が違う・・・基本的にはみんな個人プレーでやってるような物だし・・・騎士団のように統率観を求めるわけでもない、でも・・・それに気付かない俺なんて・・・やっぱり何も出来ない子供と当然だ・・・だからこそこんな風にバラバラになっていた事もあったかも知れない、あなたの言葉と手刀は・・・色々な意味で効きましたよ」

話しながら彼は静かに笑みを浮かべる、今までの自分を嘲笑うかのような表情だ・・・シノも同じように静かに笑みを浮かべながら起こした体を勢いよく倒す・・・・・・

「その調子でこれからも彼らをまとめてくれ・・・回復したら拙者も・・・・・・」

言葉を続けるまえに彼女は眠りに落ちた、よほど疲れたのだろうかぷっつりと意識を切らしたように彼女の寝顔はとても落ち着いているように見えた・・・リゼルグも彼女の体にシーツを掛けると同じように近くの空いたベッドにあった毛布をジェムカとソムニルにもかけてやる、再びイスに座ると彼にも同じように睡魔が襲い掛かりシノのベッドの横から突っ伏したように眠ってしまう彼も同じように緊張のせいかあまり眠れなかったのか緊張感もなくただ思い切り安らかな表情を浮かべていた

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2007年7月21日 (土)

第1部(第45話)

病院を出たリゼルグは何をするわけでもなくとりあえず街の様子を見て回りながらふと考え込んでみた、と言うのも幾度となくやってしまったルチルとの衝突により自分がこれからどうするべきかを完全に迷ってしまったからだ、とは言ってもルチルの焦る気持ちに対して自分の態度はあまりにも横柄過ぎたことを彼は少し後悔している・・・と言うよりそう自覚してしまっていると内心それが重く感じてしまっているのもあったからだった、そのせいでパーティ内の均衡が一気に崩れてしまいそうになる・・・その事を彼は一番恐れていた

「(とりあえずシノさんが見つかった以上後は彼女の回復を待ってマツカゼへ戻るだけ・・・とは言えルチルは納得するだろうか・・・いや・・・・・・しないな、今の状況から考えればシノさんは意地でもハルニムへ向かいたがるだろうし、ルチルもラキルの事でハルニムへ行きたいって言い出しかねない・・・それにジェムカの事だってあるしソムニルの樹海の事も・・・)あぁ・・・俺は一体どうすればいいんだ・・・」

思わず立ち止まり蹲る、今までの事を想ってなのかつい考えが悪い方へと向いてしまう思考に対し一種のさい疑心を感じてしまう・・・そんな彼の心を表すかのように先ほどまで晴れていた空も陰りが現れ街中に大量の雨を降らせた・・・ずぶ濡れになりながらも何とか立ち上がったリゼルグは空を見上げていた

「きっとこの空も俺の心をあざ笑っているみたいだ・・・」

と・・・そんな言葉が彼の中で言っている気がした、雨宿りしようにもこれだけ濡れているのでは今更意味がないと感じながらも近くにあった酒場に入り雨がやむのを待つ事に・・・入った酒場には同じように突然降ってきた雨で濡れた客がマスターからタオルを渡され身体を拭いている光景が目に入った、呆然と立っている中でリゼルグも同じようにタオルを受け取り適当なテーブルに座らされる、彼の着いたテーブルには身重の女性がいるだけで他のテーブルには大きな荷物を持っていないまでも明らかに他の所から来たと言う人が多く目立っていた・・・彼女もその1人だ

「まさか突然降るなんて想っても見なかったわ・・・こんな風に山から離れていると言うのに、唐突で驚いたけど・・・」

「あ・・・そう、ところで君は・・・ここの人・・・・・・には見えないけど」

「あ・・・あたし?あたしは・・・ここよりもうちょっと遠い所から来たの、ちょっとワケアリでね・・・逃げてきちゃった」

そう話す彼女の表情は不安を浮かべるようでありながらも必死に笑っていた、リゼルグもそれを察したのかあまり言葉を交わす事はなかったが2人はあまり言葉を交わす事のないまま雨は止んでいた雨が上がるとリゼルグは彼女と酒場を出る、いくらなんでも身重の女性を1人にする訳にも行かず彼女を病院へと連れて行きたいというリゼルグの申し出を彼女が受けてくれた事に対してリゼルグ自身驚きと安心で胸がいっぱいになっていた

「なんだか迷惑かけさせるような事しちゃったわね・・・」

「いえ、あなたを放っておくわけにも行かないような気がして・・・それに・・・・・・似てる気がするんです」

「誰に・・・?」

「・・・友達に、ちょっと・・・・・・その・・・色々な意味で似てるなって想って・・・」

「そうですか・・・」

目線をはずしながらもリゼルグは彼女の問いに答える、だが明らかに少したどたどしいような口調に彼女は少しだけ笑ってくれていた・・・病院に着くまでの間は

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2007年7月14日 (土)

第1部(第44話)

シノが拾った船で村を出てすぐの事・・・進んだ先にはハルニムの領地があることを彼女は認識していた、だがそこへ行って何をするのか・・・殆ど何も考えてないままここまで来た事に彼女自身少し戸惑いを覚えてもいた、だからこそ・・・知りたいものもあった・・・・・・そのために出た・・・はずだった

「しかし・・・ハルニムなんかに行くなんて、お姉さんよっぽどの物好きなんだね・・・」

「拙者にもよく解らぬが・・・あそこに行かなければいけないような気がして・・・・・・国を出てここまで来たのだが、その後は・・・」

「まあ・・・人生なんてものは色々とあるものさ、そうだなぁ・・・オレが始めてこの川で漁を始めた時なんて・・・?」

その時シノ達は森のほうから何かが光るのを見た・・・何かいやな予感がする、一瞬そう感じてはいたが場所柄のせいかシノにとってこれほど不利な状況はない・・・それどころか逃げ場さえない彼らは何の迷いもなく自分達にその牙を向けている、下手に動いてやられる気など・・・最初から彼女にはなかった

「この先は我がハルニムの領地だ、ここでの漁は皇帝陛下の命により禁止されている・・・直ちに引き返せ」

「オイオイ・・・オレはずっとここで漁をしてきたんだぞ、今更禁止って言われてもなぁ・・・・・・って・・・お姉さん!?」

「どうやら・・・最初から拙者達を仕留める気でそこにいたのだろうな、それなら容赦はせぬぞ」

「お前は・・・マツカゼの侍か、なるほど・・・どうやらお前も我がハルニムに刃を向けるという事だな・・・それもいいだろう」

兵士は剣を抜きシノに向ける、彼女も船から岸へと飛び上がり刀を抜いた・・・彼女の形相に驚いた兵士は想わず逃げ出してしまうがそれでも彼女は後を追い・・・・・・気が付けば周りはハルニムの兵士に囲まれていた

「ここまでだな・・・マツカゼの女騎士さんよ」

「拙者はここで引き下がる気はない、拙者はただ前に進むのみ!」

手に持った刀を握り締めシノは大勢の兵士相手に戦いを挑む、当然の事ながら人数が既に違いすぎるこの状況にシノひとりで到底勝てるとは想えずしばらくすると彼女の体は既に限界を超え始めていた・・・その間にもハルニム側からか飛んできた矢も受けているのかその隙間からも血が出て来ている、それでも彼女は大勢いる敵の群れを何とか抜け出すように走るとその先は・・・・・・先ほどまで自分が渡ってきた川が見えた、追い詰められたと実感し何を想ったのか彼女はそのまま川へと飛び込む・・・ほとぼりが冷めてから岸に上がるつもりだったのだが水面から陸の様子を覗き込んだ時に船と激突し頭に衝撃が走り体力の消耗も手伝ってか彼女は意識を失ってしまった・・・その一瞬・・・・・・彼女はその船の上に知ってる人間が乗っているようなそんなような感じを覚えた気がした・・・それは船が揺れた衝撃で様子を見に来たリゼルグが不安そうにこっちを見ていたと言うものだった

「とは言え・・・昨日の今日で死に掛けたって言うのにもう回復したの?ありえない話だわ・・・」

と・・・目の前の状況を疑う余地などルチルにはなかったが・・・それ以上に信じられない出来事にすぐさま遭遇する事などその時の彼女は知るよしもなかった

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2007年7月 7日 (土)

第1部(第43話)

ルチルは船首付近で漁師と何かを引き上げるリゼルグの元へ向かい意を決したように叫んだ

「リゼルグ・・・ごめんなさい!私・・・」

突然の事で一瞬驚きながらもリゼルグは何事もなかったかのように振り返りながら微笑みかけ首を横に振って返した、だがすぐに彼はまた元の向きに戻りながら・・・

「謝るのは・・・俺のほうだよ、君の気持ちも理解出来なかった俺が悪かったんだし・・・」

確かにそう言った気がした、ルチルにもそう聞こえたのか・・・不思議と涙が零れる・・・・・・だがその感情は一気にまた緊張へと戻る・・・リゼルグ達が引き上げたものは意識を失い顔色が青白くなった女性がまるで今にも死にそうな表情でじっとこちらを伺っている・・・その眼光はまるでどこかへ向かおうとしているかのように・・・・・・

「大丈夫!!?しっかりして・・・」

「参ったなぁ・・・打ち所が悪かったのかも」

彼女は確かにまだ生きてはいる・・・だが一体彼女に何があったのか、それを誰も知らないまま船は慌ててそこから一番近い町の港へ向かうと漁師はリゼルグと病院へと走った、その間ジェムカは意識を取り戻させるため何度か彼女に呼びかける・・・しばらくすると医者が駆けつけ彼女は病院へと運ばれる、彼らは病院まで同行し彼女の回復を待った・・・・・・静けさの中で漁師は船が大きく揺れたのは彼女にぶつかったせいだと語りもしかしたら自分の船が一人の人間の命を危険にさらしてしまったのではと言う罪悪感で内心不安を覚えている、だがジェムカはそれ以上に不安だった・・・医者が来るまでの間に見たのは・・・・・・確かに自分達の知ってる・・・・・・シノであった事にショックを隠しきれない、一体彼女に何があったと言うのか・・・本当はそれを聞くのが一番怖かった、だがそんな彼にとってはシノをこんな形で見つける事になった事は・・・リーチェが死んだ時以上につらいものだった

「シノさん・・・一体なんでこんな事に・・・・・・」

「・・・別にまだ彼女が死んだって決まったわけじゃないんだし、もうすこし様子を見よう」

ルチルはジェムカの隣に座り彼の肩に手を乗せながら慰めるように話しかける・・・その横では壁に持たれかけたソムニルが左右に揺れながら転寝をしていて今にも横に倒れる勢いだったリゼルグはドアの前でじっと止まったまま運ばれたシノの様子をドア越しに伺う、あれだけ暗かったはずの空も気が付けば東の彼方から光が現れ朝を迎えていた・・・あれだけドアの前から立ったままうごかないリゼルグも疲労状態のまま倒れそうになるがジェムカ達はあれ以来緊張が解けたのだろうかいつの間にか眠ってしまっている、そんな彼らを見たリゼルグは想わず安堵の表情を浮かべると倒れかけたソムニルの身体を起こしそのまま外へと向かう・・・こんなにも複雑な気分で朝を迎えることなど今までなかったリゼルグも心のどこかでは「もっと自分に力さえあれば・・・」とさえ考えてしまうような・・・・・・そんな心境だった、だがそんな彼らを嘲笑うかのように太陽は昇り続ける・・・静まり返ったその場所で目を覚ましたルチルは辺りを見回しそっと立ち上がるとシノのいた扉の向こうを覗き込む・・・部屋の中には人影は見当たらず物音ひとつしない静かな世界だった、その直後彼らの近くをナースが通りかかりルチルに話しかけてくる

「あなた達が寝ている間に彼女の治療は終ったわ、大丈夫よ・・・今意識を取り戻して食事を取ってる所だから」

と・・・何事もなかったかのようにそう言って彼女は持ち場へと戻っていった、それを聞いたルチルは安心と同時に興奮しながらジェムカとソムニルを叩き起こすと急いでシノの病室まで走った、辿り着いた病室ではシノが何事もなかったかのようにルチル達に話しかける、と言うより・・・走ったせいで息を荒げてこちらを見るルチルを不思議そうな表情で見ていた

「どうか・・・したのか?」

「それは・・・こっちの・・・セリフよ・・・・・・あなた・・・昨夜・・・・・・船に・・・ぶつかったのよ、覚えてないの?」

何とか息を整えながらもルチルは事情を説明する、ぶつけられた時の衝撃のせいかシノの頭は未だに記憶が混乱したように話が見えないままだがしばらくすると落ち着いたのかその時の様子を・・・ジェムカ達に助けられるまでの間に何があったのか、その記憶の糸を辿るようにシノはそれを手繰り寄せ始める・・・

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2007年6月30日 (土)

第1部(第42話)

沈黙が破られぬまま彼らの周りはすっかり陽が落ち、灯りがちらほらと揺らめくように村中を照らしていた・・・気が付けばあちこちに漁師達が夜中の漁へ出る準備のために大忙しで走り回っている、それを知ってかしらずか気まずい空気のまま彼らは船着場から動く気配を見せていない、しばらくすると漁師の1人が気になったのか思わず声を掛ける

「兄さんたち、こんな所にいたら邪魔だよ・・・」

その声に気付いたのかジェムカは我に返り何かを思い出したように漁師にシノのことを聞きだしてみた

「すみません・・・ちょっと色々とあって、あの・・・ここで刀を持ったマツカゼの女性を見ませんでしたか?鎧を着てる人なんですけど・・・」

「え・・・マツカゼ?そう言えば・・・誰かがそれらしい人を乗せたのを見たような気がしたが・・・お兄さんの知り合いか?」

「俺達、今彼女を追いかけてるところなんです・・・彼女の目的地は解ってるのですが・・・・・・」

「色々とワケアリって感じだな、よし解った・・・俺の船に載せてやるから後で来てくれ・・・・・・なにぶんこれから漁に出るんだが最近はハルニムの勢力のせいか人手があまり足りなくてな・・・」

「そうですか・・・すみません、色々と・・・」

そう・・・シノを追いかける手が全て絶たれた訳じゃないんだ、それに今からならまだ彼女に追いつける可能性だってあるんだし・・・ジェムカは心の中で何か可能性を見出したのか漁師の言葉をそのまま鵜呑みにしたかのように返事を返した、きっとここで断ってしまっては終わってしまうのではないだろうかと言う心理も手伝ってか少し挙動不審なところもあったものの・・・少しでもシノに追い着きたい一心で彼らはあまり言葉を交わす事のないまま夜中の船に乗り込む・・・・・・

「・・・・・・(リゼルグとルチル・・・さっきから目線も合わせようとしない、このままじゃ・・・・・・やっぱりまずいよね)」

2人を見るジェムカの表情は明らかに青ざめているようだった、別に船酔いで顔が青いくらいならこんなに動揺する事なんてないだろうけど・・・いくらなんでもこれは精神的にも堪える、ソムニルから見た彼は顔にそう書いてある様にも見えた

「大丈夫?前のときは何とかなったかも知れないけど今度ばかりはやっぱりキツイんじゃないかな・・・」

「俺も・・・そう想いたいよ、でも・・・」

でも・・・自分ではどうしようもない・・・・・・とはとてもではないが口に出す事はできなかった、ジェムカ自身どうやって切り出そうか散々迷ってはいる、だが・・・それをやったところでリゼルグもルチルもそれで納得するとは想えない・・・ジェムカ達の傍らで2人は身体を向き合せているものの俯いたまま言葉を発する気配を見せない、やがて船は川の中腹で網を投げ込むために一時停泊する、その間漁師も心配そうに彼らの様子を伺うように作業の傍ら船室の方に何度も目線を向けていた・・・声を掛けようか戸惑わせるほど彼らの空気は重く感じられたがしばらくして漁師が船が再び動かそうとした時、突然船体が大きく揺れだし前のめりの状態で倒れこみかけたルチルは目の前にいたリゼルグに支えられるような格好で一瞬目線を合わせる・・・・・・だが気まずいと感じたのか両手でリゼルグの身体を突き飛ばすような形でルチルはまたもといた場所に戻る、リゼルグはそんな彼女の様子を察したのか少し離れた場所へと移動し漁師の元へと向かうリゼルグの様子を見ていたジェムカはリゼルグの座っていたイスに座ると躊躇った様子でルチルに話しかけた

「あ・・・あの、ルチル・・・・・・俺想うんだけど・・・リゼルグはきっと・・・ルチルの事・・・・・・」

その先をどうしても口に出せない・・・ジェムカはずっと落ち着きのない様子でルチルの事を見る、ただ一言・・・「ルチルの事が嫌いなわけじゃない、ただどうしていいか解らないだけ」と言ってしまえればどれだけ楽になるのか・・・でもそれが本当にリゼルグの想ってる事と一致するのかと聞かれれば解らないけど、たとえ違っててもいいからそう言ってしまえればそれで済むのに心の中では何度もそう呟くように言ってもいざ口に出そうとすればそれが相手に通じるのか・・・それが本当は一番怖いとさえ感じていた

「・・・・・・ジェムカ、あなたの言いたい事はよく解った・・・」

「え・・・」

「よくよく考えてみれば・・・私も彼もただ意固地になってただけなのかも知れない、無意味に片意地張っちゃって・・・なんかバカみたいでしょ?」

何か開き直ったかのように彼女は笑い出した・・・ジェムカの拙い言葉が聞いたのかは定かではないがルチルは立ち上がるとリゼルグの向かった船の甲板へと向かって行く・・・その様子を見ていたソムニルはジェムカの肩をたたき「やったじゃん」とだけ言いながらウィンクで返した

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2007年6月23日 (土)

第1部(第41話)

北西の村に着いたシノは迷わず船着場へと向かい北に行く船を探していた、彼女にとってアスティルは・・・・・・ハルニムは何か大事な何かがあるような・・・そんな気がしている、でもそれは・・・母が命を散らせたと言うだけではない事も心のどこかで悟っている、母のみならず数多くの人達の血があの場所で流された事も・・・

「え!?ハルニムへ船を出してくれ!!?そうしたいのは山々なんだけどね・・・あそこも最近また物騒になったから誰も船を出したがらないんだ・・・特にハルニムにほと近い町とかはね、それで・・・お姉さんハルニムへ何しに行くんだい?その格好からするに・・・旅行とかじゃないみたいだけど」

「・・・・・・大事な物を探しに、行かなければならない気がしたのだが・・・」

「そうかい・・・」

船長はやや呆れ気味ではあったがシノがそこまでハルニムへ行きたいと言う強い思いに負け彼女を舟に載せることにした・・・とは言ってもハルニムまで直接行こうとすれば何があるか解らないのでそこからもう少し近い所で降ろす事を条件にした取引だった、それでもそこからなら歩いて行けない距離と言う事もあるので彼女もそれで納得する・・・そして同じ頃、ジェムカ達もようやく村へと辿り着くが彼らが船着場へと着いた時には既にシノは目の届く範囲から姿を消していた・・・・・・

「また・・・先を越されたみたいだね」

「俺達も早く船で追いかけよう!!」

「今ならまだ間に合う・・・確かに今追いかければまだ何とかなるわ、でも・・・」

彼らが着いた時にはもう船はなかった・・・シノを載せたのが最後だったらしい、ルチルはそう叫ぼうとするがそのまま深くため息を付いただけでへたり込む・・・やがて陽は傾きあたりはすっかり暗くなり始めていた

「明日にでも船を捕まえてそれで追いかけよう、それなら何とか追いつくはずだよ・・・」

「それならいいけど・・・果たしてあんな物騒なところまで船を出そうなんて人・・・・・・もういないんじゃないかな」

リゼルグは諦めかけたような言葉を思わずつぶやく、その言葉を聞いたルチルはリゼルグの元へ駆け寄ると胸倉を掴みかけやり場のない怒りを向けようと鋭い眼光でにらみつける・・・涙目にも近い彼女の視線は誰にも読めない心の内を主張しているようだった

「・・・・・・貴方には、私の気持ちが解るはずないのよ!!私は・・・これ以上彼女に無茶をして欲しくないの・・・・・・ラキルのようにはなって欲しくない・・・ただそれだけの事なのに・・・・・・なのに貴方は何でそうすぐに諦めようとするの!!」

「ルチル・・・」

「マツカゼで一度解れて・・・それでも貴方はまだそんな事を言って過ちを繰り返そうって言うの?どうして・・・!?」

言葉を続けようとするルチルにリゼルグはただ笑うだけだが、やがて彼の眼から一粒の雫がルチルの手に落ちる・・・それが当たった瞬間想わずルチルは手を離しリゼルグの顔を見上げる、笑っているように見える彼の表情は・・・悲しさを隠すように微笑みかけているだけでその内の貌を隠しているように見えた

「・・・・・・あんた・・・バカよ」

目線をそらすように振り向いたルチルはつぶやくように言葉を発する、それに答えるようにリゼルグも俯き・・・騒ぎ立てるような風だけが2人の間を通り抜ける・・・・・・しばらくの間は沈黙が通り抜けジェムカとソムニルも想わずその場を見守るように2人を交互に見やった

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2007年6月16日 (土)

第1部(第40話)

シノを追いかけ港町へと辿り着いたジェムカ達は先ほどまでシノのいた船着場へと辿り着いた、だがそこには人影はなく船の殆ども出払っているのか波の音以外は何も聞こえない・・・町中を探し回っても彼女の姿はそこにはなく、彼らの到着を待たずにシノが旅立った事を知りショックを隠せないでいた

「一足遅かったか・・・それにしても一体彼女はどこへ行こうとしてるのか・・・・・・本当にハルニムへ向かってるのか?」

彼女の足取りをリゼルグは一瞬不振にも想ったがそれはただの取り越し苦労だった、と言うのも後で聞いたルチルからの話に寄ればシノは北西の村へと向かったと言う証言があったからだ・・・そこからならここよりもまず確実にハルニムへ着ける可能性はあるがそれでは陸伝いで行くため船で行くより殆ど距離がかかってしまう、それならまず追いかけてもすぐに追いつく事はたやすいはず・・・そう・・・・・・普通に考えればの話なら・・・・・・・

「彼女の考えてる事なんて・・・きっと誰にも解らないんだと想うよ、あまり話したことのない俺達ならまだしも・・・国王や父親であるはずの大臣ですらその事情を知らないなんておかしいと想わないか?」

「確かに・・・ソムニルの言う事にも一理あるけど、それはきっと・・・彼女が『伝説』と呼ばれた者の血を持ってるからそう想われてるだけなのかも知れない」

「そう言うものなのかな・・・?」

「そう言う運命を持つ者は・・・みんなそうやって自分の考えが読めないものだ、だが・・・どこへ行くべきかは本能だけが知ってる」

リゼルグの視線はどこか遠くを見つめてるようだったが・・・彼の言葉はどこか真実味を帯びているようにも想える、彼の視線の先には何が見えたのかは誰にも解らないが・・・・・・恐らくリゼルグ自身何か昔にあった事をふと考えるように思いつめたようにも見えた、だがそれは・・・少し前にリゼルグが経験したある出来事がそうさせているだけに過ぎないのだ

「(もうあれから・・・そんなに経ってないと想って忘れてたけど、まだこの身体が・・・この眼があの時の事を憶えてるなんて)」

「・・・・・・リゼルグ?」

「あ・・・」

「どうか・・・したの?」

「ううん・・なんでもないよ、それより早く彼女を追いかけないと・・・・・・ね」

「そう・・・だね、シノさんは確かに俺達より強いけど・・・やっぱり女性一人にこんな危ない旅をさせるなんて・・・・・・出来ないものね」

「何言ってるのよ・・・私の時だったら放っておく気だったって言うの?」

二人の言葉にルチルは少し不機嫌そうな口調で答える、とは言ってもルチル自身は皇女としてのプライドもある・・・だがベルステル自体亡くなった今ではそんな事を言っても何の役にも立たない事はルチル自身承知している、だからと言って皇族である誇りまでは捨ててはいない・・・「誇り」と「プライド」はまったく別の物である事を彼女は教えられている・・・・・・だからこそ彼女はそう言った意味も含めて戦いを止める事は絶対にしない、国のためでも自分のためでもなく・・・ただ妹を助けたいためだけに戦いを続けているだけなのだ

「そう言えばさぁ・・・ルチルってどうして妹さんのためにそこまでがんばれるんだ?相当大事な人・・・・・・なんだよね?」

「ええ・・・今の私にとって家族と呼べるのはもうラキルだけだし、それに・・・やっぱり諦めたくないのよ・・・・・・彼女の事だけはね」

感傷に浸るような表情にどこか寂しげな視線ではるか遠くの空を見上げる・・・そんなルチルを見てソムニルも集落で死んだ家族の事を想い出した様に少しため息を付く、みんな・・・家族を失った事や目の前の惨劇がまるで走馬灯のように繰り返されるようで、心のどこかで忘れたがっていた部分も引き出されるように彼らの周りで沈黙が取り巻いているようだっただがその沈黙も長くは持たず船着場の近くから人の叫ぶような声が彼らの耳に届きそれに反応するかのように彼らは駆け出した・・・船着場では人の死体と思しき何かが魚に混じって網にかかったと言う事らしい、誰が何の目的でこんな事をしたのかも解らずそれどころか身元さえも判別不可能なほどその死体は殆ど腐敗していた・・・網にかかった魚の殆どもその死体の影響だろうか・・・殆ど活力を失い何匹かが編みからすり抜け海に落ちてもただ仰向けで浮かぶだけだった

「・・・・・・」

死後1年近くと見られるその死体をルチルは一瞬ラキルのものではと想い近づくがそれが男性だと知り安心する、その後の調査で死体は少し前にあった海賊同士のいざこざの犠牲者であると知り周りは動揺を隠せないがこのまま放っておくわけにも行かず、町長のはからいで町の近くで手厚く葬るとジェムカ達は街を後にしシノを負うため再び北西に向かって進みだした

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2007年6月 9日 (土)

第1部(第39話)

船着場を一度離れたシノは船乗りの話にあった北西の村へと向かう事にした、とは言え1人でどこまで行けるかはシノ自身解らない・・・だからこそ行ってみようとも想っていたが今までは父の建前上そうも行かなかった・・・母の死後父はどこか空虚にもなっていたがそれでもシノの前では気丈に振舞ってはいた、ところがここ最近の父の行動に不振を想いつつもどこか踏み出せず散々迷った事もあった、ジェムカ達が来た事でそれが一気に吹き出たように彼女は始めてマツカゼから旅立ってみてそして想った・・・「ようやく何か見つけられそうな気がする」と・・・・・・生きていた頃の母は何事においても強くシノ自身彼女の存在は誇りでもあり憧れでもあった・・・その存在自体大きくて重くて・・・・・・やがては支配してしまうほどの力もどこかに存在していた

「母上!」

「おいで紫乃・・・庭の桜がこんなに綺麗に咲いてる、春はもうすぐだよ・・・」

「ホントだ・・・」

「本当に・・・・・・綺麗なものだよ・・・」

「母上、どうかしたの・・・・・・?」

「お前もいつかは大人になって俺と同じようにこの刀を握る日も来るだろう・・・そう想うとお前といるこの時が愛おしく感じる」

「母上・・・母上はいつかは私の前からも消えてしまうの・・・?そんなの怖い・・・・・・」

「親の運命なんてのは・・・そう言うもんなのさ、目の前で親が死ぬ瞬間を見るのは・・・それほど辛い物はないから・・・・・・」

そのときシノは母が涙を流していたようにも感じていた、その時の母の涙は・・・とても悲しくて今その腕に抱いている自分を手放したくないと言う想いを母が抱いていた事をどこかで理解した、理解はしたけど・・・その時の自分はまだそれがどう言う事を意味していたのかまだ解らなかったが、きっと今なら・・・それが解るような気がして・・・・・・でもそれを理解した所で運命が変えられなかった今を・・・母の死を本当はどこかで否定したかったのかも知れない事を、でも・・・それをどう考えようとも母が帰ってくるわけでもない・・・シノ自身それを受け止める勇気が・・・今でもなかった

「はぁ・・・(母上の事も・・・父上が何を考えているのかも・・・・・・多分今の拙者には解らない、解った所で・・・父上が救われる訳でもないだろうに)」

ここ最近の父の行動についてシノも不審は抱いてはいた・・・当然の事ながらそれを止めた所で父が救われる保証などないことを彼女は理解していた、父がマツカゼ上の大臣である身のせいか口出しする事すら躊躇ってもいる・・・母が死んで誰よりも悲しんだのは父である事も察してはいた・・・・・・そのせいだろうか父は夜な夜などこかへ出かける事が多くなり気がつけば自分は何も手を出せないままマツカゼを飛び出してここまで来ている、自分で何も出来なかった事をその時は悔やむように出て来たと言うのに・・・今では自分が何をしようとしているのか少し迷いかけてる・・・・・・本当にこのまま国を出てよかったのだろうかと・・・歩きながら考えているうちに頭の中では自分が今まで経験した事もないような、どこかいたたまれない気持ちに戸惑いを隠せなかった

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2007年6月 2日 (土)

第1部(第38話)

ジェムカ達が旅立つ前にマツカゼを出たシノは最後に母・サヤのいたと言われるアスティル・・・ハルニム帝国へと向かっていた、が・・・当然の事ながら船の殆どは何かを恐れているのか、その付近へ行く事はしようともしなかった、だが・・・彼女自身どうしても知りたい事があるからこうして旅に出たというのにいきなりこんな所で出端を挫かれるとは想いも寄らなかった

「すまないねぇお嬢さん、ここの連中はみんなあの付近へは近づきたがらないんだ・・・」

「そうか・・・済まぬな、それならもう少し先へ行けそうな船着場はないのか?」

「だったらもう少し北西に行った所に村があるからそこで聞いてみな、だが・・・そいつらもハルニムの近くまで行こうとするかまではオレ達にも解らないけど・・・・・・それでも構わないのか?」

「ああ・・・」

「しかし・・・随分と物々しい格好だねぇ、まるで戦争にでも行くみたいだよ・・・そう言えば前にうちの親父がそれと似たような鎧をみたことあったっけ・・・・・・なんでもその人もアスティルに行ったみたいなんだが、その後大変なことになったらしいな・・・」

「・・・・・・(母上もこの船で海を渡ってアスティルへ向かったというのか・・・)」

さすがに状況が状況だけにハルニム付近へ船を出そうとする者はいない事をこの場で知りシノは想わず考え込んだ・・・「このままでは自分は本当に何も出来ないままで終わってしまう」と・・・・・・だがここまで来て引き返す事など考えた事のない彼女はその場で刀を抜こうか一瞬迷った、いくら非常事態とは言えいきなり力に頼る事など武士としては絶対にやってはいけない事だとよく母から聞かされていた・・・

「悪い事は言わないから・・・ハルニムに行くなんてバカな考えは捨てたほうがいい、それが身のためって物だ」

そう言うと船乗りは自分の持ち場に着きその場から離れるように船を動かした・・・取り残されたシノはその場で眼を閉じ母がこの場所からアスティルへ旅立った頃の情景を頭の中で想い描いていた、あの時母は何を想い・・・そしてこの地を離れ自らの命を散らせて行ったのかを、悲しいとも悔しいとも想う事のないその気持ちを自分は今どこへ向けているのか解らないほどに・・・

「(母上・・・)」

しばらくその場を動く事無く、ただじっと・・・何かを待っているかのようにシノはそこにいた・・・風の流れと海の音がそこにあった母の記憶を呼び起こすかのようにシノの頭の中で感じ取る、それはまるで・・・彼らしか知らない母の姿が彼女の前に映し出されるようにそこにいた気がした

「・・・・・・(ミナト・・・シノ・・・・・・俺は必ず戻ってくる、それまでは無事でいてくれ・・・)」

「もういいのかい・・・今アスティルはとんでもない状況だって聞いたよ、多分あそこまで船を出せるのはこれが最後かも知れん・・・」

「そうか・・・それなら仕方がないよな、何しろ・・・あの場所には・・・・・・ずっと俺と戦ってきた彼女がいるんだから」

「まぁ・・・正直オレも長いことこの仕事やってきたが・・・・・・あんたみたいな命知らずが今更行ったところで・・・アスティルが助かるとは想えんがな」

「アスティルは多分・・・だめかも知れないけど、俺にはそれでもやらなきゃならない事がある・・・・・・だから行くんだ」

「・・・・・・大事な物を置いて来てまでそこまでやろうとするあんたの心意気、最後まで見届けてやるよ・・・」

サヤにとって大事な物を・・・シノはこの眼で見てみたいと想ってみたが、それが叶う事は永遠にない事も・・・どこかで悟っていた・・・・・・母は最期まで『剣士』としてその戦場で散って行った事で、本当の『母』の姿を垣間見た・・・そう想うと眼から小さな雫がひとつ・・・・・・海に消えた

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2007年5月26日 (土)

第1部(第37話)

出発の朝・・・空はあの時の雨が嘘の様に晴れ渡っていた、ここ数日間この近辺で雨が多く降っていた事もあってかこれほど日差しの強い日は久しぶりにも想えた・・・

「シノさんの行きそうな所って・・・どこなんだろうね?」

「・・・・・・」

あれから国王もシノの行きそうな所を何度も探っては見たものの・・・それに繋がる手がかりを何一つ見つけることは出来ず、またそれ以来大臣も戻って来てない事もあってか彼自身焦りを隠せないでいた、それ以前にもシノは生まれてからこの22年間マツカゼから1人で出た事はないためどこかで迷ってたりしてるのではとも国王は気が気ではない状態だ

「シノの事だから心配する事もないだろうと高をくくってはいるが・・・やっぱり俺も探しに行けばよかったかなぁ」

「国王が今国を離れたら誰が影武者をやると想ってるんですか・・・?私達はごめんですよ」

と・・・国王がそう提言しても結局御庭番達の反対にあってしまう始末だ、国王・・・・・・ムサシが始めてシノとあったときは彼女ももう少しおとなしく母親よりももう少し行動力はなかったがまさか今になってこんな事になるなんて誰も予想だにしなかった彼女の行動に国の大半も動揺してはいたものの・・・・・・中には「いつかこんな日が来るのでは」とも想っていた者も少なくはなかった、それでもムサシが動揺するのも無理はない話しなのだが・・・・・・・ジェムカ達が出るまでの間ムサシ自身本当に国を出てまで自ら探しに行くべきかを迷っていたのも彼がシノに対する特別な想いあってこそだった

「結局・・・シノさんに関する情報あまり集められなかったね、どうやって探そうか・・・」

「解らない・・・でも俺達はなるだけ出来ることをするだけだよ、それに・・・」

「それに何よ・・・何かあてでもあるわけ?」

「いや・・・そう言うわけじゃないんだけど、どうも・・・・・・何かの『予感』って言うのを彼女は持ってるのかも・・・だから国を出たんじゃないかな?」

「・・・それじゃあ何、彼女は勘だけで国を出て何かを探してるって事なの!?そんなバカな話誰が信じるのよ・・・」

リゼルグのとんでもない推理にさすがのルチルも動揺と焦りを隠せなかったが彼の言っている事の全てが全ていい加減というわけではない事をジェムカは理解していた・・・ただ根拠のない割りに実質確信を付いてる所もあるのでそう想われるのも無理はないのだが、実際に探す対象が多いとどれから探せばいいか迷ってしまうくらいだ

「そう言えば・・・シノさんのお母さんってアスティルで死んだって言ってたよね・・・・・・という事は、アスティル・・・・・・ハルニム帝国へ行けばシノさんに繋がる手がかりを得られるんじゃないかな」

「そっか・・・なんでそれに気付かなかったのかしら、そうよね・・・ハルニムなら何かしら手がかりを見つけられるかもしれないわ・・・・・・(もしかしたら御庭番でも見つけられなかったラキルの手がかりも・・・)」

「もしかしたら俺達がシノさんよりも先にハルニムに着けるかも・・・って言っても難しいかな・・・・・・・そんな事」

「あら・・・そんな事解らないわよ、聞けば彼女の着けてた鎧って・・・大臣の家系に代々伝わるものなんですって・・・・・・こんな大冒険にあれだけ重いものつけて出歩くなんて・・・危険にもほどがあるけど国王の話じゃ彼女のお母様はそれを着けてアスティルへ言った事があるんですって・・・多分そこらで馬とか拾ってるようなら私達もドラゴンを探す事を考えましょう多分その前に彼女を捕まえられるかもしれないけどね・・・」

「ルチル・・・そんなこと言って大丈夫なの?」

「私はリゼルグと違ってちゃんと根拠はあるわよ、おおよその話は大臣や国王達から聞いてたからね・・・それに・・・・・・彼女をこのまま行かせちゃいけない気もするの・・・何かいやな予感がする、最悪の場合彼女は・・・私達以上に危険な行動にも出かねないわ」

「え・・・それってまさか・・・・・・」

みんなはルチルの言葉に息を呑みそうになる・・・次の彼女の言葉に何の意味を持つのか、彼女が何を考えてここまで言い放てるのか・・・彼らはそれがどうしても気になって仕方がない状態だ、そのルチルも一呼吸起きながら自分の考えを声に出すその時までどこか据わっているような覚悟を決めた眼で仲間達を見る・・・恐らくだけど彼女が言葉を放つその瞬間までの沈黙が・・・・・・どこか長いようにも感じられる、ジェムカ・リゼルグ・ソムニルの3人は彼女の言葉を待ってる間をどこか恐ろしくも感じていた

「・・・・・・このままだと、彼女は確実にハルニムで死ぬわ・・・彼女のお母様と同じように」

同じ悲劇をまた繰り返す・・・彼女の出した結論にまた沈黙が彼らを襲う、だが普通に考えればシノ自身にも怒りをぶつける場所がマツカゼのどこにもなくなり母が散ったその戦場に行けば何かしら見出せるかも知れないと言う事ももしかしたらあるかも知れない、ルチルは恐らくそれを示唆してなのか俯き加減で声を震わせていた

「まさか・・・でも・・・・・・本当にそんな事が」

「私の言ってる事だって本当は確証があるわけじゃないわ・・・でも、可能性としては考えられなくもないと想うの」

「それで・・・仮にこの話が事実だとしても彼女をどうやって思い留まらせれば・・・・・・」

「そんな事私に聞かないでよ!!」

勢いのあまりルチルは想わず叫んだ・・・別に自分達がこんなにも無力だった事に怒ってるのではなくシノを止める手立てを見出せない事に憤りを感じている自分が許せなかったからだ、ルチルは自分の弱さをどこかで悟っていた・・・だからラキルの事も心のどこかで諦めていた所もあったかも知れない、だからと言ってこれ以上手を拱くのはもっと嫌だったから・・・・・・それに今のシノならまだやり直せるかもしれないと彼女はそう考えていた

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2007年5月19日 (土)

第1部(第36話)

シノがマツカゼを去った事は街中の知るところとなり、気がつけば翌日の新聞にその話題が載るほどの騒ぎになってしまっていた・・・彼女がどこへ向かったのか誰にも告げないまま突然国を去ったシノをムサシは想わず「誰でもいいからシノを探してくれたら城へ連れて来てくれ」と街中に捜索願を大々的に公表するほど心配していた・・・・・・と言うより動揺していた、そんな騒ぎが起こってから約3日・・・ルチルもようやく熱も治まり以前よりも軽く動けるようになったと自分でも驚きを見せていた

「信じられんな・・・まさかベルステルの者がここまで回復力の早いとは・・・・・・」

「あら・・・案外そうでもないわよ、私の場合・・・普通より身体が丈夫なだけだから」

「それでも・・・あなたが今ここで死なれては悲しむ者がいると神がそう想ったのじゃろうな」

「・・・・・・そう・・・かしらね(・・・ラキル、あなたは今どこにいるの・・・・・・)」

ルチルは一瞬ラキルが自分を想ってくれていたのではと考えてはいたが・・・彼女が生きているかどうかも解らない今はそう信じるしかなかった、マツカゼに来てからの1週間あまりで・・・いろんな事が起こりすぎたような、何から思い出せばいいのかも解らないくらい・・・色々とあったような・・・・・・そんな気がしていた

「どう・・・いた?」

アヤメ達お庭番はマツカゼを出たシノの足取りを探ってはいたが殆どそれに繋がるものは見つけることは出来ず手をこまねいていた、当然の事ながらこの事で特にアヤメは大臣以上に焦っていた・・・彼女はシノの母であるサヤに憧れていていつかは「シノを護れるようになりたい」と幼少の頃から心の中で想い続け、ようやく兄と同じお庭番になるとシノはそれ以上に剣士としての腕を会得するまでになっていた・・・それでも彼女はシノのために彼女の側にいてずっと一緒にいようと決めていた、それが突然姿を消したのだから動揺するのも無理はないだろう

「シノ・・・一体どこへ行ったのかしら」

「・・・・・・あのシノが今まで国を出た事なんて今まであっただろうか・・・僕達の記憶上そんな事なかったのになぁ」

「ちょっと兄さん!こんな時に何のんきなこと言ってるのよ!!?」

「アヤメ・・・お前少し落ち着け、確かに今はこの国にとっても一大事かもしれない・・・お前がシノを想う気持ちも解らなくもない・・・・・・だがどの道僕達がシノを止めるだけの力があると想うか?今の状況を考えればそれは殆ど不可能な話だ、サヤさんが生きていたとしてもそれはきっと同じ事だよ」

「だけど・・・」

「大丈夫だって・・・シノだって子供じゃないんだし、だけどシノがどこへ向かってるのか・・・それも解らないようじゃ僕達も探しようがないなぁ」

「だったら・・・・・・」

「・・・・・・・?」

「・・・・・・・それだったら、あたし1人でも探しに行くわよ!!それくらいやらないと気が済まないわ!」

何を想ったのか突然城へと引き返したアヤメは国王の下へと駆け込みその場へ座り込んだ、あまりにも険しい彼女の表情に国王の側にいた大臣も思わず凍りついたような感覚を覚えその場は一瞬水を打ったように静まり返った・・・・・・切羽詰ったようなアヤメの姿を見てジェムカ達も想わず彼女の動向を見守るようにその後ろで様子を伺っているがまるでこちらにまで緊張感が伝わってきてるのか彼らはあまりアヤメに近づく事はほとんどなかった

「国王・・・シノが国を出たというのなら私に探させてはもらえませんか」

開口一番・・・彼女は国外への捜索を直訴してきた、リュウシロウの時のように偵察の任務ではないため当然の事ながら国王もそれに賛同するかを一瞬迷った・・・だがシノが心配なのはみんな同じ事、ジェムカ達も彼らと同じくシノが出た事で動揺は隠せなかったがジェムカがそれを見た事でシノが何か考えがあっての事だろうとも一度は想われていた・・・だがそれらは誰も知る事もなく彼女が国を出てしまったのは事実だ

「・・・・・・彼女の事だし、心配はいらないんじゃないの・・・私と違って」

などと言ってはみるものの、ルチルも実際の所この状況が飲み込めなかった・・・しばらくして大臣は席を立つとふらふらとした足取りのまま部屋を後にした・・・・・・不安を覚えたのだろうか恐らく家に戻るのだろう、気になってソムニルが大臣の後をそっと追うと彼は間違いなく家へと戻っていった・・・やがて大臣はまた家を後にすると今度は城とは別の方向へと歩き出す・・・それを不審に想いながらもソムニルは気付かれないように再び後を追いかける、ところがしばらく歩いた所でソムニルは大臣を見失ってしまい最後に大臣を見た袋小路で考え込んでは見るものの・・・やはりそこには人一人隠れるスペースもどこかへ抜ける道もなかった

「あれ・・・おかしいなぁ・・・・・・(でもあの大臣の一連の行動・・・お庭番達もかなり怪しんで行動を見張ってたと言うのにすぐに見失うなんて・・・・・・何か裏があるなきっと、でもこれは・・・シノさんの家出とはあまり関係なさそうだが、でもなぁ・・・)」

それ以降大臣の足取りを見つけることなくソムニルは城へと引き返して行く、その間にジェムカ達もマツカゼを出てシノの足取りを追うと同時にこれまでどおりラキルやドラゴンの行方・・・それにジェムカに繋がるものを探しに出る事を国王と話し合い翌朝には出発する事が後でソムニルにも告げられた

「まぁ結局・・・何をするにも長居するわけにはいかないだろうし、仕方ないよね・・・」

「そう言うことかな・・・でもなんでまたシノさんが・・・・・・」

「・・・俺想うんだけど、大臣の行動についてちょっと怪しいと想わない?」

「・・・・・・そういわれてみれば確かに怪しいところは多少あるかもしれないけど・・・それと彼女の家出と何の関係が?」

見ようによっては怪しいとも取れる大臣の行き先についてみんなは不可解にも感じてはいたが当然の事ながら国中の人にはそれが一種の疑心暗鬼にもなっている事は国王も承知の話だった、実際の所シノが父の行動に関してそれをどうとって動いたのかと聞かれれば・・・やはりそれは本人に聞けばいいのだがそれを知るためにもまずはシノを探さなければならない、今から探せばまだ間に合うはず・・・さすがにシノも1日2日ではそう遠くへいけないからだ

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2007年5月12日 (土)

第1部(第35話)

ジェムカから少し遅れてシノは城の前に辿り着く、だが彼女はそれ以上中へ入ることはなくそのまま塀沿いに歩き出して行った・・・ムサシは城門の前まで走ると塀沿いを歩く彼女の姿を捉え駆け込みながら彼女に追いつき息を切らせてシノの腕を掴み倒れそうになる

「・・・ムサシ、一体どうかしたのか?」

「それは・・・俺の・・・・・・セリフだよ、一体・・・この物々しい格好は何?いくら父上とは言え大臣は斬らせないぞ」

「誰が自分の父上を斬ると言った・・・」

「え・・・だって、ジェムカがお前の格好見て・・・・・・大変な事になるからって・・・」

「別に拙者は城に乗り込んで父上を斬りに来たわけではない、そんな事になったら拙者まで切腹せねばならぬからな・・・」

「そんな大事な・・・じゃなくて、だとしたら何でまた・・・?」

彼女はそのまま言葉をつぐみムサシからも目線をそらすように俯く、空模様はいつの間にか重暗い雨雲が周囲を多い・・・大粒の雫が2人を濡らすように降り注いだ・・・・・・雷が何度か城の周りで鳴り響く中でシノはようやく想い口を開きその胸の内を明かした

「・・・・・・今の拙者では父上の力になる事は叶わぬ、どうしていいか・・・解らないから・・・・・・だから・・・どこか・・・・・・そうだ・・・誰も知らない世界へ・・・ジェムカ殿達の見て来た世界を・・・見に行こうと想ってな、そうしたら・・・死んだ母上の事も・・・きっと今なら解る気がして・・・・・・?」

言葉を何とか繋げながら話すシノをムサシは何も言わずそっと抱きしめる・・・彼の表情は寂しさと不安で雨と一緒にその想いまで流れてしまいそうな・・・・・・感情をそのまま彼女に伝えるように彼の眼からも雫が流れ落ちていた

「バカな事言わないでくれ・・・今お前がいなくなったら俺は・・・・・・」

「・・・拙者は決して死なぬ、何のために何かを成し遂げようとかあまり考えないが・・・・・・今からならそれを見つけれるやも知れぬ・・・頼むから・・・今のは・・・・・・父上には言わないでくれ、父上の事だ・・・この事を知れば確実に動揺する」

「確かに・・・大臣ならそうなるかもな、だがな・・・・・・お前がいきなりいなくなったら・・・・・・俺だって・・・解るだろ!!」

涙ぐむような声でムサシはシノに対してその思いを打ち明ける・・・だが彼の拙い言葉ではそのすべてが彼女に伝わる事はなく、シノはその場を去るのをムサシは見送るしかなかった・・・やがて雨が激しさを増しいつの間にかその目線の先にシノの姿はもうどこにもなくただ立ち尽くすだけに過ぎなかった・・・・・・その様子を城門前で見ていた大臣も娘の異様な行動に不安を抱えどこか浮かない表情で娘を見送ると何も言わず城主が戻るのをただ待っていた

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2007年5月 5日 (土)

特別編その4

そんなこんなでGWももうすぐ終わり・・・と言う事なので今回も連休企画としてキャラクター思案をここでご紹介、前回殆ど転寝したためまともな事はかけませんでしたが・・・(だったら今からでも直せばいいものを・・・(汗))

Riselge リゼルグ・ガルト 16歳「9月13日生」 

血液型:AB 

趣味・特技:ドラゴンと遊ぶ・剣術(近辺の国ではリーチェと同じくらい恐れられているとの噂)

大事なもの:ピアス(兄の形見)エアルク皇帝

エアルク帝国の騎士団長、先代の騎士団長リーチェにも負けない腕前は帝国近辺で知らぬものはいないほど、近隣の国でジェムカの話を聞き彼と共に旅をする事を決意する、そして冒険を進めていくうちジェムカに対する特別な感情をが芽生えさせるが・・・

彼に関しては甲冑をどうしようか未だに迷ってる所ですね(そしてそれとまったく同じような事がルチルにもあったりする)、キャラとしては出来上がってるかなとは思ってるのですが彼自身ところどころから回りしたりとリーダーとしては少々頼りない所もありますね(現にルチルを怒らせてパーティが分散した事もありました「第1部18話参照」)、それでもリゼルグ自身パーティをまとめようと考えてはいるものの未だにその打開策を得られない状況に彼自身不安を抱えたまま・・・果たして彼は今自分にとって何をなすべきか見つけられるでしょうか

2週に渡ってお送りした特別編いかがでしたでしょうか・・・それでは引き続き「黎明のカタルシス」をお楽しみください

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2007年4月28日 (土)

特別編その3

ようやく登場人物のイラストを書き終えました・・・とは言え相当苦労しましたが(汗)今回はイラストと共にこれまで載せた紹介、それ以外にもちょっとした秘密などをここでご紹介・・・

Jemka ジェムカ・ランクス(ジェムリクア・レイス・アスティル) 17歳「6月28日生」

血液型:B

趣味・特技:料理全般・野宿

大事なもの:ペンダント(アスティル王家のもの?)髪飾り(リーチェの形見)

本編の主人公、アスティル国王子であったが幼少の頃に国が崩壊し一人逃亡と同時に王子であった事さえも忘れてしまう、インセルで倒れていたところを師匠リーチェ・ランクスに拾われ持っていたペンダントからジェムカと名づけられる、リーチェの死後彼女の古い友人と言うリゼルグと逢う事で自分を取り巻く運命を変える事になる

やはりこう言ったストーリーの主人公は何かしら秘密が多かったりそうでもなかったりと極端な所が多々あるもの、実際に出来上がったものを見ると「やはりここはこうしたい」と直すのは簡単には見えるでしょうがその後のストーリーへの影響もやはり考えてしまうところは多いですね

次回も引き続き登場人物考案の話をお送りします

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2007年4月25日 (水)

試作品&お知らせ

今週の土曜日(4月28日)と来週土曜日(5月5日)に「黎明のカタルシス」GWイベントとしてキャラクターのイメージイラストを公開します

と言っても今のところ出来上がってるのは本当に数が限られているのでそれまでに載せられるかが不安要素なんだけどね、ところで・・・今どれくらい出来上がってるの?

今のところだと・・・俺が知る限りじゃ下書きが完成してるのはジェムカとリゼルグ、完成間近なのはルチルだって(とは言えルチルのは本当の意味で試作品だからまた別の機会で直すって言ってた)

またなんでそんな面倒を・・・?

さぁ・・・でも今回のはあくまでも原型だからどう直されるかとか俺にも解らない、だけど・・・あれで見てほぼ6割完成だと思ってくれてもいいそうだよ

そうなんだ・・・またアバウトに見えるけどそう言うことなら私としては文句はないけどね

あはは・・・まぁ、今のところはまだ手探りって事で・・・ね

オイオイ・・・(この小説載せてもう半年以上経ってるのにこんな調子で本当に大丈夫なのかしら・・・・・・)

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2007年4月21日 (土)

第1部(第34話)

シノは家に入るなり女中達に着替えを用意させる、その間ジェムカは家の前でシノが出てくるのを待つようにそこに立っていた・・・多少落ち着きがない様子で彼女が出てくるのを待っては見るがシノ自身が何を考えているのか・・・考えてみてもやはり答えが出てこなかった

「(シノさん・・・やっぱり思い詰めてるんだ、俺なんかじゃ・・・力になれるはず・・・・・・ないよね)」

塀の生垣に寄りかかりながらそんな事を考えていると門の方からシノが現れジェムカと目を合わせた、彼女は先ほどとは違いものすごく恐ろしいまでの形相でまるでどこかへ戦いに行くのではと想わせるほど立派な甲冑を身に着けていた

「し・・・シノ・・・・・・さん?」

「ジェムカ殿・・・済まぬがこれから用があるゆえこれにて・・・・・・それから、決して拙者の後は追わぬよう・・・・・・」

意味深な言葉を残して彼女はその場を立ち去る・・・彼女が向かった方向には城があり何の迷いもないシノはそこへ向かっていくような堂々とした足取りだった、そんな彼女を見送ったあとジェムカは急いで城の方へリゼルグ達にその事を伝えるために走った

「(シノさんの事だ・・・きっと思いつめて何かやる、何とかしないと・・・)」

何とかしてシノよりも早く城へ辿り着きたい一心でジェムカは走るが、マツカゼに土地勘のない・・・と言うより幼少の記憶の殆どない彼にとってはどこをどう行けばいいか解らない状態だった何度かシノと鉢合わせになりそうになりながらも彼女を追っていくうちようやく城の前に辿り着いたジェムカは残り少ない体力を振り絞りながらもシノの事をリゼルグ達に伝えるとそのまま倒れこんだ、話を聞いた国王はシノを探すため1人で城を飛び出していく・・・

「後の事は頼む・・・大臣、お前は何も責任を感じる必要はない・・・大丈夫」

彼はそう言って城を出て行き残された大臣は不安と動揺を抱えながらもリゼルグの側につき肩を震わせ娘と国王の無事を祈った・・・

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2007年4月14日 (土)

第1部(第33話)

突然倒れこんだルチルは項垂れる様に意識を混濁させていた、彼女を診た医者の話では山を登ったときに何かしらの病気にかかった可能性もあるとの事だったが雨に打たれてそうなっただけならすぐにでも回復すると言う事なのでしばらくは様子を見る事になった・・・だが彼らはこの時になってルチルがどれだけ妹の事を気に掛けていたかを思い知る事になる

「しばらく安静にしてればすぐに元気になるじゃろう・・・しかし何でまたこんなになるまで動き回れたのかが不思議なくらいじゃのう」

「・・・ルチルは・・・・・・ハルニムに連れ去られた妹が心配だったから・・・ドラゴンを探しに1人で歩き回って・・・だからこんな・・・・・・」

「お前さんは・・・仲間を護りたいと想う気持ちだけでここまで来たと想っておるようじゃがそれだけじゃまだ不十分じゃのう、何も今焦って全てを成し遂げるなど普通の人間には出来ぬ話じゃそれにな・・・どれだけ器用にこなそうとも中身が伴わなければ同じ事なのじゃ」

医者が部屋を出るとリゼルグはしばらく考え込むようにルチルを見つめる・・・彼自身ルチルに対する罪悪感を感じながらも彼女が無事に復活する事を考え、そのまま意識を消すかのように眠りこけてしまった・・・・・・女中が入るとリゼルグはルチルに覆いかぶさるような格好で転寝している姿を見て彼の手はしっかりとルチルの手を握り締めている、急いで毛布を取りに走るとそれをリゼルグの体に掛けてやりルチルの額にかかっている手ぬぐいを取り替えるとそのままそっと部屋を後にしていった

同じ頃・・・ジェムカは1人シノを探しに町を彷徨っていた、しばらく歩きながら辺りを見回すがやはり彼女の姿はない・・・・・・仕方なくどこで出会ったのかを頭の中で辿りながら茶店を回り始めるとシノは同じ店であの時と同じようにお茶をすすりながら何事もなかったかのようにそこにいた・・・始めて逢った時よりも冷たい何かを感じるのは父親に対する何かを彼女自身が持っているから・・・・・・ジェムカはそう実感するがいざ彼女を見つけても何から話せばいいのか、何を話せばいいのか・・・それよりも・・・・・・話しかける事自体戸惑ってしまう

「・・・拙者は別に父上に怒ってるわけでも皆の事で憤りを感じてる訳でもない、ここへ着て一緒に茶を飲め」

シノは目線を向けることなくジェムカにそう告げる・・・気配を察知しての言葉なのだろう、恐る恐るジェムカは勧められるままにシノの隣に座ると傍らに置いてあった団子を手に取る

「その団子は拙者も好きなものでな・・・これを食べれば何もかも悩みがなくなる感じがする、お主も食べろ・・・美味いぞ」

やや緊張気味ながらもジェムカはその団子の1つを口に運ぶ・・・割った中から何か花のような香りが口中に広がり一瞬どこかへ意識を飛ばしそうになるほど彼は何もかもを忘れたかのように目の前の世界が揺らぐような感じを覚えた・・・だがそれは一瞬でまた元に戻り、気が付くと何事もなかったかのようにシノがそこにいる・・・彼女の言葉どおり何もかも自分が悩んでいた事を忘れていたような・・・そんな気がしていた

「俺は・・・自分で勝手に考え過ぎていただけなのかも知れないね、今それが解った気がする」

「そうか・・・それはこの土地にしかない「忘桜」の花を使ったものだ、ここのものはみんなこの土地で取れるものを使っているからな・・・悩める者も、重い気持ちの者も・・・皆ここの団子を食べてまた明日を生きている・・・ここはそう言う所だ」

「そっか・・・」

「この団子を・・・父上に食べさせれば簡単に話してくれるやも知れぬが、今はとてもそんな状況でもないだろうな・・・・・・」

そっと立ち上がるとシノはそのままどこかへと向かっていった、ジェムカもその後を追いかけしばらく歩くと彼女は家の近くで立ち止まり何もなかったかのように振舞うようにまた歩き出すシノの表情は複雑な面持ちを隠せないようにどこか動揺していて・・・・・・彼女自身どこかで自分の感情をぶつけるよりしろを見失っているかのようだった

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2007年4月 7日 (土)

第1部(第32話)

ルチルが意識を失いパーティは一気に困惑しだす・・・だがソムニルはそれに動じることなく彼女の体を何とか支え立ち上がると近くの部屋で横たえさせる、額に手を当てるとかなりの酷い高熱が彼女から出ており息もかなり荒い、前日山へ向かった際雨が降ったせいで気温も下がったため砂漠を離れた事のなかった冒険に慣れない彼女の体にとってあれほど過酷な状況はなかっただろう

「ルチル姫は・・・どうやら精神的にも肉体的にも疲れてるようだ、どうだ・・・お前達でよければしばらくはここで休んでいかないか?こんな状況だし・・・バラバラで宿を取る事もないだろうに」

「え・・・でも・・・・・・」

「遠慮するな・・・お前達には聞きたい事がまだまだたくさんあるからな」

国王はそのまま押し切るようにジェムカ達を城にとどまるよう話を付ける、リゼルグは少し迷ったがこのままではルチルを見殺しにしかねない・・・また彼女が無茶をすればそれこそ彼女自身の生命にも影響してしまうだろう、それに・・・城にしばらく留まっていればこの辺りでドラゴンやラキルの情報を掴むヒントを得ることが出来るかも知れない・・・確かにすぐには無理かもしれないけど今は・・・ルチルの身体の方が心配だった

「ルチル姫を先生の所へお連れしろ、後の事は・・・俺が何とかする」

ため息を付くような声でお庭番に指示を出すと国王はそのまま縁側へと出て行く・・・リゼルグはルチルの身を按じてかそのまま彼女の元へと向かっていく、ジェムカは城を出て行ったシノを探すためひとりで街中へと戻って行き残されたソムニルは国王の向かった縁側へと付いていくように歩き出した・・・・・・座り込んだ国王の様子はいつになく虚ろ気にも見えたがソムニルはその様子を気にしてか話し掛ける事を躊躇うかのように言葉を詰まらせていた

「(どうしよう・・・昨夜ならともかく今は・・・・・・俺がどうこう出来るような力があるわけでもないのに、何考えてるんだろ)」

「昨日は・・・殆ど眠れなかったよ、ずっと・・・お前の事が頭に引っかかっててさ・・・・・・」

ソムニルの気配を感じたのか国王の方から虚ろ気な口調で話しかけてきた・・・あの時と同じように何も考えていないかのようにも取れるような言葉で、彼も国王の言葉に想わず側に近寄ると座り込み顔を覗き込むように下から俯く国王の表情を伺ってみた、すると国王はソムニルと目線が合うと再び目線をそむけるように顔を横に向ける

「なんて言ったらいいか解らないんだけど・・・何から話せばいいのか俺にも解らなくて」

国王の表情は明らかに顔を赤らめて恥ずかしさのあまり照れ隠しするかのように言葉を詰まらせながら話を切り出すタイミングを必死になって考えている・・・昨夜とは勝手が違うせいなのかそれとも昨夜からソムニルの存在そのものが気になっていたせいなのか・・・自分でも解らないくらい彼は考えていた、顔を一瞬見るだけでも胸が高鳴るような感覚に国王自身戸惑っている、そんな感じがした・・・ただそれを認めるのが正直怖かったがどうしたら押さえられるか少し考えてみる

「国王様・・・具合でも悪いんですか?」

そんな彼の苦悩を知らずにソムニルは何事もなかったように国王に近づき話しかける、そんな彼の表情に不安とか警戒心とか・・・そう言った感情は一切見受けられず・・・・・・ただ彼は何も考えずからかい半分に見つめるだけだった、とは言え国王自身ソムニルと逢ってから自分の気持ちがどこかギクシャクしているのを感じているのは言うまでもない話だが・・・

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2007年3月31日 (土)

第1部(第31話)

形式としてはかなり複雑ではあったがようやく城の中へと辿り着いたジェムカ達は国王に自分達の記憶やラキルの行方などに関することを聞き出した、とは言ってもあまりにも情報が少なかったのか当然の事ながらラキルの手がかりは掴めていないと言う答えが返ってきた・・・・・・がジェムカを見たときから大臣は何かを感じているのか言葉には出そうとしないが明らかに彼は落ち着きがない

「ジェムカ・・・ジェムリクア王子・・・・・・(あの時本当に王子が生きているのなら・・・ここにいるあの少年がジェムリクア・レイス・アスティル・・・アスティル王国の後継者・・・王子がこうして私の前に現れるとは・・・これも何かの導きなのだろうか)」

「さっきから何動揺してるんだよ・・・ミナト?」

「は・・・?」

「お前・・・さっきから様子が変だぞ、シノの事でいちいち気にするほどあんたはそんなに老けちゃないだろ?」

「・・・・・・」

「それとも・・・ジェムカの事か?俺だってお庭番連中から大方の事は聞いている、だが・・・信じるには何か決定打に欠ける気がするんだ」

「国王・・・」

「それより今は・・・心配なのはラキル皇女とドラゴンだな、ドラゴンは意外と頑丈だから何とか見つかればそれでいいのだろうが・・・・・・ラキル皇女の場合はそうも行かない」

国王達の話をルチルは他の誰よりも真剣に聞き入っている、自分とまったく同じ血を分けた双子の妹となれば心配になるのも当然の事・・・想わず立ち上がり国王の下へと駆け寄り焦りの表情で彼に問い詰めるようにじっと見つめ続ける、彼女自身・・・まだ焦りが消えたわけではないがそれでも冷静になれば少しでも確実に近づいてラキルに逢えると・・・そう信じている

「・・・・・・それって殺されてる可能性もあるって事?」

「多分な・・・だがあんたはまだ生きてると信じたいんだろ?」

「と・・・当然よ!彼女は・・・ラキルは私のたった一人の・・・・・・家族だから、だから・・・私は信じたいの・・・・・・彼女が生きてる事」

「そっか・・・それは済まなかったな、だがハルニムから消えたと想われる後の消息が解らない以上俺達でもどうしようも・・・・・・」

「それは解ってるわ・・・だけど・・・」

「だけど・・・これ以上行方が解らない以上まともに動くのは危険だと想ってるんだな?」

心の中を見透かされたように感じた・・・ルチルは胸の奥で何か棘のような物が刺さったかのような痛みを感じた、きっと・・・自分のやってる事は無駄に終わるかも知れないと言う恐怖なのかも知れない、彼の言葉が本当ならラキルはとっくに死んでるかも知れない・・・そんな不安が彼女をどこか別の世界へと煽っているようにも感じられる

「ルチル・・・どうかしたの?」

「・・・・・・解らない・・・何も・・・・・・私は・・・一体何を・・・」

「・・・・・・ルチル・・・大丈夫、ね・・・妹さんが生きてるって信じていれば・・・・・・きっと逢えるよ」

「それは解ってる・・・解ってるはずなの、でも頭の中で・・・心のどこかでまだ不安が残ってる気がする・・・・・・」

ルチルは少し青ざめた顔つきで自分の顔に手を当てながら俯き息を荒げながら言葉を続けようとする・・・顔色はしばらくすると元に戻ったが彼女の言葉どおり不安が残るのかどこか落ち着きがないようにも見えた、だがとりわけ1日2日でそう手がかりが見つかると言う保障もないことも事実である事はルチル自身その身を持って解っている事・・・ソムニルも独自で集めた情報が今のところまともに頼れる保証がない事もどこかで割り切っていた気がした、国王は一瞬彼らに何か手助けが出来ないかを考えてみるがそんな事そう簡単に出来るほど国王の責務が暇ではない事もあるのか、すぐに断念しかける・・・だがここで引き下がってしまってはそれこそ彼らにとって目的を見失う事にも等しい、だからと言って自分のやるべき事をここで放棄する事など出来るはずもない・・・何かが彼の中で全てを変えようとしているのが・・・彼自身どこかで感じていた

「(そう言えば・・・ルチルってパーティが散り散りになってた時どこへ行ってたんだろ・・・・・・?なんかさっきから様子が変だし、それに・・・昨日よりも少し顔色が悪いみたい・・・・・・きっとなれない土地で不安になってるのかな?)」

「・・・・・・(おかしい・・・昨日まではなんともなかったのに頭がボーっとする、いや・・・きっと気のせいね・・・そんな事この私にあるはずが・・・・・・)」

「(急に静かになったな・・・よっぽど堪えたらしい)」

「ルチル・・・?」

顔色が戻ってしばらくは気丈に振舞っていたルチルもいつの間にか意識が混濁し再びその場でうずくまり始める、それでも話を続けようと国王は言葉を続けるがついには何の予告もなしに彼女はその場で倒れこんでしまった・・・

「ルチル!!」

彼女が倒れる一瞬・・・心配そうに自分の身体を支えようとするソムニルの声が聞こえたような・・・・・・そんな気がした

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2007年3月24日 (土)

第1部(第30話)

数年前・・・シノは母を失った・・・・・・その時の彼女はまだ「妖刀 蒼龍」を持つまでの力は持っていなかったが剣の腕前は既に母親に近づきつつあった、突然目標を失った事で彼女はどうしていいか・・・解らなかった

「母上・・・なぜ私達を置いて死なれてしまったのですか・・・・・・」

「シノ・・・サヤは多分私達と同じくらい護りたいものがあったから・・・そのために戦った、そして・・・魂も命も投げ打ってまで護りたいものがあったんだよ」

「父上・・・・・・なぜそこまでして母上を行かせたのですか・・・」

「解らない・・・解らないけどそうしないと・・・・・・サヤがサヤでなくなってしまう・・・そんな気がしていた」

「そんな事・・・私には解りません、ですが・・・」

「・・・・・・解っている、本当は・・・・・・引き止めればよかった事くらい・・・・・・そうすればサヤは死ななかったかも知れないと」

「父上・・・」

「でも本当は解ってたんだ・・・引き止めたって彼女が止まるような人じゃないって事くらい・・・・・・」

最後に交わした会話からどれくらい経ったのだろう・・・父とまともに話したのは母が死んで以来殆どないと想われていた、こうしてシノがマツカゼ城にいる事も随分となかったが・・・やっと何かしら聞きだせるきっかけを見つけたような・・・そんな気がしていた

「ねぇシノ・・・どうかしたのさっきから?なんか様子が変だし・・・いつもより・・・・・・(いつも以上に・・・冷たい目をしている、一体大臣と何かあったのかな?)」

王のいる大広間へ駆け足で向かうシノの表情はいつも見ているアヤメが見ても冷たく感じた、だがそれは・・・母親であるサヤの「誰かに対する強い想い」と言う力がこうして彼女に強い影響を与えているのだろう、長く続く部屋を走り抜けようやく辿り着いた時には彼女の表情に余裕もいつもの落ち着いた雰囲気もなく・・・ただ何かに憤りを覚えたような形相で王の傍らにいる大臣に向かって何かを言いたそうな・・・・・・感情的な物しかそこにはなかった

「やっと来たかシノ・・・随分と・・・・・・?」

「父上・・・あなたに聞きたい事がある」

「・・・・・・どうかしたのか?シノ・・・」

「とぼけないでいただきたい・・・あなたは何か拙者に隠している事でもお在りのはず、どうしても言えぬと言うのなら・・・この場で斬る!!」

シノは手に持っていた刀を一瞬抜き始める、彼女なりに父から何かを聞きたいとは想っているのだがどうしても行動の方が先にでてしまう・・・大臣もそれを知っているのか慌てて彼女を制しようとする、ようやく落ち着きを取り戻すと大臣は思わず「この辺は母に似てきたなぁ・・・」とまで考えてしまう・・・そこまで彼女は母親に近づきつつあるという事だと父である大臣は納得するがそれと同時にいつか娘に斬られるのではないかと言う恐怖さえも憶えた気がした・・・だが実際彼女がそんな事をするような性格ではないという事も解ってはいるはずなのだがどうしてもそれが本当になるのを恐れてしまう

「やれやれ・・・ミナト、お前一体何かやらかしたのか?」

「いえ・・・私は何も、それよりもシノ・・・どうかしたのか?わざわざ出向くなんて・・・」

「拙者が用があるのは父上・・・あなただ、一体拙者に何を隠している・・・」

「・・・・・・どうしても答えなきゃだめか?」

「当然・・・答えてもらうぞ」

張り詰めた空気の中・・・ジェムカ達の入る余地は殆どなかった、はたから見たら一方的な親子喧嘩にも見えるが誰もシノを止める気配はない・・・この場を打破する方法を何とか考える大臣は娘の尋常じゃない様子を目の当たりにして動揺はしたがいくら考えても答えは見つからず業を煮やしたのかシノもそのまま刀を納めるとジェムカ達のもとへ戻った

「そこまでして答えられないというのなら・・・何か事情があるのであろう、本来なら拙者も大人気なく実の父を斬ってしまう所だったが・・・・・・」

「(マジで斬る気だったのか・・・いや、あのサヤさんの血が入ってるシノだ・・・やりかねない)」

「それでは何の解決にもならぬ、また日を改めて伺うとしよう・・・家で聞く事はほとんど難しいだろうから・・・・・・王やみんなの前で聞かせてもらいたい」

それだけ言うと彼女は静かに城を後にした・・・残されたジェムカ達はどうしていいか一瞬迷ったがミナト大臣はジェムカ達の存在に気付くとすぐに大臣としての責務を果たすため声を掛けた・・・だが大臣はジェムカの顔を見るなり一瞬動きを止める、どこかで見覚えがあるのではないかと迷いもしたがシノの事もあってなのだろうか・・・・・・すぐさま頭を軽く振り何もなかったように振舞おうとする・・・だがそれを側で見ていた国王にとっては大臣が明らかに不自然に動揺している様子を見て何かあるのではと怪しむような目線で見ていた事は誰も知る由はなかった

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2007年3月17日 (土)

第1部(第29話)

リゼルグは昨夜から色々と考え込んでいたらしくそれを思い悩んだ結果自分にとってそれはあまりいい答えを見つけられないと悟った・・・気がすると言う実感はあった、だがそれだけでは本当にそれでいいのかもあやふやだ、そばにいたジェムカも心配そうに彼が起きるのを待っていたのかリゼルグが見た彼の表情はとても悲しそうにも淋しそうにも見えた

「・・・・・・君には心配ばかりかけさせてしまったね」

「リゼルグ・・・ずるいよ、自分ばっかり・・・・・・責任とか自分で全部背負い込んでさ・・・少しくらい俺達に相談しても・・・・・・そしたら力になれるのに」

「・・・俺には君達を護ると言う大事な使命を持ってる、皇帝直々の命令だからね・・・・・・それなのに俺はそのパーティを壊しかけてしまって・・・・・・ルチルの時だってそうだよ、きっと俺の力不足を諭すように天罰が下ったんだな・・・」

実際はシノの刀で殴られたとはとても言えた物ではないがリゼルグにとってそれが天罰であると言うのならジェムカは彼の言葉をそのまま理解する事にした、とは言ってもやはりシノの力を改めて実感したジェムカにとってはリゼルグの無事の方が気になって仕方がないのもある意味事実である

「(・・・・・・そのうち身が持たないと想うよ・・・リゼルグ)大丈夫・・・?まだどこか痛い所とか・・・ない?」

「少し頭がクラクラするなぁ・・・ルチルに投げられた時よりも衝撃がまだ残ってるよ、でも・・・・・・大丈夫だよ・・・これくらいなら大した事ないから」

「そう・・・よかった(シノさん・・・手加減しなかったんだ・・・いや、あの人の事だ・・・手加減した結果がこれなんだろうなぁ「俺が見た限りでも彼女は元々強い人だから・・・」)ねぇ、リゼルグ・・・俺想うんだけどさぁ・・・リゼルグは何も今すぐ変わろうとしなくてもいいんじゃないかな、俺は今のリゼルグのほうがまだ普通に見えるよ・・・そこまで無理してパーティをまとめなくたってすぐにこうしてまた集まってくる・・・みんななんだかんだ言っても心配なんだよ、色々とね・・・そりゃあルチルだって妹さんの事は気になるだろうしソムニルも樹海を助けたい気持ちが強いし・・・俺だって自分の事よく解らないよ、でも何もかも全部やろうなんて想わなくていいんだよ・・・出来そうな所からがんばろう」

ジェムカはそう言ってリゼルグの手を握ると不安そうな表情を浮かべる・・・だが、それでもジェムカの言葉はリゼルグの心にはしっかりと響いていた・・・・・・彼の言葉でようやく何から始めるべきか・・・それを1つ理解したような・・・・・・そんな気がしている、リゼルグは心の中でそう問いかけるとジェムカの手を握り返しそっと微笑みながら不安そうな彼の頬と手に軽く口付けを残す、一瞬ジェムカには何が起こったのか解らなかったがリゼルグはふら付きながらも立ち上がると何事もなかったようにルチル達の元へと戻って行った

「・・・・・・(リゼルグ・・・一体何を考えてあんな事を?)」

騎士にとっての口付けというのは忠誠を現すものではある、がそれはあくまでも主人の手にそれをするのは当たり前の事であって頬にするのは騎士としての口付けではない・・・リーチェからはその話を聞いていた事はあったのだが頬にされたキスの方が気になってその日ジェムカはリゼルグの顔をまともに見る事はできなかった、彼自身まだ多少の後遺症が残ると話してはいたもののいたって普通に見える、と言うのもジェムカの介抱のおかげなのだろうか・・・翌日の朝にはすっかり元通りになっていたがそれでもシノはリゼルグの力を認めてはおらずアヤメの家を出てからもシノは彼らと行動を共にしている、彼女の考えている事は今のところ誰にも解らない・・・・・・アヤメも心配になったのか彼らと行動を共にしシノを護るため彼女の側から離れず動いている

「ところで・・・マツカゼの国王は多忙なのかな?」

「国王ですか・・・多分そんなに忙しい事はないと想うのですが、ただ・・・大臣が・・・・・・」

「父上がどうかしたのか!?」

大臣の話を切り出した途端シノの反応が変わる、ここ何年も会話すらまともにしていない父親の話・・・ここずっとシノは心配だった・・・たまに顔を合わせたかと想うとその表情は落ち着きがなかったり熱でもあるかのように顔を赤らめる事もしばしばあった・・・だが父は自分とは違いお酒は飲めない人であるため何かあるのだろうと勘付いているがそれをどう自分で切り出そうかなかなか機会を見出す事はなかった・・・だがお庭番であるアヤメの話だ、彼女の話なら信憑性も高いだろうし何か父の事で知ってるやも知れない・・・彼女はそう想いアヤメに何があったのかを聞き出す事にした

「父上・・・一体何が・・・・・・」

「私も・・・実はよく解らないの、今は兄さん達で何とか大臣が夜な夜などこかへ向かっているって言う所までは掴んではいるんだけどそれ以上は私達でも解らなくて・・・・・・」

「そうか・・・済まぬ、だが・・・そのどこかが解れば・・・・・・」

今まであまり表情を表に出すような事のなかったシノは人生で初めて『動揺』している姿を人にさらしてしまったが今はそんな事でいちいち気にしている場合でもない、そう想ったシノは真っ先にマツカゼ城へと向かって行った・・・

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2007年3月10日 (土)

第1部(第28話)

彼らが連れて来られた屋敷はジェムカがお世話になったシノの家とはどこか違う雰囲気で何か曰くがありそうな気配をも感じさせる、アヤメの話では一種の「忍者屋敷」と言う事になっているらしいが彼女は何事もなかったように玄関の戸を押し開けると戸は普通に蝶番でも入っているかのように前に動く

「驚いたでしょ?普通の家なら引き戸なんだけどここだけ普通の扉と変わらないんだ、何しろここあたし達の家だからね」

あっけらかんとそう言いながらアヤメはジェムカ達を居間へと案内する・・・が、忍者屋敷なので当然の事ながら普通の3倍ほどの時間と道のりをかけての話になるが辿り付いた頃には疲れたというよりも驚きの表情でと言うのが主な感想だったらしい

「あはは・・・初めての人はみんなそう言う顔するのよね、待ってて・・・すぐお茶持ってくるから」

楽しそうに話した後アヤメはすぐにその場から消えるように部屋を出た、その間シノは刀を置き座ると軽くため息を付きジェムカ達の顔をそれぞれ見る・・・内心何か聞きたそうな表情をしてはいるが彼女自身からはそれを告げることはほとんどないまま口をつぐむ・・・だがその沈黙を破ったのは彼女の行動に痺れを切らせたルチルからだった

「言いたい事があるのなら・・・今すぐにでも言って欲しいものだわ、あなたは一体何を想って・・・・・・」

「ルチル・・・すまないシノ、だが君は一体俺達から何かを感じて何も言わないようにしてるみたいだけど・・・俺達の今の状況で何かを成し遂げるのは無理だと君は想っているのだろうね」

リゼルグは軽く笑いながらシノの方を向き話しかける・・・シノもリゼルグに一瞬目線を返すと少し疑念を抱いたような口調で答えた、彼女の言葉に周りが一瞬凍りつくようにも想えるがそれはまたすぐに元に戻り皆一様に静まり返った様子にも見える

「・・・・・・そうだとしても拙者はそう無碍に口にはしない、自分達の置かれた立場が解っているのならそれくらい察して当然の事・・・おぬしもパーティをまとめるものならそれくらい解るであろうに」

「・・・確かに俺は彼らのリーダーだ、だけど一時とは言え俺はこのパーティを解散させかけた・・・それは俺の技量が足りないのもあったんだけど何よりも悪いのは・・・・・・」

「悪いのは・・・私よ!」

リゼルグが言葉を続ける前にルチルは立ち上がり想わず絶叫した、彼女の目には涙が溢れていて・・・それはまるで自分の罪悪感を悔いるように流されているようにも見えた、昨日1日の行動だけで彼女は自分のやった事に対し後悔の念を持っていたのかそれがこんな事になると想わず、気が付けばまた彼らのもとに戻っている・・・結局ルチルは自分1人の力で出来る事の限界と1人でやったがゆえに仲間を信じられなかった疑念に自分自身を許す事が出来ずにいた

「私が勝手な事言って勝手にパーティ抜けて・・・それで・・・・・・1人でバカみたいに後悔して・・・私は大バカ者よ、せっかく助けてくれたリゼルグやジェムカの事も・・・一緒に戦ってくれると言ったソムニルの事も・・・私は心のどこかで疑ってたかもしれない、もしかしたら・・・貴方達に逢わなかったら私は砂漠で死んでたかもしれないって言うのに・・・」

「ルチル・・・何も誰も君の事は攻めてないよ、ただ・・・」

ルチルのそばに駆け寄ったリゼルグは彼女の手を握り締め言葉を続ける・・・

「何よりも悪いのは・・・君達の気持ちを解ってやれなかった事だと思う、結局何もかも・・・俺が一番悪いんだよね・・・・・・!?」

何とか励ますように言葉を続けるリゼルグだがその背後から突然衝撃が走り彼は倒れこんだ・・・ルチルがそこに目線をやるとシノが刀の柄を振り下ろした後が見える、彼女の表情は戦っている時と同じくらい冷たい表情をしていた・・・何か彼女の気に触るような事でもあったのだろうかと一瞬想われたがシノはすぐに体制を戻し座る

「己の弱さを認めながら直そうとも出来ぬうちは・・・誰も救えぬ、ましてや・・・今の攻撃を想定して避ける事など敵わぬ」

あまりの出来事に場は静まり返るがアヤメは戻ってくるなり早々何かを悟ったのかその手には水で濡らした手ぬぐいが握られていた、とは言え今度ばかりはリゼルグも昨夜の酒と先ほどルチルに投げられた衝撃も相まってか気絶したまま夕方近くまで目を覚ます事はなかったらしく彼が目を覚ました時・・・そこにはジェムカがそこにいた

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2007年3月 3日 (土)

第1部(第27話)

リゼルグとルチルの話を聞いたシノは何かを悟ったのか、部屋を出るとちょうど宿に入ってきたお庭番のひとりに事情を聞きだす・・・彼女達はお互いを知っているような口ぶりで前の晩に何があったのかを話しながら階段の近くのイスに座っていた

「昨夜はお約束のように酔っ払ってたんだけど彼はあたし達と居たのはそんなに長くはなかったわよ、でも・・・なんか思い詰めてたのは確かね」

「・・・アヤメ、お主リゼルグ殿から詳しい事情は聞いていないのだな?」

「ええ・・・あたしも兄さんも酔っ払ってたから多分聞いても忘れちゃってると想うわ、後であまり飲んでない子達から聞いてみるよ」

「いや・・・ここは拙者がやる、これ以上アヤメには面倒をかけさせるわけにもいかぬ」

「何言ってるのよ・・・あたし達友達でしょ?」

シノとアヤメはリュウシロウ・ムサシと共に幼なじみの関係であり主従関係以上の深い絆を持っている、とは言ってもプライベート上で城の中で4人が揃うことはめったになく大抵はシノとアヤメが外で会うくらいだ、国王とお庭番・・・そして大臣の娘と言う関係上幼い頃から顔を合わせることも少なくなかったがアスティルが亡んだ今の状況ではシノの方から逢う事も殆ど少なく今ではシノが城にやってくるのは年に1度あるかないか・・・それも父であるミナト大臣を伴わなければ来ることはまずない

「そう言えば昨日・・・サヤさんの命日だったね、あたし達も本当は行きたかったんだけど・・・・・・国王とあなたが居るのを見ちゃってね・・・あのまま見守りたかったんだけど一緒にいた子、あの子が兄さんの言っていたジェムカって子だよね・・・なんで教えてくれなかったの?」

「・・・・・・さぁ、拙者にも解らない・・・だがおぬしが母上を敬愛していたのは拙者も知っていた・・・・・・なぜ来なかった?」

「言ったでしょ・・・国王とあなたの事を見守りたいって、とは言え・・・あのジェムカって子・・・・・・一体何者なんだろ?兄さんの話じゃアスティルの王子だって言ってたみたいだし、でも大臣が気付いた様子も殆どなかったみたいだけど・・・」

「父上はそう簡単に見間違いをするような人ではないが・・・最後に会ったのが子供であれば解らないのも無理はない、だが拙者は当面このことを父上に話す気はない」

「薄情ねぇ・・・そんなんじゃサヤさん泣くわよ、せっかく命を懸けてアスティルを護ろうとしていたサヤさんの事・・・シノは好きじゃないの?」

「母上の事は今でも忘れてはいない、拙者が唯一師と仰ぐ存在だ・・・それにこれは父上から聞いたのだが・・・・・・母上がアスティルへ行ったのはアスティルのためではない・・・エアルクの騎士であったリーチェ殿のためであったと・・・」

「・・・・・・そっか、そう言えば彼らってエアルクから来たんでしょ?何か詳しい事知ってるんじゃない・・・サヤさんの事とか」

アヤメにとってサヤは尊敬すべき存在で自分にとっては全てだと信じてやまない、それは彼女が死んだ後も同じだ・・・だがそれが元でシノは城へ来る事はないのだがその一因が彼女の死である事はアヤメも認識していた、とは言っても別にそれだけ原因ではない事はあまり知られてはいないがその理由についてシノ自身誰にも話した事はない

「ジェムカ殿からでは母上の事は何も聞けない事は解っている・・・だから拙者は無理に聞く事はしない」

「優しいのね・・・こういう時だけは、ねぇ・・・・・・たまには城へ来てよ・・・兄さんだってシノと話がしたいっていつも言ってるんだよ」

「そうか・・・済まぬな、だが・・・やはり拙者はまだ・・・・・・」

「まだ・・・迷ってるんだね、あの事・・・解る気はするよ・・・でもその気持ちが解ってるムサシだってあなたの事本気なんだからさ・・・答えてやったらいいのに」

「・・・・・・そんな事で拙者が迷うなど、ありはせぬ・・・」

そう言い捨てたシノは降りてきたジェムカ達と宿を後にする、様子を見ようとアヤメも彼らの後を付いていくように歩き出すと興味本位からかアヤメの方から話しかけてくる・・・一瞬シノはアヤメの行動を怪しげに想っていたがアヤメ自身何事もないかのように彼らに馴染んでいた、ただ彼女はその場にいるシノや国王であるムサシを護ると言う建前自らお庭番と言う事は隠している、そこは兄とは違う所だが何もアヤメは正体がばれたら面倒と言う理由で隠しているわけではなく何かしらの危険がムサシ達やジェムカ達に及ばないためだと考えているからだ、そのことはシノも理解してはいたが何も今すぐ危険が及んだりするわけではないため隠す必要はないはずだと想ってはいる、だがそれは本人の自由意志に任されているため特に何も言う事はなかった

「へぇ・・・アヤメさんってあのリュウシロウさんの妹さんなんだ、普段はお兄さんとは別々の仕事してるんだね」

「そうなの、だってお庭番ってよほどの事がないと国から出られないからあたし苦手なんだ・・・でも兄さんは滅多に出ないからいいんだけどね」

「結構わがままなんだね・・・」

「よく言われるよ、特に兄さんとかからはね」

「リュウシロウさんも幸せだろうなぁ・・・こんな立派な妹さんがいて」

「そんな事ないわよ・・・あたしなんてまだまだ子供だし・・・・・・」

「(・・・・・・昨夜逢った時とは全然別人だった気がするのは・・・俺の気のせいかな?)」

当然の事ながら昨晩の飲み会にはリゼルグが運の悪い事に巻き込まれたためアヤメがお庭番である事は理解している、だが酔っ払った時の彼女の印象の方が強いのか口数は殆ど少なく終始考え事と彼女に対する恐怖心のためか殆ど会話に参加する事はなかった・・・その事実をジェムカやルチル達が知る事のないまま彼らは城からかなり離れた屋敷へと案内された

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2007年2月24日 (土)

第1部(第26話)

マツカゼ中の宿や酒場を回りながらジェムカはリゼルグのことを想っていた・・・きっと彼の事だから何かあったのではないのだろうかとか不安がないわけでもない、こんな形でパーティがバラバラになるなんて・・・絶対にあってはならないときっと彼は想っている、そう考えると足が勝手に動いてくれる・・・そう実感していた

「まったく・・・こんな時にリゼルグは何をやってるのかしらね、ジェムカを放って1人で行っちゃうなんてさぁ・・・」

「・・・・・・(ルチルが喧嘩したからだとは想うんだけどなぁ・・・でもリゼルグもその後どこか行っちゃったし)」

別れ際にリゼルグはルチルと喧嘩したことで仲間達とも距離を置くように去ってしまったこと・・・その彼の行動の真意だけは誰にも解らなかった、でもリゼルグも何か理由があっての事だということは解っていたのに・・・・・・どうしてもそれが引っかかるように不安を煽る、でも実際お互い喧嘩したって言うわけでもないけど結果的にそうなっていた事がジェムカにとっては何よりの不安にもなっていた

「リゼルグの事だから今頃俺達を探してるかも知れない・・・そうしたら・・・今度こそ大臣に色々と話を聞いてみようよ」

「だが・・・仮に見つかったとしてもその後城に行ってどうするかだものなぁ・・・俺にはよく解らないけど、リゼルグの判断もあながち間違ってなかったんじゃないかなって想うんだ」

「・・・・・・確かに今想えばそうかも知れないわね、私は・・・一体何のためにここまで来たんだろうって想ってみたけど・・・・・・やっぱり私ラキルのためにだったらなんだって出来ると想っていた・・・想わされていただけかも知れない、ソムニルの言う通りね・・・何も無理して焦ったってラキルが生きているかなんて解りゃしないんだし逢える保証だってない・・・本当に私って・・・何をやってるんだかなぁ・・・」

感傷に浸るような言葉を残しながらルチルはジェムカ達の前を歩いて進む・・・一番後ろでそれを見ていたシノにとっては彼らに与える父親の影響がどう言うものになるのかと言う事に多少なりとも興味は抱いていたがあまりそれ以上の言葉を発する事はなかった、とは言ってもこのまま見過ごすことなど・・・「人斬り小町の娘でありマツカゼの大臣の娘でもある」自分から見たら出来るようなことではないことは彼女自身実感していた、それでも・・・見ず知らずの彼らに何をしてやれるのだろうかと聞かれたら・・・・・・彼女が答える事は殆ど不可能な話だろう、答えをすぐに見つけることよりも・・・自分が何を求めているのかをシノは知りたかったのかも知れない

「(拙者はなぜここまで彼らについていく必要が・・・父上に用があると言うだけではないことは解っている、だが・・・それに父上はここ何年も家に戻る間隔が短い・・・それも気になる事だ)」

「・・・どうかした?あなたさっきから顔色悪いわ・・・・・・」

「え・・・」

不意にルチルの声で我に返ると足を止め想わずジェムカ達の方を見る、どうやらジェムカ達が相談している間シノは上の空に近い状態に見えたのだろう・・・同じ女性であるルチルにはシノの考えが少しだけ読めたようにも見えたがそれを察してかつい彼女から眼をそらす・・・しばらくしてマツカゼでは一番の老舗といわれている宿屋にリゼルグがいると言う話を聞きつけそこへと足を運ぶと間違いなく彼はそこにいた・・・だが彼は布団から出る様子も見せずただ眠っているようにも見えたがジェムカがそっと近づくと何かを恐れるように布団を被り隠れるようにうずくまっていた

「リゼルグ・・・ここにいたんだね、心配した・・・・・・?」

彼の行動に誰もが驚きを見せるもルチルはそれを気にする様子を見せずリゼルグに近付くと布団を引き剥がし胸倉を掴みかけ自分の方へと引き寄せ、ジェムカ達の方へと投げ込む・・・一瞬何があったのか状況の読めないリゼルグは立ち上がりルチルの方を見る、そのときの彼の表情はまるで彼女を恐れているようにも見えた

「・・・・・・貴方は何のために私達と旅をして来たの・・・まだ始まったばかりでパーティの統率もままならないのは解る、私も・・・わがままだったかも知れないわ・・・でも今の貴方では本当にパーティが解散してもおかしくないかも知れないのよ、それでもいいと想ってるの・・・私はそうは想わないわ」

「ル・・・ルチル!?何もそんな大事にしなくても・・・」

慌てて制止しようとするソムニルもリゼルグと激突しドア近くの壁にぶつかる・・・2人とも怪我はなかったのが幸いだがジェムカはルチルの動向に一瞬不安を覚えるも彼女なりに何か考えがあるのだろうと想い言葉を噤んでいた・・・どの道リゼルグから見ればそれは浅はかな事だろうと想われこのパーティをまとめること自体自分には出来ないのではと言う不安が残っていたのだがルチルにとってはそれは大した問題ではないと気迫で押されるように彼はパーティリーダーをしていたのではと考えてもいた

「・・・・・・ごめん、ルチル・・・やっぱり俺にはこのパーティを仕切るだけの力なんて・・・・・・それに・・・君には妹を探すと言う目的もあるんでしょ?あれから何か手がかりとかは・・・あったの?」

「・・・こんな時に何バカ言ってるのよあんたは!そんなんで私が納得するわけないでしょ!!あんたは・・・私達と一緒にいなきゃだめ!でないと・・・・・・これから私はどうやってこの旅を続ければいいのよ・・・ラキルを探すのは大事よ・・・だけど1人で探したって逢えるかどうか解らないし生きてるかだって解らない・・・仲間と旅をして少しでも望みがあるのなら私はやるわ・・・・・・そのためには貴方が必要なのよ・・・リゼルグ!!そんな事も解らないほどあなたは臆病者じゃない・・・それはここにいる私達が知っていることだわ!」

哀願するように涙を浮かべた表情でルチルはリゼルグにそう言い放つ、彼を見下ろすルチルの眼は涙で溢れていて・・・今にもリゼルグに元へと落ちそうなくらい零れていた

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2007年2月17日 (土)

第1部(第25話)

夜明けと共に山を降り街に戻ったルチルは市場のにぎやかな光景の中大通りでソムニルと合流した、ルチルの表情は昨日までとは違いどこかすっきりしたように明るくなっていた、その様子を見てソムニルは動揺する様子もなく何か探るわけでもなくただ「リゼルグと仲直りする気になった」と言う風にしか見えていなかった

「朝っぱらからなんか楽しそうだね・・・」

「解る・・・?私もあれから考えたんだけどね・・・自分の事しか考えなくて他のみんなに迷惑かけっぱなしだったんだなって事に気づいたの・・・そりゃあラキルは助けたいわ、だって・・・私のたった一人の妹だもの、あんたも・・・妹を失った身なら解るでしょ?」

「それはそうだけど・・・でも何で?」

「私は・・・焦りすぎてたって事よ、あなたの言うとおりだわ・・・信じてさえいればラキルは生きてるし絶対に逢えないって訳じゃないもの」

「・・・・・・」

昨日の間に何が起こったのか・・・きっと彼女の言動からしてソムニルもようやく納得する、ただ開き直ったと言うより・・・焦りの招いた危機だったと言う事に・・・市場を抜けると静かながらも慌ただしい朝の光景が広がる、店の前をほうきで掃く主人や至る所の庭先や家の前で魚を焼く母親・・・ごくありふれたマツカゼの朝の光景に2人は見とれながらも通り過ぎる・・・街を抜け屋敷の前を通り過ぎようとした時、城の大臣が慌てたようにその屋敷の中へ入っていくのを偶然目にすると顔を見合わせながら何があったのだろうと考え込む・・・しばらく経って大臣が屋敷から出るのを見計らうとルチルは何の躊躇いもなく呼び止めた

「あの・・・あなたマツカゼの大臣ですね、私は・・・・・・」

「すみませぬが今から城へ向かわねばならないのです・・・・・・申し訳ありません」

そそくさと立ち去る大臣を尻目に彼の同行を怪しんだソムニルは先行して屋敷に忍び込んだ、それを見たルチルは一瞬焦りを見せるがそのあとすぐに彼は戻ってくる・・・女中に見つかったのだろうかと不安にもなったがソムニルは焦った様子を見せる事はなく、それどころか何かを見つけたような安著感に満ちた表情でルチルを見ていた

「あなた一体何やってたのよ!?一瞬ビックリしちゃったじゃないのもう・・・」

「ごめんごめん・・・実はこの屋敷の中探ってみたんだけど、ここの主である大臣はあまり家には帰ってないんだって・・・」

「・・・・・・そんな情報を得たくらいじゃそんな顔しないわよね?」

「まあまあ・・・大臣の事は一度置いといて、実はさ・・・どうもこの屋敷にジェムカがいるみたいなんだよ・・・さっき見たんだけどものすごい綺麗なお姉ちゃんが一緒だったみたいだよ見たところこの屋敷のお姫様ってところかな?」

「大臣の娘って事ね・・・解りました、私が行ってきます」

「え・・・ちょっと・・・ルチル!?」

ソムニルが止めるのも聞かずにルチルはなんの躊躇いもなく屋敷の中へ入っていった、玄関口にぶら下がっている木槌で立てかけてある板を叩くと中から女中が現れ突然の来客に一瞬驚きを見せるルチルは女中にジェムカの事を話すと女中も納得したのか彼らを家の中へと案内する・・・奥の縁側で庭を眺めていたシノとジェムカの元にたどり着くとソムニルはいきなりジェムカに抱きつきルチルも同じようにジェムカの近くに座った

「あれ・・・ソムニル・・・・・・ルチル?2人ともどうしてここに?」

「ジェムカ・・・こんな所に居たんだね、昨日一晩心配しちゃったよ・・・ごめん・・・俺があんたから目を離したから・・・・・・怖くなかったか?」

「いや・・・昨夜はこの家に泊めてもらったおかげで何とかなったって感じだったからなぁ・・・」

ジェムカはソムニルとルチルが来たことに驚きを見せるもすぐに安心したような顔になる、だがそこにはもう1人いるべきはずのリゼルグが居ない事にまた不安の表情を浮かべる、それでもジェムカ自身リゼルグが無事であることは確信しているのか何とか落ち着きを見せようとするが彼が居ないことで自分がどうなるのかという恐怖心は隠せなかった

「ジェムカ殿・・・どうかしたか?」

「あ・・・いえ、別に・・・(リゼルグ・・・どうしてるんだろ?護るって言ってくれたのに・・・一体どこに??)」

「・・・・・・不安そうな顔をしているが・・・何か心配事か?」

「そ・・・そんなたいしたものじゃ・・・・・・」

慌てふためくジェムカの様子をよそにソムニルは何かを想い出したようにリゼルグの事をシノに聞こうか一瞬迷った、もしそんな事をすれば確実にジェムカが困るだろうしそれでは自分が悪いようにも想われてしまう・・・だが彼らの中では一番気になるのがそのリゼルグの行方である事に変わりないのか3人は一様に不安を覚えた、このまま放っておくわけにも行かないと感じルチルは先陣を切るように立ち上がるとそのままシノの家を後にしリゼルグを探しに街中を歩き回る・・・当然の事ながらシノも彼らの様子が気になるのかそのまま彼らと共に行動をすると言い張り4人は一度城に一番近い宿から回る事にした

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2007年2月10日 (土)

第1部(第24話)

マツカゼの大きな街の中に喧騒とはかけ離れた静かな屋敷・・・そこはかつて「蒼龍流桜華剣」の道場があった場所だ、そしてその道場を護るかのように存在しているのが「妖刀・蒼龍」を所有している春美弥の家である、現在当主は代々マツカゼ城大臣として当主を護っているミナトでありシノはこの家で生まれ育った・・・マツカゼの独特な文化にジェムカはただ驚くばかりであったが宿も解らないという事を聞きシノは彼を家に招き入れていた

「済まぬな・・・たいしたものも用意できず・・・・・・」

「いえ・・・いいんです、押しかけたみたいで悪いなぁ・・・」

「そんな事はない、今日はゆっくりして行け」

家の女中達はシノが帰ったのを見計らうと刀を預かり風呂場へと向かわせる・・・彼女達は慌ただしくシノの身の回りを世話するが彼女にはそれがわずらわしく感じるのか深くため息を付きながら風呂場へと向かった、ジェムカも風呂場とは反対方向の部屋へ案内されると想わず辺りを見回し緊張気味に出されたお茶をすする

「・・・・・・(こんな立派なお屋敷に住んでるんだ・・・彼女、あの先には道場みたいなのもあったけど誰も使ってないみたいだったし・・・一体ここって・・・・・・)」

戸惑いながらも何から聞けばいいか解らないままジェムカの元にシノは戻ってきた、その時の彼女は昼間のように勇ましい武士ではなく屋敷に住む1人の娘に見える・・・というより最初からそこにいたかのような雰囲気もかもし出していてそれを見たジェムカはあまりの変わりように驚きを隠せないでいた

「どうかしたか・・・やはり、変であったか?」

「え・・・ううん、そんな事ないよ・・・というより・・・昼間とあまりに違うからちょっと・・・ビックリしちゃって」

「そうであろうな・・・すぐに食事を用意させる、ここのものが口に合うか・・・ちょっと不安だがな」

「・・・・・・あの、シノさんって・・・その・・・」

「・・・拙者がどうかしたのか?」

「えっと・・・(どうしよう・・・一体何から聞けばいいんだ、第一彼女とはまだ会って間もないって言うのに・・・)」

ジェムカが考え込んでいる間に女中の1人がシノに耳打ちをする、それを聞くと彼女は「そうか・・・」とだけ言い軽くため息を付く・・・その様子に感付いたのかジェムカもついシノの方を見て何を聞こうとしたのかでさえも忘れてしまう、食事が終わり客間に通されると畳の上に布団が一組敷かれていた・・・その光景を見たジェムカはどこか安らいだような感覚を得る、やがて付けていた防具類を外し布団の上に横たえると今までの疲れからかそのまま寝入ってしまう・・・それを確認したシノは彼を起こさぬようそっと出ると庭を見渡せる縁側で酒を飲み亡くなった母の形見である髪留めを握り締めていた

「もうあれから何年経っただろうか・・・母上が亡くなられてから父上は家に戻る事がめっきり減った気がする、何か・・・いやな予感がするのは拙者の気のせいだろうか・・・いや違う、父上はきっと・・・あのムサシの面倒で大方忙しいのであろう、父上は面倒見のいい人だ・・・きっと何かあるのであろう・・・・・・」

「シノ様・・・もうそろそろお休みになられては・・・・・・」

「解った・・・父上が戻られたら教えてくれ、いくら父上と言えど・・・少しは家に戻られてこぬのは少々厄介だからな」

「解りました・・・それとシノ様、もう少し女性らしく気品と華をもたれては・・・・・・それではサヤ様に笑われますよ」

「・・・・・・そのセリフが母上に通じたためしがあったか?」

「・・・・・・と、とにかく・・・すぐにお休みください!」

女中は返された言葉に苛立ちを覚えながらもシノが飲んでいた酒を片付ける、その間シノも自分の部屋に戻ると何事もなかったように眠りに付く・・・かつて母が戦いの際に愛用していた「妖刀・蒼龍」を傍らに置き眠るまでの間・・・ただじっと何も考えずに握っていた髪留めを眺めていた

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2007年2月 3日 (土)

第1部(第23話)

リゼルグの様子を探りに向かったソムニルは色々な所を彷徨っているうちに城門の近くへと戻ってきていた、するとそこへ国王達が城へ入るのを目撃するとそのまま城へ忍び込む、せめて少しでも情報を掴みたいが、掴んだ所で自分に何が出来るのか・・・それだけがソムニルにとっては心残りに近かった

「国王様・・・やはりシノはあのままだと・・・・・・ああ、私はどうすれば・・・」

「案ずるな・・・親父のお前が今から心配しても何にもならないだろうが、それに・・・俺にだってまだチャンスがないわけじゃないだろ?」

「それはそうですが・・・(シノにとっては国王よりの寵愛も今は何も受付はしない事くらい・・・解ってはいると想ったのですが、ここまで想ってくださるとは・・・)」

「そう言えば・・・シノと一緒にいたあのガキは何者だったんだ?」

「え・・・そう言えば名前を聞いてなかったですね」

「確かシノは「ジェムカ」って呼んでた気がするが・・・・・・」

「ジェムカ・・・はて、どこかで聞いたような名ですが・・・・・・(聞いたと想ったはずだがこうも想い出せないとは・・・私も歳かな)」

国王達の会話を聞いたソムニルは一瞬ジェムカの事が思い浮かんだ・・・もしかしたらジェムカは国王から何か話を聞き出したかもしれない、そう想っては見たものの確証がない以上ソムニルも無碍には動けない、それよりも何よりも問題は・・・ジェムカが今一緒にいると言う大臣の娘の方が彼には気になっていた・・・・・・そうでなくてもジェムカを1人にすること自体本当は危険だとリゼルグからも言われていたはず・・・それなのにジェムカと離れた事でソムニルの不安はさらに煽られるように物陰で気配を押し殺す事すらも難しい精神状況にまで陥られた

「明日になったらもう一度シノに会って聞き出してみるか」

「そうですか・・・それでは私はこの辺で、これから少し御用がありますゆえ・・・」

「そうか・・・サヤさんが死んでからあまり家に返る機会が減ったと聞いているが・・・一体何かやってるのか?」

「そう言うわけではないのですが・・・」

「・・・俺にも言えないほど怪しい仕事やってるなんて事は・・・と想ったけど、お前に限ってそれはないか・・・考えた俺がバカみたいだものな」

大臣の言葉に国王は疑いを持ってみるがさすがにそこは国王の家系である自分が大臣の家系の者である彼をそんな簡単に疑うなんておかしいと想い笑い飛ばす、国王自身も大臣を信じているからこそこれだけの事が言えるのだと普通の人は想うだろうが実際大臣はいろんな意味で気が気ではなかった・・・だがそれを今口にすればどれだけ楽になれるだろうとも考えてはいたがそれでは確実に自分のためにもならないし何よりも娘が何かやらかすに決まっている・・・彼女も自分の娘である前にあの人斬り小町と呼ばれたサヤの娘、娘に知れることは父親としても避けたいほど彼には隠している裏の顔が存在するのだった・・・やがて大臣が国王の下から立ち去ると国王は首を回しながらソムニルのいる草むらをじっと見つめ声を掛けた

「そこにいるのは解ってる・・・お庭番連中は今近くの酒場で宴会中だ、こんな時間にこそこそとしてるのは下手な泥棒かお前くらいだぞ・・・大丈夫だから出て来いって」

国王に呼ばれ驚きながらもソムニルは様子を伺うように国王を見る、だが国王も楽しそうな表情でソムニルが来るのをただじっと待っている様子で見ていた・・・しばらく経ってようやくソムニルは国王に近づくと国王もそのまま縁側に座り込みソムニルを呼び込む、実を言えばソムニル自身城に忍び込んだ事でとんでもない事になるのではないかと警戒していたが国王にはそのような事をするような気配は一切なくただの気のいいお兄さんのようにソムニルに話しかける

「お前・・・あのジェムカって奴と一緒にいたって言う奴だろ?聞いたぞ・・・ジェムカって言う奴は確かアスティルのジェムリクア王子でリゼルグはエアルクの騎士、で・・・後一緒にいるのはベルステルの皇女のルチル姫にイルニア樹海のスパイ・・・お前達4人でジェムカの記憶に関する情報やラキル姫、それにエアルクのドラゴンを探してるんだってな・・・お前も結構大変な思いしてきたそうだな」

「まぁ・・・でも、ジェムカ達のおかげでようやく1個何か成し遂げられそうかなっていうのはあったけど・・・でも今みんなバラバラになっちゃって」

「そっかぁ・・・俺も昔は冒険とかにあこがれた事はあったな、ガキの時の儚い夢だと想って諦めてはいたけどそう言った連中から話を聞くのは今でも好きだ・・・だから国王としてと言うより自分も冒険に出てるって感じで彼らの話を聞いてたりもする、お前はどんな冒険をしてきたんだ?」

「え・・・でも俺から聞いても何も出ませんよ、俺はただのしがないスパイですし・・・」

「知ってる、お前がソムニルだろ・・・お庭番達がお前の話をするのを時々聞いてたからな・・・・・・どうだ・・・このマツカゼは?お前にとっては珍しい事だらけだとは想うが俺にはお前のいた樹海に興味があってな、どういうところなんだ?」

国王はソムニルに色々な事を聞いてくる・・・それはまるでお話を聞かせて欲しいとねだる子供のようだったがこれではまるで立場が逆にも見える、どうやら樹海が燃えた事はマツカゼの人はあまり知らないのだが国王はリュウシロウから聞いて樹海がハルニムに燃やされた事は知っていたらしい、それでもソムニルはこのまま切り出してもいいものかと想わず自分に問いかけてみる・・・・・・そんな様子のソムニルを国王は察したのか言葉をつぐみソムニルの肩を軽く抱き寄せる

「・・・・・・なんか、俺ばっかり喋ってたみたいだな・・・済まない」

「・・・いいんですよ、俺も・・・正直どうしていいか解らない・・・・・・でも何か解ったような・・・でもまだ何も解らないような・・・・・・そんな気持ちが俺の間で揺れている気がして・・・不安になるんです」

「そっか・・・すまないな、お前の事情を察しているはずなのに・・・何の力にもなれず・・・・・・それどころか勝手にこんな風に話して・・・」

「・・・・・・いえ・・・俺の方こそ・・・でもパーティのことは心配しないでください、彼らなら・・・きっと大丈夫だって信じてるんです・・・そうしたらまた・・・ここに来ます」

「・・・・・・そうか、待ってるぞ」

ソムニルを城門まで送り届けると国王は少しだけ淋しそうな表情で彼を見送った・・・久しぶりに会いに来た弟が帰っていくのを見送る兄の様に国王の心はどこか孤独めいた空虚感で埋め尽くされているようにも見えたがお庭番達のにぎやかな声で一気に現実へと引き戻される、すっかり酔い潰れているリュウシロウとアヤメを部屋まで送り届けた数人がいつものように「あの2人と飲むといつもこうだ・・・」とか「俺またリュウシロウさんに抱き付かれて大変だったよ・・・」とか愚痴が聞こえるが彼らも慣れているのか笑いながらその話を続けている国王もそれを聞きながら「今日も平和であった」という実感をひとつ得る、確かに何も知らないで彼らと酒を飲み交わすと決まって酒癖の悪さから確実に騒ぎが起きる・・・その事を国王も慣れているので彼らとは滅多に酒を飲む事はない、というより・・・シノの事があってか彼女なしで飲む事はほとんどないらしい(大臣の方から出される事もあるがそれでもお猪口1杯程度で終らせる事もしばしば)だがその日に限って彼はその酒を徳利2本分ほど飲みソムニルの事を想いながらそのまま眠りについていた・・・とは言えソムニルに対する想いが強く募り殆ど眠れなかったのは言うまでもないが・・・

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2007年1月27日 (土)

第1部(第22話)

自分のわがままのせいでパーティから離れたルチルは迷いながらも城へとたどり着いていた・・・と言うより執念で城まで引き返して来たようだ、パーティが解れた事を知る由もなく自分1人でも妹の手がかりを掴みたいという想いが彼女を動かしているのだろう

「リゼルグが頼りにならないのなら・・・私1人でも何とかして見せるわ」

内心焦りと苛立ちでここまでは来たのだがなぜか足は城門の向こう側に入ろうとはしない・・・かすかに震えも感じてはいたが何かを臆するようにも見えるその状況にルチル自身不安を隠せなかった、でもだからといってここで引き返してしまっては自分がここへ来た意味がない、そう悟ってはいた・・・

「マツカゼ城へ何用ですか?」

「・・・・・・国王に会いに来たのだけど大丈夫でしょうか、私はベルステルのルチル・エルドリヒです」

「解りました・・・案内しましょう」

偶然通りかかった城の兵士によってルチルは国王のいる部屋へと通されるがそこには国王も大臣もいなかった・・・一瞬不穏に感じたルチルだがしばらく待つとお庭番が2人こちらへやってくる

「あれ・・・ルチルさん、どうかしたんですか?」

声を掛けてきたのはあのリュウシロウだった・・・彼はさっき会った時とは違う服装で現れると何事もなかったかのようにルチルに話しかけてくる、彼と一緒にいるお庭番の女性は不思議そうにルチルを見ながらリュウシロウに耳打ちする

「(兄さん・・・この人本当にお姫さまなの?とてもそうには見えないけど・・・)」

「(仕方ないよ・・・国が亡んで一番大変な想いをしてるのは彼女なんだ、僕はこの眼でベルステルを見て来たけど・・・今の彼女は何か焦ってる感じがする)」

「(やっぱり本当だったんだ・・・双子の姉妹が行方晦ましたって話)」

「あの・・・国王は?」

「え・・・・・・ああ、国王ですか・・・国王は・・・・・・さっき出たみたいです」

2人の会話内容が気になったのかルチルは業を煮やしたように話しかける、だがルチルが知りたいのは国王がラキルやエアルクのドラゴンについて何か知ってるかという事だけだったが当の国王も大臣もいないと言う事は・・・それだけでも無駄足だろうと実感する事になる

「今国王も大臣も席は外してるけど私達の知ってる事なら教えてあげる、大方その様子だとあなたが一番ワケありだものね」

「な・・・何を言ってるんだアヤメ!?」

「だって・・・いくらなんだって放っておくわけには行かないでしょ!!そうでなくたって兄さん私に彼らを城の中に案内しなかったの教えてくれなかったじゃない」

「・・・なんでそれを知ってるんだ?」

「国王と大臣が話してるの聞いちゃったんだもの・・・ごめんなさいね、うちの兄が薄情なばかりにあなた達に苦労かけさせて・・・」

「え・・・ええ、まぁ・・・・・・」

「私は政宗亜夜女、この政宗竜斯朗の妹で兄と同じお庭番なの・・・よろしく」

アヤメはルチルの手を握ると両手で軽く振る、さすがにルチルは少し戸惑いを見せるがリュウシロウはルチル達の事情をあらかた知っているのかその事は殆ど触れる事無く彼女を近くの宿まで送り届ける事を提案する、いくら城主の不在とは言え王族を放っておくわけにも行かなかったからだ

「すみませんね、こんな時に・・・」

「いえ、いいんです・・・やはりマツカゼの国王ともなると何かと多忙なのでしょうね」

「はぁ・・・(やっぱり・・・このままってワケにもいかないよね、とは言っても・・・僕の力でどうにかなるわけでもないって言うのに・・・)」

「兄さん・・・どうかした?」

「あ・・・ううん、なんでもないよ」

リュウシロウ自身今のルチル達の状況をあの短時間で把握できてないわけでもなかった、このまま放っておけばあのパーティは空中分解は間違いないだろう・・・だがあって間もない自分達に何か出来るのかと聞かれればそれはそれで難しい話だ、それでも彼らを助けるためには何かをせずにはいられない・・・リュウシロウの心の中で何かがざわめくようにただ身体を震わせていた

「兄さん・・・やっぱり少し疲れてるんじゃないの?」

「そうか・・・あ、ルチルさん・・・・・・すみませんがまた日を改めておいでくださいませんか・・・国王も出かけておりますし・・・・・・でしたら妹に街の案内でもさせますが・・・」

「・・・・・・大丈夫、気にしなくていいわ・・・それよりあなた達知らないかしら・・・ラキルかエアルクのドラゴンの事・・・」

せめて僅かな手がかりでも掴もうとルチルはリュウシロウ達に聞いてみた、彼らはラキルの事は殆ど情報を得てはいないがこのマツカゼの北の山にそれらしきドラゴンが飛んで行ったと言う情報があったと答える・・・その事にルチルは安著感を覚える反面ラキルの行方を知る事ができず苛立ちをまた隠せないまま城を後にした、城を出た後彼女は何を想うわけでもなく単身ドラゴンが向かったと想われる山へと出発していく・・・ドラゴンがいてくれればすぐにラキルを助けられると考えていたルチルはジェムカ達の事をすっかり忘れ山を歩きドラゴンを探し続ける、やがて日も落ち夜が近づく頃、寝泊りに使えそうな洞窟を見つけるとランプを灯し洞窟の壁にもたれかかるように座りながらそのまま眠りに付いた・・・

「ルチル・・・ルチル・・・・・・」

まどろみの中・・・ルチルはラキルと一緒に遊んだ幼い頃の事を想い出していた、この時の自分達は戦争とかそう言うことをいちいち気にする事なんてほとんどなかった・・・そんな幼少時代を今になって想い出すことに・・・ルチルは行方の解らない妹とそのために見放した仲間の事で心が揺れていた

「ルチル、どうしたの・・・なにがそんなに悲しいの・・・」

「解らない・・・私はどうしてこんな感情を・・・・・・解らない・・・」

うずくまった状態でルチルは涙を流し誰にも知れぬよう声を押し殺す・・・なぜこんなに悲しいのか、なにが自分をこんなにも追い込んでいるのか・・・それすらも解らなかった・・・・・・でも今解るのはラキルに対する想いも仲間達に対する罪悪感も・・・同じくらいに自分の心に存在する、ラキルに逢える事を信じ・・・仲間達とも解り合える事を信じ朝になったらドラゴンが見つからなくてもいいから・・・今は仲間達の元へ戻ろうと彼女は誓った

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2007年1月20日 (土)

第1部(第21話)

夕方近くになり宿を見つけたリゼルグだがパーティには彼以外の姿はなかった・・・さすがにルチルとあんな事になったのはリゼルグ自身反省してはいたのだが何よりもジェムカの事が一番心配だった・・・国王から護るようにと言われたのに自分達のわがままのせいでこんな事になったと少し後悔していた

「はぁ・・・(ジェムカ・・・一体君はどこにいるんだ)」

ひとまず部屋に荷物を置きすっかり夜になった街を歩きながらジェムカ達を探す事になった・・・だがソムニルのように情報には詳しくないリゼルグ1人ではマツカゼの街はあまりにも広すぎる、それでも何もしないよりは何か手がかりを掴みたいと言う想いの方が強く気がつけば酒場の前に立っていた、恐る恐るその中に入るとそこにはなにやら不穏な動きが見られるがその喧騒は店の奥から聞こえている・・・エアルクの騎士としては放っておくわけにも行かなかったのかリゼルグは頭で考えるよりも先に体のほうが動いていた・・・

「一体何かあったのですか!?」

「あ・・・なんだ、お前も俺達と酒を飲みに来たのか?」

話しかけてきたのは酔っ払って周りの見えなくなった女性だった・・・周りの人達は何事もなかったように飲んではいたがリゼルグの様子を見て思わず笑ってしまう

「あははは・・・お兄さんもしかしてここ来たの始めてかい?確かによその人から見たらこんな光景・・・・・・不思議に想うだろうね」

そう言って話しかけて来たのは昼間城の前までリゼルグ達を案内してくれたリュウシロウだったが・・・明らかに昼間とは様子がおかしい、昼間は普通に喋っていたのがいきなり女口調になったり上半身は着ていた和服をはだけさせて完全に露出してる状態・・・一体何が彼を変えたのだろうと困惑しながらもその場に座ってしまった

「あたし達今仲間達と飲んでた所なのよ、あんたの仲間はどうしたのかい?」

「あ・・・私の仲間は・・・・・・ちょっと色々とあって今みんな別に行動してます・・・・・・」

当然の事ながら昼間見たリュウシロウとのギャップにショックは隠せないが彼と同じように酔っ払った女の子の様子はさらに恐ろしいものにも見えた、そう言えばリゼルグはここで騒ぎが起こっても店の人が誰もそのまま放って置いているのに気付き思わず赤面してしまう

「もしかして・・・兄貴の言ってた騎士団ってこのお兄さんの事?」

「そうよ、ただちょぉっといざこざがあったみたいだけど・・・とりあえず、一杯飲みなさいよ・・・何もかも嫌な事は忘れるに限るわ」

「あ・・・でも俺・・・・・・お酒はちょっと」

「何言ってんだこらぁ!兄貴の酒くらい飲んで行けよ!!」

「まあまあ・・・」

明らかに酒乱振りを見せる女性はどっかりと座り右手でお猪口を握り締めたかと想えばそれを乱暴気味に叩きつけるように置くと左手に持っていた徳利に残っていた酒をそのまま飲み干した

「あ・・・アヤメさん、もうそれくらいにした方が・・・・・・明日の仕事にも響きますし・・・ねぇ」

「うるせぇ!!俺に指図するなぁぁぁぁぁ!!」

・・・・・・結局この不思議で違和感と謎に包まれた飲み会は殆どのメンバーが酔いつぶれた所で幕を閉じたがリゼルグは本当にお猪口1杯飲んだだけでその場を後にするも宿に戻った所でそのまま眠ってしまった・・・その翌日彼は軽い二日酔いに襲われ昨日の事は殆ど忘れてしまっていたがルチルともめた事まではさすがに忘れる事は出来なかったらしくその日は部屋から出る事はなかった

アヤメ・マサムネ(政宗亜夜女) 22歳「11月28日生」
・シノ・ムサシの幼馴染でマツカゼ国の忍者(御庭番)、シノにとって唯一の相談相手でありムサシにとっても唯一の相談相手であるため2人のやり取りを一番知り尽くしている、元が世話焼きの性格なので何とかして2人の仲を取り持ってやりたいが方法が解らずマツカゼを訪れたジェムカ達に相談する、彼女が尊敬しているのはサヤで彼女にとっては国王のムサシよりもサヤの娘であるシノの方が大事らしい、一人称は「私」だが酒癖が悪く酔っ払うと「俺」になる

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2007年1月13日 (土)

第1部(第20話)

「・・・母上、あなたが亡くなってからかなりの月日が流れました・・・拙者は今日あなたが死んでも護りたいと言っていた者を探してあなたの変わりに護ろうと誓ってからそれと同じ日が経ってようやく何かを見つけたような気がします、ジェムカ殿は・・・その者に近い気がしてなりません・・・」

シノがジェムカを連れて最初に向かったのは城からも近い墓標だった、そこには「春美弥瑳夜ここに眠る」とだけ刻まれている・・・シノは墓標の前に手を合わせるとジェムカも同じように手を組み祈りを捧げる

「シノさん・・・これ・・・・・・誰のお墓なんですか?」

「・・・拙者の母上の墓だ、アスティルでの戦いの時に死んで何とか遺体だけでも城の兵達が連れ帰ってきてくれたおかげで母は英雄として死ぬ事ができた・・・拙者はそう言う母から剣や色んな事を教えてもらった、でもまだ拙者にはこれからもっと教えてもらうべき事がたくさんあったのだが・・・」

「そうなんですか・・・俺には母親とかそう言うのよく解らないから・・・・・・自分が本当は何者なのか・・・よく解らないんです」

「そうであったか・・・」

ジェムカの気持ちを察したのかシノはただ微笑むだけだった、そこへシノと歳の近い青年がこちらへやってくるのが見えると彼女は突然そちらを向き何事もないかのように冷静な表情で彼を見た

「よう、シノ・・・もうすぐサヤさんの命日だからそろそろ来る頃だと想ってたよ」

「ムサシ・・・お主も懲りないな」

「何を言ってるんだ、俺はお前を諦める気なんてないんだ!俺は絶対にお前に勝つ!!」

「え・・・あ・・・・・・あの・・・話が・・・・・・見えないんですけど???」

突然現れた青年・・・ムサシはシノに会うなり剣を抜こうと構えるがシノはそのまま構わずジェムカをつれてその場を去ろうとしたがムサシもそこで折れるような人ではない、駆け足でシノの前に回りこむと剣を抜き体制を整え・・・構えた、だがシノは何をする様子でもなくそのまま背中を向ける

「・・・・・・ムサシ、ここは母上の墓前だ・・・ここで戦う気など拙者にはない・・・」

彼女はそれだけ口にすると反対方向へと去って行った、ジェムカも不安を覚えながらシノの後に付いていく・・・取り残されたムサシは剣を治めるとサヤの墓に跪き呟くように話しかけた

「サヤさん・・・あなたの娘はいつまでも俺に振り向いてはくれないみたいだ・・・俺はあなたを娶ったミナトとは違うのだろうか・・・・・・もし今もあなたが生きていてあなたの娘を俺が迎えるって言ったら・・・あなたはどうしていたでしょうね」

手を合わせながらムサシは常にシノの事を想っていた事を告げる、それは純粋にムサシがシノを想っているからと言うのが強い考えなのだがそれが彼女には伝わっていないらしくシノ自身そう言った事には無関心のまま生きてきたようなものだった、でもそう言う両者を知っているのはシノの父親でありムサシの腹心でもある大臣だけである事もまた事実だ

「ムサシ様・・・申し訳ありません、どうやら私は娘の育て方を誤ってしまったようで・・・」

「いや・・・むしろお前には感謝しなきゃならない、大臣の娘である事を自覚せず己の剣だけを信じて生きてきたような女だ・・・・・・やはりあの辺はサヤさんに似てきたんだろそこは親父のお前が最後まで見守るべきなんじゃないのか?」

「・・・そう・・・・・・ですか(サヤ・・・私は君に最後まで精一杯の愛情を注いで・・・・・・ようやくシノを国王が見惚れるほどの娘に成長した、これも君が大臣の妻だという事を自覚せず・・・ただ私を大事な人として見てくれたおかげだと想う)」

大臣もシノと同じようにサヤの墓に手を合わせる・・・その隣でムサシも同じく手を合わせ城へと戻って行った

「(シノ・・・お前はいつも何を見ているのか俺には解らないけど、でもいつか俺だけを見てくれる・・・その日を心待ちにしているぞ)」

ムサシ自身シノに想いを寄せてはいるのだがそれが伝わったためしは殆どないといってもいい、だが彼はシノを・・・伝説の「人斬り小町」と呼ばれた女の娘をただの1人の女として見ていたい・・・そう言う想いが彼の恋愛感情を動かしている・・・伝わらないのはムサシの剣の腕がそのシノに敵わないというのが最大の弱点だという事も彼の中では熟知していたがそのために彼も国を護ると言う責務を忘れているわけでもなかった

シノ・ハルミヤ(春美弥紫乃) 22歳「2月18日生」
・東の国マツカゼ1の戦士で侍言葉を扱うが一応は女性、何もかもが母親譲りで腕っ節が強く剣でも喧嘩でも彼女に勝てる人がいないため知ってる人から女性として扱われた事はない、だが外見はかなりの美人なので彼女を知らない人は確実に声を掛けるも大抵は彼女の拳1発で倒れる、操る刀は母の形見である「妖刀 蒼龍」

サヤ・ハルミヤ(春美弥瑳夜) 32歳(享年)「12月14日生」
・東の国マツカゼの戦士でシノの母だがシノが幼少の頃にアスティルで死亡する、美しい容姿とは裏腹に間合いに入れば確実に敵を斬るため通称「人斬り小町」と呼ばれた伝説がある、彼女の友人であり唯一ライバルと認めたのはジェムカ達の師リーチェのみで口調も腕っ節も男勝り、一人称は「俺」

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2007年1月 6日 (土)

特別編その2

今回は特別企画第2弾という事で前回の予告どおり「ジェムカ達のこれまでの旅の軌跡」について順を追って解説します

ジェムカの旅はエアルクの城下町では偏狭の街に当たるインセルでリゼルグとあった事から始まる、世界の東の果ての街から彼らは強大な勢力との戦いへの幕開けを迎えたことなどを知らずに2人はエアルク帝国を目指すことに・・・

インセルの街(ジェムカが倒れていたエアルクの城下街の1つでリーチェは彼を拾い実の子供のように育て上げた、街の人の殆どはジェムカの正体を知らない、名目上は城下街となってはいるが国から1番遠くドラゴンで城へ移動しても約1日かかる)

最初師匠であったリーチェの死はジェムカにとってはとても重く悲しいものだった・・・彼女の後任として騎士団長になったリゼルグはジェムカにリーチェの最期を見取ったことを話す・・・もっとも自分を子供のように育ててくれた彼女が最期に「忘れて欲しい」という言葉を残したことは多少なりともショックではあったが・・・彼との出会いによって自分もまた大きな運命の流れに巻き込まれることをまだ知る良しもないがインセルからエアルク帝国を目指して出発し途中の大きな砂漠で砂に埋もれ生死を彷徨いかけたルチルを助ける

ヴォルガント砂漠(ベルステル共和国周辺にある砂漠で世界最大といわれている、砂の中には微量の魔力が含まれていてベルステルの人達はそこから魔力を抽出する技術を持っているため度々この砂漠で魔法の実験などが行われている、ラキルと解れたルチルが倒れていたのもこの砂漠)

ジェムカ達の救出によって何とか一命を取り留めたルチルは、ハルニム帝国によって連れ去られた妹ラキルを助けたいと2人に哀願する・・・ルチルはベルステルの王女で魔導武器(インストール)を編み出した魔法と槍の名手としても近隣の国では名前が知られていた、、魔法に関してはリゼルグも詳しいが自分もその魔法を使える家計である事は誰にも知らせる事はあまりない、なぜならリゼルグの魔法の力は・・・・・・誰にも触れてはいけない秘密を抱えているからだ

イルニア樹海(アスティル「ハルニム帝国」からそんなに離れていない樹海で集落が転々としている、ソムニルはその中でハルニムにほと近い集落で暮らしていたが全ての集落を管理している長老がハルニムのやり方に反対したためハルニムに近い半分が焼き払われた)

エアルクに最も近い街にたどりついた3人はそこの酒場で故郷のイルニア樹海をハルニム帝国に焼き払われたと言うソムニルと出会う、彼は樹海に住む唯一の種族・ハーフエルフで主にスパイ活動を生業としている、樹海そのものはハルニムに近いためハルニムに対抗しようとする集落も中には存在してはいた・・・だがそれをいち早く知られたため樹海は帝国より近い場所を中心に北半分を焼き払われソムニル自身も家族を失ってしまった・・・唯一パートナーと認めた妹さえも・・・・・・正直な話ソムニルにとってこれほどつらく悲しい事はなかったが何よりもハルニム帝国が自分達にとっては最大の敵であることも思い知った気がしていた、そしてそのハルニム帝国でもボルク卿の不穏な動きを察知した女帝・ヴェルティアは対峙するもすぐに刺殺される・・・ボルク卿は元々アスティル付きの政策大臣であったが彼の起こした「レンティオ革命」がアスティル滅亡の最大の原因でもあり、また国王・王妃を殺害したのも彼である・・・ジェムカ達はこの強大な敵を目の前にどう立ち向かうのであろうか・・・

これから先ジェムカ達を待ち受けるものとは、ルチルの妹ラキルの行方は・・・そしてこの世界の運命は・・・・・・次回の特別編は早い所では3月下旬、遅くても5月の上旬あたりにでもまたやります、引き続き「黎明のカタルシス」をお楽しみください

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2006年12月30日 (土)

特別編その1

毎週土曜日に公開しているこの「黎明のカタルシス」ですが年末年始の今週と来週の2週に渡り特別企画を用意いたしました、今回はジェムカ達のいるこの世界についてお話させていただきます

今回の特別編はジェムカ達の辿った町や国などの解説を簡単な説明を載せます、それを参考にもう一度1話から振り返ってみましょう

アスティル国(ジェムカ「ジェムリクア」の出身国であったがボルクの反乱に遭い滅亡、生き残った数少ない住民や戦士達は各地に散らばりいつか消息を絶った、ジェムリクア王子を探すためエアルクへ終結する、ボルクの反乱は後に「レンティオ革命」と呼ばれる事になるがこの時の戦争でシノの母サヤが命を落とす)

全てはこのアスティル国が亡んだ事から始まりジェムカ・リゼルグ・ルチル・ソムニルはお互いを知ることのないままこの革命に巻き込まれた、やがて内乱を起こした者達によって新たな帝国(下記参照)が作られ波乱の時代が始まりを告げる・・・

ハルニム帝国(アスティルが滅亡した後に建てられた国、ヴェルティアは国を作った際いつかはボルクのした事を公表し行方を晦ましてしまったジェムリクアを探すためあらゆる手を尽くすが全て見透かされ殺される、事実上ハルニム帝国自体ボルクが支配している事になる)

ハルニムの勢力はどこの国にも知られることにより屈服する者も反旗を翻す者も少なくはなかった、ハルニム帝国はあらゆる手段を持ってしても落とすことは叶わず戦いを挑んだ者達はその殆どがすべてを失っていった・・・そう、ルチルの国ベルステルも例外ではない・・・・・・

ベルステル共和国(ルチル・ラキルの出身地であったがカルセア軍に滅ぼされる、魔導武器「インストール」と言う武器に魔導特性を与える力を開発した国で最初に使ったのはルチルが我流で編み出したとも言われているためラキルはまだ扱えない、ジェムカ達と合流するまで武器はルチルの持っていた槍のみ)

ルチルの父親であった国王はベルステルの誇りを護るためハルニムに戦いを挑む準備を進めていたが襲撃に遭い滅亡、そして国王と王妃はその戦火に倒れ運よく逃げたルチルとラキルはハルニムの放ったカルセア軍の追撃によりラキルを奪われてしまう・・・その後もハルニムは勢力を伸ばしついにはかつて眼を付けながらも襲撃を免れたエアルクに再び軍を向かわせる

エアルク帝国(リゼルグ・リーチェの出身地、騎士育成に定評があり近年では魔導技術にも力を入れている、魔力制御「ロックチェイン」と言う魔法を利用した鍵を開発した国でもありアスティルとも交流があったがアスティルが滅亡して以来ハルニムのカルセア軍が何度か襲撃するも全て退ける代わりリーチェを失う事になった)

アスティルを護るために向かった者たちは皆アスティルで命を落としている、エアルクの騎士リーチェ・ランクスもその1人だ・・・そして共に戦ったマツカゼの「人斬り小町」春美弥瑳夜、彼女もまたアスティルを護るために命を落とした1人だがそれは彼女がリーチェをライバルとしてみているからだとサヤの娘・シノは父から聞いていた、シノはそんな母の姿をあまり見てはいないが母がどんな人だったのかは解っているのか母と同じ道を自分でも知らずに歩んでいる・・・

今回はここまでですが、次回はジェムカ達の冒険の始まりからこれまでの経緯をお話させていただきます

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2006年12月26日 (火)

特別企画のお知らせ

今年は前回を持って来年1月13日まで小説はお休みしますが、12月30日と来年1月6日は「黎明のカタルシス特別企画」としてストーリー解説や地名・技などの紹介などをさせていただきます、ブログ作ってようやく半年を迎えようとしている私達リュシフェルジェネレイションもようやく少し前進したとも想ってます(謎)

これからもリュシフェルジェネレイション・Cafe’d Lucifer・PARADOX LABYRINTHをよろしくお願いいたします(ってこれはちょっと気が早いか(爆))

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2006年12月23日 (土)

第1部(第19話)

ルチルを探しに彼女が最後に向かった方向へと走るものの見失ってしまったジェムカはひとりで街中を彷徨っていた

「あーあ・・・ここどこなんだろ、ルチルどころかリゼルグもソムニルもどこにいるか解らないし・・・・・・どうしよ」

マツカゼは東側の国々の中でも勢力が大きく街も広い上に右も左も解らないと大半は迷子になるほど入り組んでいる、ジェムカ自身王子でいた頃は何度か国王であった父親に連れられた事はあったはずなのだが記憶がない上に最後にマツカゼに来たのがかなり昔の話のせいか何度も同じ所を回っている始末だ、それだけならまだいいがその頃は殆ど街中を見て周るほどの余裕もなかったのか街中を殆ど知らないのがさらに災いし30分ほど歩いただけで10箇所近くの袋小路を回りながら歩く羽目になっている状態だった、何とか人通りの多い道に出ても今度は最後にパーティの別れた地点に戻っているためまた同じことの繰り返しになる

「・・・・・・リゼルグ?・・・ソムニル?・・・・・・ルチル??みんなどこ行っちゃったんだろ、もしかして俺だけこのあたりから動いてなかったりして・・・」

完全に迷子と確信したのか動揺を隠せなかった、だがこのままではせっかく組んだパーティの意味がないことも解ったのか考え直すために近くの茶屋で休みながら考える事にしたジェムカの隣にはお茶をすすりながら物思いにふける女性がいた、彼女は誰が見ても美人に入る様な容姿とそれに似つかわぬほど立派な刀をいつも携えている・・・その瞳はまるで何か強いものを追い求めるかのように鋭く・・・そして残酷なほど輝いていた

「・・・(綺麗な人だなぁ・・・マツカゼにこんな人がいるんだ)」

ジェムカの視線に気付いたのか彼女はふとこちらを見る、想わずジェムカは赤面し目線をそらすが彼女はそれに対し何事もなかったかのように話しかけてくる

「お主・・・マツカゼは初めてか?」

「え・・・あ・・・・・・まぁ、でも・・・本当は俺1人で来たわけじゃないんです・・・・・・仲間とはぐれちゃって」

「そう・・・見たところ異国の剣士と見た、拙者とお手合わせ願えぬか?」

「え・・・で・・・・・・でも、俺・・・」

「何・・・剣を持つ者は剣を持ってすればその者の心が解る、これは我が母の教えだ」

「そう・・・なんですか(この人・・・間違いなく強そう、こんな人相手に俺勝てるわけないよ・・・・・・)」

完全に彼女の気迫に負けたジェムカは彼女の言葉通りその場で剣を取る羽目になった、とは言えジェムカもエアルクの騎士であったリーチェから教えてもらった剣がある・・・ただ彼女はただの剣士とは違う殺気と剣士としての心構えがあった、それがジェムカと彼女の大きな違いでもあるが勝負となれば実際にやってみないと解らないもの・・・・・・成り行きで受けてしまった勝負事にかなりの戸惑いは見られるものの男としてはやはり戦わなければならないと言う想いも多少はあるらしい・・・かは解らないが2人が戦うその様子を見ようとする周りの人達も水を打ったように静まり返っていた

「言っておくが拙者は手加減せぬぞ、相手が何者であろうと・・・」

「・・・・・・そうだよね、でないと・・・真剣勝負の意味がないもの(って・・・この人確実に強そう・・・・・・成り行きで受けてしまったとはいえやっぱり怖気づいたらこの人に悪いよな、仲間の事も大事だけど・・・やっぱり今は戦いに集中しなきゃ)」

「また・・・がやってるよ」

「あの彼も可哀想だね、彼女と戦って勝てた人いないのに」

「お主のほうから来ても構わぬ、それまで拙者は剣を抜かず待つ事にしよう」

周りの大半は見慣れているらしくひそひそと話している様子も伺えるがジェムカにはそれが殆ど聞こえていなかった、彼の頭は殆ど彼女との戦いでいっぱいなのか周りを気にするほどの余裕など殆どなかった、一陣の風が舞い数枚の木の葉が2人の前を横切った瞬間ジェムカの方から動きを見せる

「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ジェムカが駆け込んだ瞬間、彼女は持っていた剣を鞘から抜きジェムカの剣を受け止める・・・剣が当たった瞬間ジェムカは両腕から全身に衝撃を受け倒れこむ

「わぁぁぁ!」

「勢いはいいようだがその程度では拙者を倒す事など不可能だ・・・だが腕自体は悪くない、今のお主は・・・・・・迷いが多すぎる・・・ただそれだけだ」

彼女が剣を振り下ろした切っ先はジェムカののど元に突き刺さらんとばかりに光を帯びていた、一瞬怖気づくもジェムカは何か不思議な安著感も覚えていた・・・それは命が助かったと言う安心感と言うより彼女に見透かされた事で何かを悟ったような感覚だった・・・彼女は鞘に剣を収めるとジェムカも立ち上がり同じように剣を鞘に戻す、剣から手を離した瞬間彼はさっきまで戦っていたその両手が震えていた事に気付く・・・恐怖と不安が招いたその震えはまるでさっきまでの自分を写しているかのようにも見える

「・・・・・・あの、あなたは一体・・・?」

「拙者はただのしがない剣士、お主が気にする必要もない」

やがて周りにいた人達もその場から離れいつもと変わらぬ日々に戻る、彼女もまた同じように先ほどの場所でお茶を飲み物思いにふける・・・がジェムカはそれだけで納得する事が出来ず彼女の隣で考えてみる事にしてみた

「・・・どうした、まだ何か聞きたい事でもあるのか?」

「・・・・・・聞かせて下さい、どうしたら・・・俺は・・・・・・俺達は・・・その前に何をすればいいのか・・・俺にも解らないんです」

「それもまた・・・人の道、拙者にはお主を助けるだけの言葉は持ち合わせてはおらぬ・・・」

「そうですか・・・」

「それに・・・何もすぐに答えを出せとは誰も言わぬ、答えの出るタイミングなど誰にも解らぬもの・・・それが人というものではないのか?」

「・・・・・・」

先ほどよりは緊張感はないもののやはり不安は消せなかったのか、ジェムカの顔色は明らかに動揺しきっていた・・・それでも彼は自分なりに答えを見つけようと考えては見るがリゼルグやルチル、ソムニルの考えが食い違ってしまってもそれを自分が修復出来るのかとつい想ってしまう、そこから沈黙が続き何を想ったのか・・・しばらくして彼女は立ち上がりジェムカの前に立った

「お主の様な想いは拙者もよく抱いてしまう時がある、もし答えを見つけられないのなら実際にどうあるべきか・・・そこから答えを作ればいい・・・拙者も手伝おう」

「・・・・・・いいんですか?」

「ああ・・・それにマツカゼに吹くこの風も・・・・・・なにやら不穏な気配を運んできている、拙者にはそれが気になって仕方がないのだ」

「・・・そうですか、あ・・・そう言えばまだあなたの名前聞いてなかった・・・俺はジェムカ・ランクスです」

「拙者は・・・春美弥紫乃、よろしく・・・ジェムカ殿」

ジェムカとシノ・・・2人は堅い握手を交わし行動を共にする事を誓った

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2006年12月16日 (土)

第1部(第18話)

リュウシロウの案内のおかげで無事にマツカゼにたどり着いたジェムカ達はしばらく歩いた城門近くでリュウシロウと別れる、彼は辺りを見回しながら何事もないかのように振舞いつつも・・・

「僕はこれからまた別の仕事があるから、じゃあ後は適当にがんばって・・・」

そう言って彼はなにやらいそいそと落ち着きのない動きを見せながらその場を去るが誰一人それを怪しむものはいなかった・・・と言うより、怪しい男の行動にいちいち気を取られている余裕など今の彼らにはないからだ・・・・・・

「・・・・・・なんか変な兄ちゃんだったな、俺の事知ってたりルチルの事も色々と知ってるし」

「確かにそうね・・・でも今の私達にはいちいちそんな事に関わってる余裕なんてないわ、ミナト大臣に会って話を聞かなきゃ・・・・・・」

「ルチル・・・随分焦ってるね」

「そうかしら、私はラキルを助けたいためだけに動いてるわけじゃないの・・・でも・・・・・・」

ルチルの言葉には明らかな焦りが伺える・・・ハルニムにさらわれそのハルニムから突然姿を消した妹の行方が彼女にはいつも付きまとっているかのように、それを察してなのかリゼルグは突然方向を変え城から離れるように歩き出した

「リゼルグ!?どこへ行くの?」

「・・・・・・今日はよそう、何も今焦る事なんてないと想うんだ」

「どうしてよ!?」

「・・・それは・・・・・・君がよく解るはずだよ、ルチル」

今のルチルの精神状態では確実に1人で何かをやらかすに違いない・・・リゼルグはそう示唆していた事を彼女が知る由はないがソムニルはうすうすそれに感付いたのか何かを想い付いた様にルチルの背中を押しながらリゼルグの歩く方向へと向かった、とは言ってもリゼルグ自身マツカゼへ来たのは初めてなので右も左も解らない状態だったのか小1時間ほど歩いた所で彼らは迷ってしまい人通りの多い道の路地裏で彼らは足を止めてみた

「・・・・・・やっちゃったね、リゼルグ・・・」

「・・・・・・」

「ちょっと!!何ですぐに城へ入らなかったわけ!!?いくらエアルク1の騎士のあなたと言えどこんな事許されるはずが・・・」

「まあまあ・・・で、これからどうする?宿を探すといってもマツカゼの事は俺もよく知らないし・・・ねぇ」

「俺も・・・エアルクから東に行った事なんて全然なかったし、樹海から西側もよく知らないし・・・このまま適当にやり過ごすのか?」

「・・・とりあえず、今日は城に近づくのはよそう・・・どうも今の俺達では・・・かえって危険を煽るだけだと想う」

一連の仲間の行動を把握しているリゼルグはこのまま城に近づく事はせず適当に宿を探すと言って人通りの多い大通りへと向かって行く、ジェムカはそのままリゼルグに付いていこうとするがリゼルグは首を横に振ると1人で行ってしまった・・・ルチルはそこから反対の方向へと歩いて行きジェムカとソムニルは途方にくれるように立ち止まってしまう

「参ったなぁ・・・ルチル絶対怒ってるよあれ・・・・・・で、リゼルグは・・・何か考えてる様子だった?」

「解らないけど・・・何も考えないで動くような事はするような人じゃないからなぁ、彼は」

「確かにそれは言えてる、でもな・・・今の俺達がどうこう出来るほど簡単な問題じゃないって事は俺にも解るよ」

目的地に付いた途端パーティは別々の行動を取る・・・この様子にジェムカは少し不安を覚え、ソムニルはどうしたものかとばかりにその場で考え込んでしまいいきなり解散の危機を迎えた、とは言え・・・ジェムカはルチルとリゼルグの間に何かが起こったのかをようやく察したのかソムニルと別れルチルを探しに向かった

同じ頃・・・リュウシロウは・・・・・・

「ただいま戻りました・・・ムサシ国王」

「ご苦労だったな・・・で、ベルステルの様子はどうだった?」

「やはりハルニムに滅ぼされ・・・ただいま城の近くまでベルステルの生き残りであるルチル殿を案内したのですが、私は彼らに考えるだけの時間を与えさせてみようと想いそこで別れました」

「そうか・・・ところで、アスティルの生き残りであるジェムリクア殿の行方について何か解ったか?」

「いえ・・・それはまだ掴めてませんがそれと思しき者がルチル殿のパーティにおりました、彼らの間では『ジェムカ』と呼ばれております・・・おそらく彼が・・・・・・」

「解った・・・お前も帰ってきてまだ間もないんだ、今日はゆっくり休め」

「御意・・・」

国王とベルステルに関する話をするリュウシロウ、報告が終わり部屋を出ると天井裏から女性が彼の前に現れた・・・彼女はしばらく会わなかったリュウシロウの前に降りると彼の後ろを歩き始める

「兄さん・・・随分と遅かったね」

「あ・・・アヤメか、いろいろと面倒をかけたな・・・・・・」

「・・・いいよ、それにしても・・・・・・ますますやばくなったんじゃない?ハルニムの勢力・・・何とかしないとこっちにも火の粉が飛ぶかもしれないわね」

「そうならない様に外の様子を調べるのが僕達お庭番の仕事じゃないのか?それに城の護衛だって立派な仕事の内だしね」

「それはそうだけど・・・でもこの国には彼女がいるから・・・・・・私達があまり心配する事でもないと想うけどな」

リュウシロウは同じお庭番仲間で妹でもあるアヤメと話しながら何事もなかったように城を見回る、内心ではパーティがどういう状況であったかをあの短期間で把握していたのかわざと城門前で案内をやめていた事をムサシには話さないでいた事も妹には黙っていた・・・

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2006年12月 9日 (土)

第1部(第17話)

東の国マツカゼまではインセルからの距離を考えれば皇帝が馬を走らせた場所よりも少し短いくらいだ、とは言えその付近は森が生い茂っていてたどり着くまでにはそれ以上の労力を要する、そのためマツカゼの均衡はそれなりに保たれていたがそれ以上にマツカゼには他の追随を許さないほどの強さを持つ者もいたと言う・・・

「マツカゼまでは結構距離があるんだね」

「ああ・・・だが近くには港町があるからそこから船を乗り継いでマツカゼに入るのが早いと想うのだが・・・・・・」

「船乗るのか?港町も随分と久しぶりだから俺もなんとも言えないけど・・・アスティルが亡んで以来マツカゼもかなり警戒してるって噂だよ」

「確かにそうよね・・・私達無事に着ければいいけど」

「大丈夫だよ・・・俺達が敵じゃないって事を彼らに伝えれば解ってくれる」

先頭を歩くリゼルグは皇帝と交換した剣を握り締め想いを強く奮い立たせる・・・一日かけて辿り着いた港町は戦争などなかったかのように平和で活気に溢れてはいたが殆どの噂は町中に知れ渡っていたのかその不安と焦りは隠せないほど人々も心の中では動揺していた

「やっぱりそのうちエアルクも戦争するのかしらねぇ・・・」

「シェルガもマツカゼやエアルクを狙ってるって言う噂もあるみたいよ」

「みんなどこもかしこも戦争の事で話が持ちきりみたいだね」

「やっぱりハルニムの勢力が伸びてきた影響で他の国々でも戦争が起きてるみたいだし・・・本格的に物騒になってきたって事だよね」

「そう言う事になるかしらね・・・その事が今になって実感するなんて皮肉な話だわ」

「おーい、その船待ってくれぇぇぇ!!」

ちょうどマツカゼ付近の街へ向かう定期船が出港する直前船に乗り込むジェムカ達の後ろから急いで船に乗り込もうとする掛け声が聞こえてくる、想わず振り向くとあまり見慣れない服装の男性が息を切らせながら船のタラップを駆け上がりパーティの前で立ち止まった、やがて船は港を離れマツカゼに一番近い港町へと出発する・・・

「いやぁ・・・危なかったぁ、この船に乗り損ねたら当面帰れなくなるところだったよ」

「・・・・・・あの、あなたは・・・?」

「え・・・ああ、ごめんごめん・・・君達が先に乗り込もうとしたのにいきなり走ってきたから驚いたでしょ?」

「え・・・ええ・・・・・・まぁ」

「あの・・・あなたはマツカゼの人ですか?私達はこれからマツカゼのミナト大臣に会いに行く所なのですが・・・」

「え、ああ・・・ミナト大臣に用なんだ・・・・・・そっかぁ」

リゼルグは彼の服装からマツカゼの人間である事をすぐに察知し事情を説明する、彼もリゼルグを見た時エアルクの人間である事をすぐに察知するとジェムカ達にも同じように目線を向け何かを確認するようにじっと見つめる

「・・・?」

「君は見ない顔だけど・・・どこから来たの?」

「えっと・・・インセルからです」

「インセルかぁ・・・また偏狭の街から大変だったでしょ?」

「ええ・・・でも、リゼルグが一緒でしたから大変って程でもなかったですけど」

「そっか・・・っと、これはこれは・・・ベルステルのルチル姫ではないですか、ベルステルが崩壊したと聞いた時驚きましたよ・・・ラキル姫も行方を晦ましたそうで」

「・・・なんであなたがそこまで知ってるの?」

「それは・・・秘密です、そっちのハーフエルフの少年と似たような仕事なものでね・・・」

「・・・なんで俺がスパイやってるって知ってるんだ?」

「そりゃあ・・・ハーフエルフのソムニル・ホルクァって言えば同業者の間じゃ有名だよ」

「じゃあ・・・集落の事も・・・・・・」

「もちろん・・・あの時は大変だっただろ?家族も仲間も殆ど失って・・・」

「・・・・・・でも俺には待っててくれる人達がいるからあまりそこまでは考えたくないんだ」

「そっかぁ・・・まぁ、お前があまり気に病む必要なんて本当はないんだ・・・本来ならな」

男性はジェムカ達の事をあらかた知っていたらしく納得したような表情で話を続けた、話によれば彼・・・リュウシロウはベルステル付近の状況の調査のためにこの地へ来たと言う事なのだが滅びた上生き残りで確認できたのがルチルだけと言う事もあってか想わず想い悩んだ表情を見せる・・・それでも1人でも無事に生きてこのパーティにいると解れば他にも生きているかも知れないラキルや国の人達の情報も掴めるだろうと内心考えては見ていた、しばらくして船はようやく港に着き船を下りたパーティはリュウシロウの案内のもとでマツカゼを目指す事になった

リュウシロウ・マサムネ(政宗竜斯朗) 26歳「4月20日生」
・アヤメの兄で御庭番の隊長、少々能天気な所があり妹に関してはとても敏感ではあるが忍者としての腕は一流、アヤメ以上に酒癖が悪く酔っ払うとオカマ口調になったりその場で服を脱いでいたりと周りの人達もあまり彼とは酒を飲みたがらない、すでに滅びていたベルステルへ偵察へ向かいマツカゼへ戻る途中の船でジェムカ達と出会う

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2006年12月 2日 (土)

第1部(第16話)

ソムニルから樹海の話を聞いたその日の夜、ジェムカ達は中庭に集まって出発の準備を整えていた

                                                                                                

「本当は城の屋上に上ってドラゴンに乗ればいろんな所に簡単にいけるけど今はそうは行かない・・・彼らの行方も消息も計り知れないからどうなってる事か・・・・・・」

「・・・ひとまず私達のやる事は・・・・・・エアルクのドラゴン探しと言った所かしらね」

「そう・・・なるかな、君の妹さんの事も心配かもしれないが・・・闇雲に探しても生きているかどうか解らない・・・でもその可能性だけは捨ててはいけないと想うんだ」

「リゼルグの言うとおりだよ・・・ルチル、これ以上俺みたいなやつを増やしちゃならない・・・兄弟や家族を失うことなんて・・・絶対あってはならないんだ」

ルチルの肩をたたきながら強く言葉を告げるソムニル、彼の言葉は家族を失い兄弟をなくしたものだからこそ言える言葉だと言う事を彼女も十分それを思い知っていた・・・だからこそリゼルグも内心その言葉が胸に痛いほど刺さっているのを感じている

「それで・・・どこへ行くの?」

「ひとまず・・・・・・東へ向かおうと想うんだ、東の国マツカゼにはアスティル時代から親交のあるミナト大臣がいる・・・彼に聞けばジェムカの記憶に関する何かが掴めるかも知れない、闇雲にドラゴンを探すよりはまだいいようだよ・・・」

「・・・・・・もし俺が関係なかったら・・・どうする?」

「ジェムカ・・・やる前からそれでは何にもならないよ、大丈夫・・・俺達に任せて」

「・・・エアルクのドラゴン、見つかるといいね」

「そうだね・・・(確かにそうかもしれない・・・マツカゼに行けばドラゴンに関する手がかりだってない事もないんだしラキルの行方だって探れるかもしれない)」

それぞれの想いを胸に彼らはエアルクの城門をくぐり久しぶりの外へと出た、するとそこへ城門へ近づく1頭の馬がこちらへとやってくる・・・リゼルグはその近づく馬に乗っている人物に気付くと片ひざを付き頭を下げた、やがてジェムカ達の側までたどり着いた馬は彼らの前で止まり乗っていたその人物は馬を降りるとリゼルグの前へと歩み寄った

「ご苦労だったな・・・リゼルグ、彼が・・・ジェムカ・ランクス・・・・・・あのリーチェが直接剣を教えた男か」

「・・・皇帝陛下・・・良くぞご無事で、私もジェムカを探すまで・・・随分と時間をかけてしまいました」

「そっか・・・って、そこにいるのはルチルか?随分と美人になったなぁ・・・その様子だとラキルは・・・・・・」

「ラキルとは・・・逃げる途中ではぐれてしまい・・・私は彼らと会うまで生死を彷徨いかけましたわ、でもおかげで私は何とか今まで生き延びれたのですが・・・」

「あんたが皇帝陛下・・・ねぇ、聞きたいことがあるんだけど・・・」

「お前は・・・ハーフエルフだな、噂によればよその世界とは殆どかかわりを持つことのないと言われるイルニア樹海でこの数年の間均衡が崩れたと言う話があったぞ・・・」

「・・・俺のいた集落が燃やされちまったからな、だから俺が出てきた・・・家族も死んで・・・・・・俺は何も出来なかったから・・・」

「そうか・・・この様子だとやはりハルニムを野放しにはしておけないようだな」

さすがに今の状況だけではたとえエアルクと言えどハルニムを攻め落とすには力が足りない事を実感する、皇帝はこぶしを握り締めながらソムニルの話を聞き入れる

「今の俺達ではどうあってもハルニムをどうこう出来る力なんてない・・・あんたなら何かハルニムに関する弱みとか知ってるんじゃないかと想って・・・」

「悪いが・・・俺もそこまでは知らない、知ってても・・・多分何の役にも立たないと想う・・・・・・お前もスパイの端くれならそれくらい解るだろうに・・・」

少し俯き見透かされたような顔つきでソムニルはジェムカの元へと戻った、皇帝自身ソムニルの話はどこからか聞いていたらしくすぐに彼だと言う事を理解する・・・そしてそれがこのパーティとしてはかなり信用する価値があるということも見抜いていた

「だが・・・リゼルグの拾ったメンツならハルニムを直接どうこうするのは難しいだろうが少しでも情報を集める事は不可能な話ではないようだな」

「ええ・・・そこで皇帝陛下、お願いがあるのですが・・・」

皇帝は何かを察したように手綱を持ち城へと入る直前、リゼルグの持っていた剣と自分が持っていた剣を交換し「・・・・・・お前の言いたい事は解る、俺から出せる命令は『生きて帰って来い』それだけだ・・・絶対死ぬなよ、そのために互いの剣を約束の証として持っていることを忘れるな」とだけ言われそのまま城へと入って行った・・・城門が閉まるのを確認したジェムカ達は東の国・マツカゼを目指すべく旅を再開した

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2006年11月29日 (水)

お知らせ

現在毎週土曜日更新の「黎明のカタルシス」ですが今年は連載を12月23日まで更新し翌週の12月30日よりお休みする事が決まりました、ちなみに再開は1月13日です

年末年始ということなので2週間のお休みね、それまでにイラスト出来上がるかしらねぇ・・・

それはほぼ難しいかもしれないわ・・・でも同人誌を出すって言う時期さえ決まれば書くんじゃない?

それはそれで遠い話ね・・・大丈夫かしら?(汗)

うーん・・・多分そこは突っ込んじゃいけない気がする・・・かな

あはは・・・確かにね、でも・・・・・・いい加減載せないとまずいよね・・・やっぱり

だね・・・あたしもそう想うんだけどどんな事になるやら・・・ね

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2006年11月25日 (土)

第1部(第15話)

生き残った北側の人達と事態に気付いた南側の人達のおかげで樹海は大木を境に北半分を焼き夜明け前にようやく収まった・・・殆どが焼けた北側の森では仲間達の焼死体が転々と転がっていてソムニルの家族もカヌレアを護るように覆いかぶさる両親とうずくまるカヌレアが殆ど顔も解らないほどまで燃えてしまっていた・・・ようやく意識を取り戻したソムニルはその場所へと向かい燃えてしまった家族の遺体を愛おしむようにその場で涙を流した・・・何とか残った人達は燃えてしまった仲間の墓を建てる、ソムニルも家族の墓を建てる中彼を助けた青年が手伝いに現れた

「大丈夫かい?家族の事は・・・運が悪かったとしか言いようがないって言ったら薄情な言い方かもしれないが、俺にはお前の気持ち解るぜ」

「・・・・・・」

「そういつまでも落ち込むなよ、俺だって・・・病気の母さんと弟と・・・・・・大事な人と・・・殆ど身近にいた人があの火事で焼け死んだ・・・」

大木から摘んできた花をソムニルと共に亡骸の前へ供える、彼・・・ルーシュには病気の母親と小さな弟・・・・・・それにフェレスという恋人もいた・・・彼らは同じ集落で出会い樹海中の誰もが認めるほどの仲睦まじいカップルとしても有名で彼女と家の近かったソムニルも小さいときはフェレスとよく遊んでいた事もうっすらと覚えている

「フェレスお姉ちゃん・・・逃げ切れなかったんだね」

「・・・・・・あの時彼女には母さんのお守を任せた・・・それが彼女の命を落とす事になるなんて想わなかったよ」

ソムニルの隣でルーシュは顔を見られまいとうつむくがその目には涙がうっすらと流れているのがソムニルにも見て取れる、何を想ったのかソムニルはそんなルーシュにそっと寄りかかり静かに目を閉じながらそっとルーシュの腕を掴んでみた、ルーシュもそんな彼の想いに答えるように掴まれた腕を振りほどくわけでもなくもう片方の腕でソムニルの肩を抱き寄せた、れから半月後・・・樹海が焼ける前のぼや騒ぎのあったと想われる現場へ向かったソムニルはふとある事を想い出した、それは長老が自分と妹にだけ話してくれたあの話の事を・・・今自分が立っているこの場所がハルニムに近い場所だったという事も・・・長老を殺した毒がどの集落でも使われていないという事も考えれば殆ど決定的だという確信を得た事になるそう考えたソムニルは急いで戻ると旅支度を始めていた、今からでもまだ間に合う・・・自分がスパイとして情報を稼げば樹海を復興させる事だって出来ない事じゃないと彼の中ではそれが今一番出来る事じゃないかと想ったからだ・・・当然の事ながらスパイとしてはようやく一人前になろうとしている彼に今出て行かれては樹海は情報不足になる危険もあった、そのため集落の大半はソムニルに樹海を出る事を思い留まらせようと何度か説得するも彼は折れる事なく出る事を堅く決めていた、ルーシュもソムニルに樹海から出て欲しくない一心で何度も説得に当たったがやはり彼は聞かなかった、そんな押し問答が何日も続きしばらくするとソムニルの想いに負けた人々は説得を諦めていった・・・だがルーシュだけは最後までソムニルが出る事を反対したがとうとうその固い決心に負け旅立つ事を許してしまう・・・

「ソムニル・・・やはりどうしても出るのか?」

「うん・・・俺もう決めたんだ、集落のみんなや父ちゃんや母ちゃん・・・それにカヌレアの仇を取りたいって」

「俺も・・・フェレスや母さん、それに弟の仇を取りたいが・・・そんな勇気俺にはないようだ・・・・・・だがやはりお前は違う・・・俺にもお前みたいに勇気があれば一緒に出られたんだがな」

「・・・ルーシュ、一つだけ約束して・・・俺は絶対に死なない・・・無事に戻ってくる・・・・・・だからルーシュもみんなも俺が戻るまで無事でいて・・・」

「ああ・・・約束するよ」

こうしてソムニルは樹海に住む仲間達に見送られながら旅立った、もしかしたらこうして旅をしていればハルニムの息がかかったハンターを探せるかもしれない・・・そいつが長老を殺したのならば可能性は十分にあると確信して・・・そして家族の敵を討つためハルニムを倒すと決めた彼はふと立ち寄った街で亡んだアスティルの王子が生きているという噂を聞きつけようやくジェムカのもとへとたどり着くまでにはかなりの時間がかかった・・・・・・そしてジェムカのパーティに遭遇し今に至るという事だ

「あんた達を探す気にならなかったら今頃俺何をやってたんだろうなぁ・・・」

「そんな事があったのね・・・知らなかったわ」

「ソムニル・・・その、もし・・・君も俺の手がかりだけでここまで来たのなら・・・・・・これから先どうするの・・・?」

「そんなの決まってる・・・俺の目的はハルニムをぶっ飛ばして樹海を復興させる事だからね、そのためならあんた達の手伝いだってやるよ・・・あんた達と組んでやればいつかハルニムへ行ける、俺が1人で直接行ったって殺されるのがオチだもの、そんなことになったら・・・樹海で待ってる連中に申し訳が立たないよ」

ソムニルは笑顔で答えるとそっと立ち上がり部屋を出た、本当は彼が自分達にこんな話をした事についてみんな迷ってはいたがソムニル自身本心でなければこんな話はしないとどこかで確信していた、そして彼らは同時に残酷な現実を1つ知る事にもなったがソムニルが体験した事がどれほどまでに過酷な状況を生きてきたかを彼の言葉を持って思い知る・・・

「これで解った事は・・・やはりハルニムをあのまま放っておくわけには行かないと言う事ね、私は行くわよ!誰がなんと言おうと誰が止めようと・・・」

「ルチル落ち着いて・・・俺だって出来る事ならハルニムを倒したい、よく解らないけど・・・色々とほうっておけないっていうか・・・・・・なんていうか・・・・・・」

ジェムカは曖昧ながらもルチルに自分の考えている事を何とか伝えようと言葉を続けるもうまく伝えられないのかすぐに黙り込むようにうつむく、リゼルグもその様子を察していたのか一度席を外すように部屋を出た・・・昨日降った雨が上がって間もない空は外の残酷さを感じさせないほど輝いていた、城の中庭でソムニルが寝そべって空を仰ぐように何かを眺めている様子が伺える、リゼルグが近付いても話しかけても彼は何も答えることなくただ何か絶望を実感したような目をしているだけだった・・・リゼルグもソムニルの隣に座り彼のその眼に何かを感じるかのように話しかけてみた

「・・・・・・ジェムカの言ったように無理して話すことなんてなかったのに、君は・・・そこまでして樹海や仲間達を守りたかったんだね・・・なんとなくだけどそれは俺にも解るよただ・・・君はちょっとばかり無理をしすぎたんだと想う、少しでも俺達で力になれる事があるんだったら・・・そのときは遠慮なく言ってほしい・・・俺達はもうパーティなんだ、今さらいやとは言わせないからね」

そう微笑みながらリゼルグは立ち上がると門の方へと向かっていった・・・同じ頃部屋に残っていたルチルとジェムカはこのままハルニムへ乗り込んでいいものかとふと考えていた確かに人数さえ揃えばハルニムを倒す事は可能だが相手がどのような者か知っている者はいない、それゆえ誰も手を出す事に躊躇ってしまっているのも事実だった・・・だからこそ倒さなければならないと言う想いがまた強くなるのも2人の中にはあった、特にルチルにとっては妹の消息も気がかりになってか苛立ちを隠せない状況になっていたがジェムカはそんな中で自分に何が出来るか・・・それが一番の不安要素だと実感していた

ルーシュ・リグレット 18歳「5月21日生」
・ソムニルと同じ集落に住んでいた盗賊でソムニルが家族を失った時助けた青年、その後も彼はソムニルと共に樹海での集落復興を目指すがソムニルが旅立つ事を最後まで反対する、生まれつき「魔想力(リンガム・パルセ)」が使えるがハーフエルフ達の間では「呪われた力」とされているため使う事すらも禁じられている、それでも亡き長老からの信頼も厚く北側の集落の生き残り達をまとめながらソムニルの帰りを樹海の集落で待っている

フェレス・レイシ 16歳(享年)「3月6日生」
・ソムニルが幼少の頃よく遊んでいた同じ集落の少女でルーシュとは恋仲だった、火の手が迫る直線までルーシュの母親の面倒を見ていたが逃げ切れずともに焼死する、ルーシュは彼女達の死を深く悔やんでいたが同じように大切な人を失った事実はソムニルと同じぐらい悲しいものだと実感した

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2006年11月18日 (土)

第1部(第14話)

イルニア樹海・・・それは世界の森の面積の半分を占める広さを誇る木々の生い茂る場所であると同時にいくつかの盗賊ギルドがそれぞれ集落を作り別の文明もまた作られていた、だがその均衡を一気に打ち破るほどの悲劇が訪れる事など・・・・・・このときは誰も知る良しなどなかった

「待ってよ!兄(にぃ)」

「どうした?こっちだよ」

兄と呼ばれた少年・・・ソムニルは妹であるカヌレアと共に樹海の中で遊び育った、ソムニルは集落初めてのスパイとして育てられカヌレアは盗賊としての才能は天才的であった、そんな2人は仕事上コンビとして組む事があったがお互い別のパートナーと組む事はなく信頼しあった兄妹仲で樹海の全集落中でも一目置かれる存在でもあった・・・ある日ソムニルとカヌレアは長老に呼ばれ次の仕事の話を受けるがこの時の長老の顔はどこか浮かない表情を浮かべていた

「ソムニル・カヌレア・・・次のお前達の仕事の話だが・・・」

「・・・長老、どうかしたんですか?具合でも・・・??」

「・・・・・・お前達が心配するほどのものではない、次の仕事の話なのだが・・・」

「長老・・・俺達に何か隠し事でもあるんですか?いくらなんだって俺が何も知らないとでもお思いで?」

「・・・・・・やれやれ、ソムニル相手に隠し事が出来なくなるほどになるとは・・・ワシもそろそろ歳かも知れんのう」

「ごまかさないでよ!あたし達に何か隠してる事があるんだったら今すぐ話してください・・・でないと仕事の話どころではないわ」

曖昧な長老の言葉に業を煮やしたカヌレアは机を叩きながら立ち上がる、長老に向かって一喝するように叫ぶとソムニルは想わず静止するのも忘れた状態で呆然となっているだけだったが長老も彼女の気迫に圧倒されたのかカヌレアが落ち着き座るとため息を深くつきながら話を続ける

「そうじゃのう・・・実は数ヶ月ほど前じゃったかな、ハルニムの使者がやってきての・・・『集落の盗賊達を集めて1個小隊のチーム編成に取り入れたい』との話が舞い込んできてのう」

「冗談じゃないわよ!そんな人殺しの国の軍なんかに誰が入るものですか!!」

「まあまあ・・・で、その話どうなったんですか?」

「もちろん断ったよ・・・ソムニルは・・・・・・どう想うかな?」

「俺だったら・・・もちろんイヤですよ、カヌレアは見てのとおり解りやすい性格ですしたとえ俺達が長老のような立場であっても断ってると想います」

「そうか・・・お前達ならそう言ってくれると信じていたよ、他の連中にはまだこの事は伝えてないが事態が落ち着くまでは話す事はないじゃろう・・・ワシが死んでもそれは同じ事じゃこの事実を知っておるのはおぬしらを入れても3人じゃからな」

長老は一つ肩の荷を降ろしたように安著感に満ちた顔で2人を送ると直後にどこからともなく飛んできた矢によってその場で倒れた遺体が翌朝南側の集落のパーティによって発見された最後に会ったのはソムニルとカヌレアだったため最初は2人が疑われたが矢に塗ってあった毒はどの集落のものでもないため樹海中の集落では騒ぎになった、そんなことがあって3日後、イルニア樹海の北東でぼや騒ぎが起き事態は最悪の方向へと動き出す・・・・・・

「長老暗殺の次はぼや騒ぎ・・・なんだかやな予感がするよ」

「落ち着きなさいソムニル・・・長老暗殺はまだ犯人の目途は付いてないけどぼや騒ぎくらいなんて事ないでしょ」

「だけど・・・母ちゃん、このままだと樹海中の集落で争いが起きるかもしれないんだよ」

「そんな事あるはずないだろ、まったくこの子は・・・父ちゃんからもなんか言ってやりなよ」

「ん・・・どうかしたのか?」

「父ちゃん・・・こんな非常時によく落ち着いてるよな」

ソムニル達の母親はいちいち騒ぐ事ではないと息子を諭すが父親は何事もなかったかのようにのんびりと構えている様子だった、とは言っても父親も何も考えてないわけではない事くらい母親も解っていた、それを知らない子供達は両親の考えをすぐに理解できなかった・・・とは言ってもソムニルもカヌレアも盗賊としての両親を尊敬していて盗賊である事を除いても彼らは普通の家族とはなんら変わりのない生活を送っていた事には変わりはない、そんな幸せな日々が永遠に続いて欲しいと願っていたその夜ぼや騒ぎのあった場所から火の手が迫りやがて近隣の集落の人達は何の前触れもなく火の海に飲み込まれて行った・・・・・・そしてソムニルのいる集落も火の海に飲まれかけた時数人の盗賊が集落へと逃げ延びようやく一刻も争う事態になっている事に気づいた

「ソムニル、カヌレア!もうすぐここも燃えてしまう・・・逃げるぞ」

「うん・・・」

両親の誘導で他の仲間達は南側を目指し走った、だがこの時まで北側の集落全体ではすでに半分以上の仲間を失っているため逃げ延びれるかどうか難しい状況だ・・・だが大人達は懸命に仲間を助けようとする一心で走っていたが長老のいた大木の近くまで来た時・・・

「きゃあ!!」

「カヌレア!!」

「カヌレア大丈夫!?」

「しっかりしろ・・・」

「うぅ・・・パパ、ママ・・・兄・・・・・・」

ソムニルがカヌレアと共に逃げる途中繋いでいた手が離れたと同時にカヌレアが足をもつれさせその場で倒れる、とっさに両親は彼女の元へと駆け寄りソムニルも近付こうとするがその次の瞬間彼らの間に炎に包まれた木の枝が落ちてきたり殆ど燃えている状態の木が倒れてきたりとソムニルと家族の間をさえぎるように立ちふさがった、ソムニルは何とか家族を助けたい一心で何とか近付こうとするが、その寸前で何かの力に阻まれそれ以上は近付く事はできなかった・・・それどころか周りの人達も必死なのかソムニルの家族に気付くことなく走り去っていく

「父ちゃん!母ちゃん!!・・・カヌレア!!!」

「ソムニル・・・逃げ・・・・・・て・・・・・・」

「父ちゃん・・・」

「あたし達はもうだめだと想う・・・せめてあんただけでも逃げるのよ」

「・・・何言ってるんだよ母ちゃん!」

「兄・・・今度生まれ変わってもあたし兄の妹でいたいなぁ・・・・・・」

「カ・・・・・ヌレア・・・」

ソムニル自身ただ呆然とするだけだった・・・ソムニル達のように集落に住んでいる人達は全て希少種族である「ハーフエルフ」と呼ばれる存在で自分達の身を護る時などに森から自然の力を引き出し使うのだが燃え盛る炎の中では両親やカヌレアの力を合わせてもソムニルを焔に近づけさせないようにするのが精一杯だった・・・3人の意識が消えソムニルはその場で想わず俯きその場で伏せこんでしまう

「何をしてるんだソムニル!逃げるぞ!!」

ソムニルに気付いた青年は彼の身体を抱え上げ彼の意識が遠のくのを感じながら南の集落まで無事に走った・・・後になってソムニルは両親や妹の想いによって救われた事を思い知る事を実感するが家族を失ったという深い傷が癒えることはなかった

カヌレア・ホルクァ 13歳(享年)「4月18日生」
・ソムニルの妹にして天才盗賊、イルニア樹海の出身で兄や両親と暮らしていたがカルセア軍の襲撃で両親と共に焼死する、ソムニルが唯一コンビを組む事を許した相手であり彼女もまた兄を尊敬していた

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2006年11月11日 (土)

第1部(第13話)

エアルクへ着いてから約2週間ほどがたった・・・ラキルやジェムカの記憶に関する情報を何一つ得られないままルチルは苛立っている状態だ

「・・・・・・まったく、こうしている間にもラキルがどうなっているか解らないなんて・・・一体私達はどうすればいいのよ!!」

「落ち着いてルチル・・・エアルクの情報収集能力は他の国にも引けを取らない・・・でもハルニムも相当手ごわいようだよ、何度かハルニムに偵察へ向かったスパイ達がもう5人も帰ってきてない、ある程度情報はもらってるけどそれだけではまだ弱い・・・」

「私が言いたいのはそう言うことじゃないの!!ラキルがどうなっているのか・・・それを知りたいだけなのに・・・・・・」

「君の妹さんに関する情報は・・・残念だけど入ってないよ、ハルニムにはいないんじゃないかな?」

「そんな事ないわよ!だって・・・ラキルは私の目の前でカルセア軍にさらわれたのよ・・・・・・もしラキルが運よく逃げれたとしても情報がなにもないなんて・・・あぁ・・・ラキル」

「・・・・・・ルチル、そう落ち込むなよ・・・少なくとも俺はルチルの気持ち解るよ」

「・・・ソムニル・・・・・・あんた・・・」

「俺にも・・・妹がいたんだけどね、俺の住んでいた集落を焼かれて・・・みんな死んじゃった・・・・・・でもルチルの妹は絶対生きてると想うよ・・・ラキルがそう悲観的になってちゃ多分・・・余計に逢えなくなるかも知れない」

「・・・・・・俺には・・・その、兄弟とか・・・・・・よく解らないんだけど・・・・・・・ソムニルの言うとおりだと想う」

「・・・まさか・・・ジェムカにまでそんなこと言われるなんて想わなかった、でも・・・なんとなく私が何もかもを否定してるって感じたら・・・私は精神面で負けてた・・・ごめんね心配かけさせちゃって」

涙で何もかもが見えなくなった目元を両手でこするようにふき取るとルチルは立ち上がり持っていた槍を握り締めながら部屋を後にした、今の彼女を動かしているのは全て生き別れになった、妹の存在だけだった・・・だからこそ自分から動かなければならないと彼女も決心したのだろう、そんな彼女の様子を見たジェムカ達も少しでも彼女の力になりたいと想いながらもどうしていいか解らなかった・・・でもこのまま皇帝が戻ってくるのを待っている時間はない

「・・・皇帝には後で大臣やみんなを通して何とかやり過ごそう、俺達もすぐ出発する」

「リゼルグ・・・でも、いいの?」

「このまま俺達が何もしないままでいるなんて・・・やっぱり俺には出来ない、それに・・・・・・ルチルをあのままにはしておけない」

「そう言うことだよな・・・だったら俺も行くぜ、いつまでもここに留まってたって何にもならない・・・ルチルの妹さんを探すんだろ?」

「そうだ・・・ジェムカはどうする?もともと君はエアルクで保護する目的で俺が連れてきたわけだし・・・ここに留まってもいいんだよ」

「俺は・・・俺も行く、俺も・・・リゼルグや・・・ルチル・・・・・・それに・・・ソムニルといたい・・・・・・俺達がこうして逢ったのも何かの縁だと想ってる・・・だから・・・・・・俺だけ待ってるなんて・・・絶対やだ」

ジェムカはこぶしを震わせながら立ち上がりリゼルグ・ソムニルと共に旅立つ事を決意する、謁見場の近くにある会議室でジェムカ達4人は旅立つ事を大臣達に話した・・・当然の事ながら反対されたがリゼルグやルチルはどうしても旅立ちたいと彼らに説得した

「リゼルグ殿・・・ジェムカ殿を連れてきた段階であなたの仕事は終わっている、それに何も今また旅立たなくても皇帝がお帰りになるまで待たれないのですか?」

「そんな時間は私達にはないのですよ、大臣殿・・・私達はどうしてもルチル殿の妹君を助けたいのです」

「・・・俺からもお願いします、俺達はどうしてもこのパーティとして最後まで何かをやり遂げなければならない・・・・・・そんな気がしてならないのです」

「しかしジェムカ殿・・・」

「いくらなんだって皇帝も1人の人間だ、全てをそう把握出来る訳じゃない・・・あんた達も解ってるだろ?」

「ソムニル・・・」

「これはスパイとしての俺の意見だ、今のこの状況・・・どう考えても何も変わらない・・・・・・だからこそ俺達が動くべきだと想う」

「スパイ・・・どこかの国のスパイだったのか?」

「いいや・・・スパイと言ってもフリーでやってるただの雇われ・・・・・・かな、それに今雇い主はいないけどね」

「・・・・・・ソムニル・・・君は一体・・・」

「さすがにリゼルグやルチルは解っていたみたいだけど・・・あんたは最後まで解らなかったみたいだな、俺のこと・・・」

「君は・・・もしかして樹海の盗賊ギルドに所属してたんじゃなかったのか?最初から俺達の状況を把握出来て、なおかつ不自然なく俺達に近づけたこと・・・それが何よりの証拠だよ」

「その通り・・・確かに俺はイルニア樹海に住んでた、盗賊ギルドって言ったってほとんど樹海に住んでる者ばかりだが居住区の殆どは・・・みんなハルニムに焼かれてしまった」

「・・・・・・そうか、これ以上は話したくないようなら無理して話さなくていい・・・俺はこれ以上仲間の傷を増やすつもりはない」

「・・・まさか・・・・・・妹さんって・・・」

「うん、妹も家族も・・・みんなハルニムに殺されたようなものだよ・・・」

多少うつむき加減で話を続けるソムニルは決して語るまいと誓った故郷の話を始めた・・・ジェムカ達は当然それを知るのは初めてでそこには衝撃的な事実も多く隠されていた、そして・・・何を想うわけでもなく静かな面持ちで語られる

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2006年11月 4日 (土)

第1部(第12話)

玉座に皇帝が不在のままリゼルグは大臣達にジェムカの事を報告した、ルチルはリゼルグと共にベルステルでの事を話している間ソムニルはジェムカの元へ近付くと扉の近くでこそこそと話を始める

「あんたの事は俺も大体調べたんだけど・・・残念ながらあんたにつながる大本となる確固たる確証がなくてね」

「・・・・・・君は何者なの?俺の事・・・どこまで知ってるって言うのかな?」

ソムニルの言葉に一瞬不安を覚えるジェムカだが彼はさらに話を続けた、ソムニル自身は故郷の事を話すことはないがジェムカのいたと想われるアスティルとはそう遠くはないところに住んでいたと語っている・・・ジェムカ達に近付いたのもそれと大きく関係してるせいかどうしてもアスティルに関する話を聞きだしたい言うのもあった、だが王子としての記憶のないジェムカはソムニルにアスティルのことを聞かれても殆ど答えることは出来なかった、と言うより答えられるような事実も殆ど知らないと言うのが正しいだろう

「そっか・・・じゃあ仕方ないよな、何考えてたんだろうね俺って・・・事情を知らない奴から無理やり聞くなんて・・・・・・俺もまだまだだ」

「ごめん・・・ソムニルの力になれなくて、でも・・・今はなんか・・・・・・知っちゃいけない気がするんだ・・・アスティルの事も・・・・・・俺の記憶の事も・・・だからソムニルは悪くない」

「言ってくれるな・・・でも、俺あんたのそう言うところ気に入ったよ」

ジェムカにそう微笑みながら返事を返すソムニルだが、内心何も得られなかった事に苛立ちを覚えるよりも何よりもジェムカの境遇が気になって仕方がなかった・・・やがてリゼルグとルチルがジェムカとソムニルの元へ戻るとこれからの事を考えしばらくは城の中で休む事になる、皇帝はその間戻らないという事もあってか何を考えるでもなくそのままそれぞれが割り振られた部屋の前で別れた・・・リゼルグの話によれば皇帝は一個小隊を率いて魔法力に力を注いでいるという国の一つへ出向いていて片道でも馬を走らせるだけで2週間近くはかかる、よほどの事がなければ1月近くは戻らないという事だがリゼルグが出ていたインセル以上に距離があるうえハルニムによっていくつか国が滅ぼされたためならず者達が横行している場所も多く危険区域が多い

そのためエアルク皇帝自ら小国の援護や亡んだ国の人達を支援するために出向いているという事だ

「皇帝・・・兄さん・・・これから俺やジェムカ達はどうすれば・・・・・・」

リゼルグは右耳に付けられたピアスに触れながらベッドに座りふさぎこんだ状態でうつむいていた、ピアスを譲り受けた時兄は女神の裁きにより死亡して以来ふと考えてしまう・・・騎士として自分を拾ってくれた皇帝は変わり者だが近隣や同盟の国家からも厚い人望と面倒見のよさを持っていて彼についていったからこそ今の自分がいて・・・兄がいたからここまで来れたという感情がずっと彼の中で交錯していた

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2006年10月28日 (土)

第1部(第11話)

エアルク帝国・・・それは西側でもっとも勢力のある国として有名だが軍事力や魔法に関する研究能力に関しても他国に負けない実力を誇る、帝国を治める皇帝も民衆から慕われていて統治力に関しても右に出るものはいないと称されている

「皇帝直属近衛兵騎士団団長リゼルグ・ガルト、ただいまジェムカ・ランクスの保護と護衛の任務のため戻りました」

「ご苦労・・・」

見張りの兵士に簡単な報告をするとリゼルグは緊張気味のジェムカの手を引き共に門を通る、その後ろでルチルも同じように挨拶をすると同じように門を通るが・・・

「ベルステル第1皇女ルチル・エルドリヒ、私は皇帝にお目通り願いたく入城を許可していただきたい」

「解りました・・・」

「へぇ・・・ここがあの有名なエアルク城か、かなり立派な城なんだね」

「おい、お前!」

「え・・・?」

ソムニルが城へ入ろうとしたとき突然兵士達が持っていた槍を下ろした、どうやら彼らはソムニルを不振人物と認識したのだろう・・・それを察知したリゼルグは一度門の近くまで戻り兵士達を説得した

「その子はジェムカの護衛のために私が雇った、通してやってくれ」

「しかし・・・リゼルグ殿」

「構わない・・・この場は私が何とかするから、彼を通してやってくれ」

「・・・解りました」

見張りの兵士達はリゼルグの説得でしぶしぶソムニルの入城を許可した・・・ソムニル自身ただの気まぐれでジェムカ達に付いて来てるだけなのだがリゼルグが嘘をついてまでパーティとしてソムニルを城に入れたのにはルチルと似たような理由があった・・・ソムニルが何者なのか、それを知るために仲間にしたといってもいいだろう

「ありがとう、リゼルグ・・・俺だけ入れなかったらどうなるかと想ったよ」

「君だって・・・何かしらの理由があって俺達に近付いてるんだろ、それが出来なかったら困るのは君じゃないのか?」

「いいのか・・・俺敵かもしれないんだよ?下手したらジェムカの命だって・・・狙ってたかもしれないね」

「・・・君はそんなことするような人じゃないよ、俺には解る」

「・・・・・・そう・・・見える?」

「ああ・・・」

リゼルグはそっと微笑みソムニルの頭を軽くなでる、その様子を見ていたルチルはジェムカの近くでソムニルを見張るような目線でジェムカの後ろを歩いていた・・・リゼルグも彼女の行動には気を使いながらもジェムカを見ながら進んでいる、やがて少し入り組んでいる迷路にも近い城内を歩きようやく玉座の間の近くにたどり着いた4人は扉の前で立ち止まった

「この扉の先には皇帝陛下がいる・・・俺も会うのはかなり久しぶりになるかな、ジェムカを連れて来るのは皇帝命令でやったからじゃない・・・あくまでもリーチェの意志を尊重しての事だそこは理解してくれるかな・・・」

「うん・・・リゼルグは俺が知ってる限りでも俺に嘘をつくことはないし、さっきのソムニルの事も・・・・・・それに君はマスターの事をよく知ってるし、俺もリゼルグの事信じてもいいって想ってる・・・きっとこれもマスターの想いから来てるんだと想う」

ジェムカはうつむき加減で赤らめた顔を隠すように想わず逆の方向に身体を向ける、リゼルグもそんな彼にそっと微笑を投げかけるとその先にある扉に手を掛け・・・ゆっくりと開けた

その先には立派な玉座と広々とした空間が広がっていて、玉座の近くには数人の側近や大臣達が立っていたが玉座にはそこにいるべきはずの皇帝の姿はなかった

ソムニル・ホルクァ 14歳「8月14日生」
・数少ないハーフエルフの末裔で盗賊、イルニア樹海の出身だがカルセア軍が彼の集落を含む樹海の半分を焼き払ってしまったため家族を失い故郷の事を話す事はない
盗むものは主に「情報」で金品など物理的なものを盗む事は出来ない(彼は集落で初めてスパイとして育てられた)彼の場合単独での仕事が主だが唯一コンビを
組んでいたのは妹・カヌレア(物理的なものを盗むのが得意)のみ

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2006年10月21日 (土)

第1部(第10話)

エアルクの目前までたどり着いたジェムカ達は砂漠をようやく抜け少し大きな街でエアルクについてからの事を話し合っていた・・・と言うのもベルステルが滅びた事も含めてエアルクがどう動くかとか自分たちがどう動くべきかも考えなければならないからだった

「とりあえず無事に俺達はここまで来れた・・・だけどエアルクがどう動くかは俺達が干渉する事は出来ない、だから俺達で何とか動けないか考えてみようと想うんだ・・・・・・本当はリーチェから直接騎士団を任された俺の言う事じゃないんだろうけどそれでも俺は君達の力になりたいと想っている・・・いや、絶対なってみせる」

「落ち着いてよ・・・私達は心配ないわ、私達はエアルクの者ではないしあなたよりは自由に動ける・・・そりゃあラキルを助けたい気持ちもあるわ・・・・・・でもね、あせった所で答えが出てくるとか・・・そう言う期待はしたくない、なんか・・・そんな感じがするの」

「・・・ジェムカは・・・どうする?君は俺達以上に過酷な運命を辿るかも知れない・・・そんな感じがする」

「何言ってるんだよ・・・俺は大丈夫だって、それにほら・・・ルチルだって・・・・・・」

「確かにそうね・・・私は妹を助けるため旅を続けられる、あなたは・・・それよりももっと大事なものを探さなければならない・・・・・・リゼルグの言う通りね」

「そう・・・言うものなのかな、俺って・・・・・・」

ジェムカに関しての記録は2人の中にはほとんど存在しない・・・解っているのはリーチェの拾った孤児である事のみでそれ以上の事はもっと事情の詳しい人間にでも聴かないと解る事は出来ない、それだけジェムカは謎に包まれていると想われても不思議はないが・・・実質ジェムカも自分の事は殆ど覚えていないと言っているあたり2人からすれば彼の話はかなり信憑性がある・・・方だとは想うが実際の話今の段階で真相を知るものに出くわしてないためその事も示唆しての会議に至ったのが本当の経緯だ

「どの道一度エアルクへ行ったらパーティとして出るかを考えよう」

「それはいいけど・・・あなたはこれ以上騎士団を放っておくわけには行かないでしょ、私とジェムカなら平気よ」

「そうも言ってられない・・・言ったでしょ、俺は君達の力になって見せると・・・大丈夫・・・・・・俺は約束を果たすから」

「・・・・・・リゼルグがそう言うのなら、俺信じてみる・・・だってリゼルグは俺の仲間だもの・・・もちろんルチルも・・・ね」

「ジェムカ・・・」

「まぁ・・・そう言われちゃあ私もそう信じるしかないわね、解ったわ・・・何があっても私達はパーティよ・・・後はどれだけ仲間を集められるか解らない・・・・・・でも私達はエアルクでどうするべきか・・・と言うよりエアルクへ着いてからどう動くべきか、そこが重要ね」

3人はお互い顔を見合わせると手前に置いたグラスを手に取り軽くグラスを合わせ・・・中の飲み物を飲み干した、その様子を見ていた1人の少年が微笑みながら声を掛ける

「お兄さん達エアルクへ行くんだって?近くでお兄さん達が話てるの偶然聞いちゃってさぁ・・・」

「・・・君は?見た所子供みたいだけど・・・迷子か何か・・・・・・って感じでもなさそうだね」

「失礼だなぁ・・・騎士のお兄さん、俺は迷子でも孤児でもないよ・・・・・・まぁ・・・色々とワケアリで今はある意味根無し草ってところかな」

「・・・君の名前は?どこから来たの?」

「俺はソムニル、ただのしがない旅芸人さ・・・」

「(この子・・・少しだけど俺に近い気がする・・・・・・ううん、そんな訳・・・ないか・・・一瞬気が迷っただけ・・・・・・でも)」

「そっちのお兄さん・・・顔色悪そうだけど・・・・・・大丈夫なの?」

「あ・・・ううん、大丈夫・・・」

「そう・・・(どうやら・・・彼がアスティルの王子様だって話も・・・・・・胡散臭く感じるけど、でも情報は確かなんだし・・・彼の様子を見るしかないかな)」

ジェムカを見るソムニルの表情は・・・どこか険しいものがあった、でもそれを隠すように彼はジェムカの傍にぴったりと寄り添い様子を伺うように開いていた隣のイスに座る、だがあまりにも不自然な彼の行動にリゼルグは一瞬怪しむがルチルはそれを気にする様子を見せてはいない・・・だがルチルはソムニルが何を考えているのかすぐに察知していた

「(盗賊・・・かしら、あの子見た所この辺の子じゃないし・・・どうみたってジェムカを知らないって顔でもない・・・・・・)」

「ルチル・・・どうかした?」

「あ・・・ううん、なんでもないわ・・・気にしないで(とにかく・・・彼を何とかジェムカから離す必要があるみたいね)ねぇ・・・ソムニル・・・・・・」

「なに?」

「あなた・・・ここへ来た目的って何?確かに私達はエアルクへ行くとは言った・・・高々小さなパーティの情報なんてそう簡単に手に入れられるはずがない、こんなにぎやかな場所で情報を得るのは確かに簡単だけど・・・そこから私達を特定するのは普通に考えれば不可能にも近いはず(こうなれば罠でも張って確かめてみるしかなさそうね)」

「やだなぁ・・・俺昔から耳がいいんだ、小さい情報なんて少しの時間さえあればすぐまとめられるよ・・・(この姉ちゃん・・・侮れないなぁ、俺の事気付いてるのか?)」

「そう・・・(ただの地獄耳が・・・そこまで1パーティに興味を持つかしらねぇ、だけどこれで少しはっきりした・・・この子はただの迷子でもなんでもない・・・プロの盗賊ね、それもただの盗賊じゃない・・・おそらくどこかの国が雇ったスパイの可能性もある、ジェムカを今護れるのは・・・私とリゼルグだけ・・・どうしたものかしら)」

「大丈夫・・・ルチル?さっきからなんか難しい顔してるみたいだけど・・・」

「え・・・あ、ごめんね・・・ジェムカ」

さっきから自分が何を考えているのかすら解らなくなりかけたルチルは一度外の風に当たるため酒場を出た・・・壁に寄りかかりながら腕を組み窓越しにテーブルを囲む男3人の姿を見ながらまた考え込んでいた・・・ジェムカが何者なのかを探るのもそうだけど自分にとって大事なのは妹の奪還、でもそれ以上に今出来ることもたくさんある事は彼女も解っていた・・・だからこそ彼女は妹を助けるまでの間でもいいからジェムカの力になりたいと決意した・・・

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2006年10月14日 (土)

第1部(第9話)

ハルニム帝国・・・それはかつてアスティル国の政策大臣だった男が内乱を起こし作り上げた国、その国はアスティルの王族達を惨殺し作られた悲劇の国でもあった

「・・・これ以上誰にも血を流させてはいけない、ジェムリクア王子を探してアスティルを復興させなければ・・・これ以上ボルクの暴動を世界中に広げてはいけない」

地下の天使像に祈りをささげているのはアスティルの初代女王ヴェルティア、そしてこれはジェムリクア(後のジェムカ)が逃げ出してしばらくした頃・・・彼女は滅びたアスティルを守り抜くためせめてものこのハルニム帝国を作ったのだがそれすらもボルクの道具に過ぎない事を彼女は感じていた

「いかがなされた・・・ヴェルティア陛下」

「ボルク・・・あなたという人はなんて残酷な・・・・・・お願いです、これ以上国の者を・・・血に染めないでほしいのです」

「・・・・・・ヴェルティア陛下はいつもその事ばかりお考えで、なんて皮肉な事なんでしょうか・・・」

「ボルク!私は貴方のやり方を受け入れるわけには行かないのです・・・アスティルが亡んで以来この国の近隣の者達は次々と争いに巻き込まれ・・・・・・そして死んでいく、これ以上・・・血を流させて何の意味があるのですか!!」

「愚問ですな・・・陛下、アスティルの頃より我々に刃向かう者を排除してきた私の責務を否定するのですか?」

ヴェルティアはボルクの暴走を止めるべく説得を何度か試みてはいた・・・そしてその度に自分の知らない所で血が流されて行った・・・・・・このままではいつか殺戮と憎しみが蔓延る様になってしまう、だからこそ彼女は止めなければならなかった

「・・・・・・貴方がアスティルで何をしていたか私にも解ります、貴方のやり方は傲慢で残酷的で・・・アスティル国王も国のために貴方を排除しようと私に相談を持ちかけてきた」

「だがその結果排除されたのは私ではなくあの愚かな王だったわけだ・・・なんと皮肉な話なのであろう・・・・・・」

ボルクは業火に焼かれたアスティルの光景を想い出しながら嘲笑い、そしてヴェルティアを見つめる・・・血の海に沈めたがるその残酷な目付きはその空間そのものを凍らせるほど冷たい、だが・・・ここで臆してしまってはせっかく護ってきたもの全てをこの怪物に渡してしまう事になる、それでは何もかもが終わってしまう・・・・・・そう想ったヴェルティアは護身用にいつも持ち歩いていたレイピアを抜きボルクに向ける

「・・・・・・これ以上は貴方と話をする事すらままならない・・・ならばここで私が決着を付けてあげましょう」

「私を倒すと言うのですか・・・陛下」

「貴方を追い出してもまた別の所で悲劇が起きる・・・そうなる前に始末しなければならない、ジェムリクア王子の無事も確保出来なければアスティルは戻らない」

「ジェムリクア様はどこかでもうお亡くなりにになられているはずです、いい加減お諦めになられてはいかがですかな?」

「私は・・・諦めるわけには行かない!ジェムリクア王子が無事である確信が私のなかにある限り私の心は折れはしないわ!」

ヴェルティアが剣を振りかざすと同時に駆け出しボルクめがけて剣を突き刺した・・・かに見えたが彼女の目の前にいたのはボルクではなくただの幻影だった、一瞬刺し仕留めた相手に感触のない事に気付き振り返るがときすでに遅し・・・背後にボルクの薄ら笑いを見た彼女は背後からボルクによってナイフで刺され死亡した・・・・・・

それから・・・約数年後の今、ジェムカ達はそんな悲劇を知る由もなく旅を続けているが彼らと行動を共にすることになったルチルとはぐれた妹のラキルはかつて女王が暮らしていたと言う部屋に閉じ込められていた

「・・・・・・ルチル・・・今頃どうしているでしょうか、あの人のことだから・・・死んでいる事はまずないでしょう」

ラキル自身ルチルの生存を信じていた・・・自分達がいくら砂漠の国の人間であっても普通なら砂漠で倒れていたら死ぬ確率は高い、だがルチルは魔力も体力も国ではずば抜けて高いためそう簡単に死ぬ事はない、それは四六時中顔を合わせていた双子だから解る事だ・・・だがその彼女とはぐれてしまいラキルはベッドの上でうつむき加減で窓の外にそっと目線を送っているルチルがいつか自分を迎えに来てくれることを信じて・・・

ラキル・エルドリヒ 15歳「10月17日生」
・西側の元ベルステル共和国王族、双子の姉ルチルと共に亡命するもカルセア軍から逃げ延びた時連れ去られた後ハルニム帝国の女王となるが実際はボルクと無理矢理結ばれてしまう、ボルクに復讐するため身篭った身体で姉を求める旅に向かう

ヴェルティア・ハルニム・ハーティス 19歳(享年)「3月24日生」
・ボルクと共にアスティル国を滅ぼし新たな国家「ハルニム帝国」の初代女帝だが即位してまもなくボルクに殺される、彼女の残した日記帳にはボルクに対する憎しみと愛情が綴られている、元は名家の生まれでハーティス子爵令嬢だったが子爵家はアスティルの傘下であるが故最後までアスティルを護るために死ぬまで帝国女帝の座をボルクから護った、ジェムカ(ジェムリクア)とは姉弟に近い仲

ボルク・カルセア・レンティオ卿 53歳「11月30日生」
・アスティル国を滅ぼし新たな国家「ハルニム帝国」を作り上げた元アスティル国政策大臣であり現ハルニム帝国第一衛兵団(通称カルセア軍)総指揮官、人々に自由と平和を与える事を約束すると誓うが裏では数々の悪事に手を染め隙あらば仲間すらも平気で殺す残虐な性格の持ち主、アスティルを滅ぼした際自分の妻や子供達も殺し、後にラキルに自分の子供を孕ませる

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2006年10月 7日 (土)

第1部(第8話)

夜になりジェムカとルチルはリゼルグに連れられ酒場へ向かう、そこでの会話の殆どはベルステルの話やエアルクの話が多く語られている・・・だが最近ベルステルが滅亡した事で盗賊が出るとの噂も耳にする・・・

「やっぱり物騒になってるんだね・・・」

「はぁ・・・やはりベルステルもここまでのようね、私の儚い考えだったかしら・・・」

「あきらめるにはまだ早いよ・・・それにベルステルだって国はなくなっても君がいれば城を取り戻す事がまだ出来るじゃないか」

「それはそうなんだけど・・・やっぱりラキルがいないと・・・・・・私達双子だからどうしてもお互いがいないと落ち着かないって言うか・・・」

「そうなんだ・・・」

「そりゃあ魔法の使い方はかなり違う形になるでしょうけど、ラキルは魔導武器を使えない代わり新しい医療術を開発してるの・・・それがハルニムに襲撃されて以来ままならなくなって2人で逃げたんだけど・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・・・・待ってよルチル、一体・・・どうしてこんな事に・・・・・・」

「私にも解らない・・・でも私達は・・・ハルニムから・・・・・・カルセア軍から逃げ切れば・・・・・・そうしたらエアルクへ行きましょう」

「エアルクへ・・・うん・・・・・・」

私とラキルは国が襲撃された時エアルクへ向かうため砂漠を逃げ回るように走っていた・・・貴方達も知ってる通りヴォルガント砂漠はこの世界でも一番広い砂漠だって事は解ってるわね、でも私達はその砂漠で育った王族、だからこそ逃げ切れる自信はあったの・・・でも途中で軍に追いつかれて・・・・・・

「きゃああああ!」

「ラキル!!」

「ルチル!助けて・・・」

「ラキル!あんた達・・・ラキルに何て事するのよ!!これ以上貴方達の好き勝手にさせてたまるものですか、私達はベルステル国第1皇女ルチル・エルドリヒと第2皇女ラキル・エルドリヒよ!その子を・・・ラキルを放しなさい!!」

必至になって戦った・・・私はラキルを助けようと必至だったけど彼らはそんな私の事など構いもせず気が付いたら意識が切れて倒れちゃって・・・

「ラ・・・キル・・・うぅぅぅ・・・・・・」

「まぁ・・・貴方達がいなかったら確かに私の死体は砂漠に埋もれている所だったわね」

「・・・・・・それで、よく無事だったね・・・オアシスまでもかなりの距離だったというのに」

「どうやら・・・ラキルを助けたい一心で私は生きているらしい、不思議なものね・・・・・・心の持ち様によって人の生死がこうも決まるなんて」

両手でグラスを握り締めながらうつむきそっと微笑むルチルに2人はそのまま沈黙を続けた・・・ジェムカもルチルの言葉に少し困惑を覚えたが彼女がそこまでしても護りたかった妹と護れなかった自分の師匠とでは同じ命でありながらこうも差が違うものかとも考えてしまう、だがリゼルグはそれをどう受け止めればいいか想わずため息をつく

「・・・早くエアルクへ行きましょう、私はどうしてもラキルを助けたいから・・・」

「・・・・・・そうだね、俺も・・・そうしなきゃいけない気がする・・・きっと・・・・・・エアルクへ行けばマスターの話を聞けるかも知れない」

席を立ったジェムカは・・・眼に涙を浮かべた状態で俯きながら声を押し殺しながら店を後にした、リゼルグとルチルはしばらく顔を見合わせ考え込むような表情をお互い浮かべた

「・・・・・・なんか、私変な事言ったかな?」

「ううん・・・ルチルのせいじゃないよ、ジェムカもあれで人の痛みが解るから・・・辛くなっちゃったんだと想う」

「あんたって・・・想ったよりも大人っぽいのね、年齢的には私達大して変わらないのに・・・」

「俺の場合は・・・色々と複雑だからね、多分・・・色々と考えすぎると俺もああだったかも知れない」

「そう・・・」

2人は酒場を出ると噴水の近くの小さなイスに座っているジェムカを見つけた、彼は噴水を覗き込むようにその場から動かなかったがその表情は遠目からはうかがい知ることは出来ない・・・でも2人は気づいていた・・・彼が悟られないよう涙を流していた事を、でも2人はその事をジェムカには話さずお互いの胸のなかへと封印する事を心で誓う

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2006年9月30日 (土)

第1部(第7話)

砂漠でルチルを助けた2人はベルステルへ寄る事をあきらめ砂漠を抜ける事にした、彼女の話ではベルステルが亡んでしまって以来近づくこと自体危険とのことらしい・・・それにたった3人ではベルステルをどうこう出来るだけの力がない事も見て取れる

「俺行ってみたかったんだけどなぁ・・・」

「仕方ないよ、ルチルは危険だって言ってるんだし・・・俺達の力だけではどう考えてもベルステルへ乗り込んだって返り討ちに遭う・・・(まさかハルニムの勢力がここまで来るとは想わなかった、本当に先を急がないと大変な事になりそうだ・・・)」

「そう言えば貴方達どこから来たの?方角からしてエアルクへ向かってるようだけど・・・」

「そうだよ、俺達はエアルクへ向かってる・・・俺はこのジェムカをエアルクへ送り届けるのが今回の仕事でね」

「そうなんだ・・・そう言えばジェムカってあのリーチェの直弟子なんでしょ?エアルクと同盟を組んでるベルステルでも知らない人いないわよ」

「俺の事・・・知ってるんだね」

「まあね・・・(本当言うと・・・ジェムカが内乱で亡んだアスティルの王子じゃないかって言う噂もベルステルじゃ有名なんだけどこれはさすがに教えない方がいいわね、あくまでも噂だし解ったら解ったで余計に命を狙われかねないし・・・私とて彼と同じ王族の人間、この槍に賭けても私は彼を護り通さなきゃ・・・)」

うつむきながら考え込むルチル、彼女の胸にはジェムカを護る事と妹を探す事でいっぱいになっていたがそれでもまだ気になることもあった・・・なぜジェムカは自分が王子である事を忘れているのか、アスティル滅亡が内乱であるなら誰が彼を逃がしてくれたのか・・・色々と気になるところは多いがそんな事をいちいち気にしていたら戦いになんて集中できるはずはない、その事を悟っている彼女にとって今は気にするべき物ではない事も解っていた

「こういう時・・・魔導能力を持つ人達はどうしてこうも無力なのかと考えてしまう・・・・・・私がもっと強かったらラキルとはぐれないで済んだのにって後悔してる・・・」

「・・・・・・そう言えばベルステルにはその魔法を武器につける能力があるって聞いたけど・・・それを扱えるのは開発者である君だけのはずだね、それでも・・・軍には勝てなかったのか?」

「・・・魔導武器(インストール)の事を知っているなんて・・・あんたただ者じゃないわね、そうよ・・・ベルステル・・・・・・ううん世界中どこを探してもこんな能力を使うのは私だけでもね・・・魔導武器だって私がただ国のために作ったものじゃないのよ、私が・・・私であるための能力だと想うんだ・・・これさえあればラキルを護れると想っていた・・・でも実際は違ってたわ・・・私はラキルを護るどころか国さえもなくしてしまった・・・それがこの力を得た代償だと想っている」

「・・・ルチル・・・・・・」

「ルチルは悪くないよ、君は力を純粋に求めてここまで来たじゃないか・・・妹さんだってきっと無事だよ・・・・・・そう想えるうちは心は折れていないんだ」

「ジェムカ・・・あんたって変わってるのね、もう少し・・・ラキルの無事を信じても・・・・・・いいのよね・・・私はまだ・・・ここで立ち止まっちゃいけないのよね」

ジェムカの言葉で涙を流しながらもようやく自分の行く道を見つけたルチルは2人と共にエアルクを目指すことを決意する、妹を見つけて国を再興させるため・・・そしてハルニム帝国を倒すため逃げた時に握り締めた槍を強くその手に掴み歩き出した、しばらく歩いて行くうちようやく砂漠の出口にたどり着くとやがて3人は街に到着する・・・

「エアルクまではかなり掛かるようね、後2日ってところかしら」

「本当はドラゴンで来れればすぐだったんだけど先の戦争でみんな逃げ出しちゃったものだから・・・」

「・・・・・・そ・・・そうだったの、でも今のままではエアルクも危ないのは確かね・・・」

「そうみたい・・・だね」

「まぁ・・・国王なら心配要らないと想うよ、国だって国王が何とか持ってくれてるようなものだし・・・」

「そうでしたね・・・国王殿は今も元気でいますか?」

「ええ・・・今のままなら倒れる事はまずありませんよ・・・・・・よほどの事がなければね」

「・・・・・・そう・・・ところでリーチェさんは・・・エアルクを護るためにお亡くなりになられたんでしたね・・・風の噂で聞いてます」

「・・・マスターの事は・・・・・・俺も死んだ事自体信じられないけど、忘れろと言われてそう簡単に忘れるわけにいかないもの・・・」

「貴方は確かリーチェさんの弟子として育てられたのよね・・・これも聞いてはいるけど、貴方がいつまでも落ち込んでいたらリーチェさんも浮かばれないわ・・・」

「・・・そうだよね、初めてリゼルグに逢った時もそう言われた・・・やっぱり俺・・・マスターを忘れるなんて出来ないからまだ戸惑っているんだと想う・・・」

うつむきながらも戸惑いを隠すように歩くジェムカは上の空に近い頭の中で色々と想いをめぐらせていた・・・だが今の彼ではそう簡単に答えを引き出せるほど簡単ではない事もすぐに理解する普通なら「もっと自分に力があれば・・・」とか「自分にはまだ何か足りないからこんな事になった・・・」で済む所だがジェムカやルチルの場合はそうもいかない、ジェムカは育ててくれたリーチェを失いルチルは唯一の肉親であるラキルと別れてしまっているのかショックは大きい、2人とも何かを成し遂げる前にこのような事態になってしまったためであろう

「今日はもう休んだ方がいい・・・明日明後日には何とかエアルクには付くはずだよ、それに・・・まだ俺達もこれからなんだし・・・・・・ね」

優しく諭すようにリゼルグは2人の肩を軽くたたき自分の想いを胸にしまいこむように2人を連れて宿を出た

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2006年9月23日 (土)

第1部(第6話)

夜明けと共に街を出た2人はエアルクを目指すため一路少し遠回りだがエアルク傘下国のベルステルのあるヴォルガント砂漠を抜ける、ベルステルも最近は戦争で多くの魔導師達を失いながらもなんとかやっているような状況だとリゼルグは聞いている・・・自分も多少ながらも魔導師の血を引く人間であるが故どうしても気になってはいたはずだった

「どうかしたの・・・リゼルグ?」

「あ・・・ごめんなんでもない、ただ・・・嫌な予感がするんだ」

「嫌な予感・・・?」

「うん・・・なんかベルステルで恐ろしい事になってるんじゃないかなって想ってるんだけど、俺の想い過ごしだね・・・きっと」

「・・・・・・そう、でもあまり気にしないほうがいいよ・・・リゼルグには今俺がいるじゃないか・・・」

リゼルグの後ろでぎゅっとその背中を抱きしめるジェムカ・・・しばらく走ると馬は突然動きを緩めやがて止まる、どうやら体力が切れて座り込んだらしい・・・だがベルステルからはかなり遠く砂漠を抜けるにもまだかなりの距離がある、当然の事ながら砂漠を馬1頭が抜けるには少し無理があったらしい

「仕方ない・・・本当はもう少し行けばオアシスがあるはずなんだけどこれでもまだ少し距離があるなぁ」

「・・・・・・!?」

馬を下りて辺りを見回した時、ジェムカは誰か倒れているのを見つける・・・2人はそこへ駆け寄り砂に埋もれかけた人影を救い上げるとそこには2人と歳の近い女の子が1本の槍を握り締めたまま意識を失っていた、このままでは彼女の命のほうが危ないと悟った2人は彼女を乗せると馬を何とか少しでも歩かせる・・・・・・しばらくしてオアシスにたどり着くとリゼルグは着ていたマントを彼女の体に掛けてやり回復を待つ事にした

「この子・・・ベルステルの人かな?」

「だね・・・彼女はおそらくその王族の血縁を持っていると見て間違いないよ、彼女の持っている槍は確かかつてベルステルと親交のあったアスティル国からもらったものだそうだよ・・・アスティルはもうとっくの昔に亡んだって話らしいんだけど俺が聞いた話では内乱が元でアスティルが亡んで王子も行方不明だって事くらいなんだ」

「へぇ・・・(なんだろう・・・この話・・・・・・俺知ってる気がするけど・・・想い出せない、ううん・・・何か想い出しちゃいけない気がする・・・今想い出したらきっと・・・・・・)」

ジェムカは想わずリゼルグの話に戸惑いの表情を表す、一瞬幼少の頃に失った記憶の断片を垣間見るように何かが頭の中をよぎった気がした・・・それを口にする事さえも戸惑うように

「・・・・・・ここは・・・そうだ、ラキル・・・ラキルは!?」

2人の背後で彼女は眼を覚ました・・・誰かを呼んでいるかのように叫ぶと辺りを見回し自分が今どこにいるのか一瞬思考が止まるがジェムカとリゼルグの姿を見るとそこへ駆け寄りリゼルグの肩を掴みながら探していると想われる者の事を聞き出す

「ねえ貴方達、ラキルを・・・私の妹を見なかった!?」

「妹・・・?」

「・・・・・・いいや、俺達が見つけたのは君1人だ・・・ラキルと言うのはあなたの双子の妹さん・・・・・・だね?ルチル・エルドリヒ・・・ベルステル国の第1女様」

「え・・・この子・・・お姫さまなの!?」

「よく知ってるわね・・・確かに私は・・・・・・私達はベルステル国の皇女だったわ」

「・・・だった・・・・・・って!?」

「数日前に・・・ハルニム帝国の襲撃に遭ってベルステル国も亡んだのよ、父上も母上も殺された上街の人達の殆ども帝国軍に殺されたわ・・・何とか私はこの槍と妹を連れて逃げたんだけど砂漠を抜ける途中で軍に襲われて妹は・・・行方が解らなくなったの、気が付いたら私1人・・・妹は生きているか死んでいるか解らない状況で私もいつ死ぬか解らなかった・・・・・・」

「確かに・・・俺達が君を助けなかったら君はとっくの昔に砂漠に埋もれている所だったね・・・その亡骸もろとも」

「私はまだここで死ぬわけにいかないのよ・・・お願い、帝国を倒すのに力を貸してほしいの・・・・・・貴方達エアルクの人でしょ?このマントに付いている紋章が何よりの証拠、お願い・・・私に力を貸して」

彼女は懸念するように2人を見る・・・同じ帝国の名を持つ国でありながらここまで残虐な行為を繰り返すハルニム帝国・・・その存在はジェムカにとっては避けて通れないものでもある事はまだ知らない・・・だがこれから先3人に待つ運命は大きな運命の輪を動かす事になる・・・・・・

ルチル・エルドリヒ 15歳「10月17日生」
・西側の元ベルステル共和国王族で魔導武器「インストール」を編み出した人物、双子の妹ラキルと共に亡命するもカルセア軍から逃げ延びた時妹を連れ去られヴォルガント砂漠で倒れている所をジェムカ達に助けられ妹を助けるため旅をする事を決意、ボルクを倒すために自らアスティル国王から譲り受けた槍を握る

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2006年9月16日 (土)

第1部(第5話)

インセルを出発して最初の夜、小さいながらも人の住んでいる街にたどり着いた2人は宿へと向かった

                                                                                                                                              

「このペースだとあと2日は掛かる、途中にはヴォルガント砂漠があってその先にはベルステルって言う国があるんだ」

「ベルステル国か・・・砂漠の国としては有名だってマスターから聞いてるけど、俺も近づいた事ないから解らないや」

「リーチェは世界情勢の事はあまり君には教えてはくれなかった様だね、彼女もあまり世界の事を知ってると言うわけじゃないから仕方のない事だとは想うけど・・・(やはりリーチェは何かを隠してる・・・俺達にもジェムカにも教えなかった何かを・・・と言う事は、ジェムカはリーチェがただ引き取った孤児じゃないと言う事なのだろうか)」

リーチェの考えている事はますます謎を深めリゼルグの頭の中では様々な考えが混ざり合っている状態だ、本当はリゼルグ自身ジェムカの招待を知りたいと言う好奇心は多少はあってもそれを知るのが怖いと言う恐怖感が勝っているため聞くのが怖く感じている・・・なぜリーチェはそこまでしてジェムカの事を隠したがるのか、彼の正体を知っているのはおそらくリゼルグの知る中でも彼女だけだった事もそこで裏付けられる

「ベルステルは確か魔法っていう力を使うんでしょ?」

「ああ・・・魔法はエアルクでも生まれつき魔力を引き出す力がある王族のみが魔法を使うんだけど、ベルステルはヴォルガント砂漠から魔力を抽出する技術を持ってるから少し違うみたい・・・でも砂漠の魔力はベルステルの王家が代々技術を護ってるから砂漠の砂を持ち出してもそれだけでは魔法を使う事は不可能なんだって」

「そうなんだ・・・なんか俺ってば知らない事ばっかりで冒険を続けてたんだな、リゼルグの話を聞いてたら・・・それを改めて思い知らされたよ」

「・・・とは言えベルステルも今危険な状況らしいからね、俺達も気をつけて砂漠を渡らなきゃ」

「そっか・・・それは大変だね、エアルク行く前に様子を見に行っちゃ・・・・・・だめかな?」

「それはかまわないよ、国王命令でベルステルの様子を見て来いって言われてるし俺としては問題ないと想う・・・ただこっちのパーティは2人しかいない分1個小隊より危険も伴う、本当にやばかったらすぐ引き返すからそのつもりでね」

魔法の力はこの世界ではある種特別な力で魔法を利用した技術も様々な形で開発が進んでいる、とは言え魔法技術そのものが進んでいるのはベルステルとエアルクのみでそれ以外の国は魔法を使わない(存在を知らない)か使い方を知らない、あるいは魔法技術の開発そのものが遅れていると言うことも考えられた・・・だが近年南側の国ヘスタルトやシェルガでも進んでいて他の国よりも魔法技術の高さや向上性など評価されつつある国も現れてきているため更なる魔法の利用法も世界中では論議されている、当然悪用しようとする輩も少なくないのも現状であるが・・・・・・

「実を言えばね・・・魔法の事は俺も何度かの冒険で存在は解っていた、でも本質まではよく知らないでここまで来ちゃったから・・・俺みたいなのでも使えるかどうか不安なんだ、リゼルグは・・・魔法使える?」

「俺?どうかなぁ・・・魔法を使えるかと言う事自体家系で決まるとは限らないし物によってはジェムカも使えるんじゃない?」

「そう・・・かな?」

「俺はそう想うよ・・・」

リゼルグは微笑みながらジェムカの頭を軽くなでる、リゼルグにとって今出来ることは数少ないと自分でも悟ってはいるがそれでもジェムカの力に少しでもなりたいと言う気持ちに変わりはないだからこそ隠しておかなければならない事もあった・・・自分が魔導師の家系であるにも関わらず魔法より剣を取った事、そしてそれが元で家族を危険に巻き込んだ事・・・正直後悔はしたけど今の彼にとって後悔した以上の想いをその剣に込めた事が誇りである事を知った・・・・・・

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2006年9月10日 (日)

第1部(第4話)

エアルク帝国を目指すため進みだした2人は西へ向かって馬を走らせる・・・目指すエアルクともといたインセルとではかなりの距離があり城下町としても一番遠い、それゆえ移動能力の早い生物と言われるドラゴンですら丸1日はかかるほどだ、リゼルグはリーチェの死後すぐにインセルへ向かいそしてジェムカと出逢うがそれまでにも約1週間以上は要している

「疲れたかい?君は馬に乗ったことなんてあまりないだろう・・・ここで少し休もうか」

馬を下りたリゼルグはジェムカの手を引き馬から下ろすと草原の近くを流れる川で休む事にした、川の水はとても冷たくこれから先へ向かうジェムカ達にとっては心地のいいほどの冷たさと優しさを兼ね備えている

「え・・・あ、うん・・・・・・ところでリゼルグ・・・今のうちに聞いておきたいんだけど・・・・・・・」

「なんだい?」

「その・・・えっと・・・・・・マスターは最後になんて・・・言ってたのかな、なんて・・・ごめんね・・・変な事聞いちゃって」

ジェムカはリゼルグの方を向くと一瞬自分の言葉に赤面する・・・だがそんな彼のぎこちない言葉でもリゼルグはやさしく答えてくれた、内容はそれほどいいものではなかったが・・・

「リーチェは最後に・・・『ジェムカに会ったら・・・・「私の事は忘れて欲しい・・・」と伝えて欲しい、きっとあの子にとって私の存在はこれから先重荷になるやも知れないから』そう言って俺の手を握ったまま死んだよ・・・でも彼女の死に顔は後悔なんてしてないって顔だった、むしろ・・・何かを成し遂げて満足してたって顔だったよ」

「・・・・・・どうして・・・」

「・・・・・・ジェムカ?」

「どうして・・・俺がマスターの事忘れなきゃならないの?どうしてマスターのことを忘れる必要があるの?・・・俺はずっとあの人から剣を教わったんだよ、なのに何でいまさらそんな残酷な事を言うんだよ・・・」

リーチェに「忘れて欲しい」と言われた事でジェムカは想わず涙を流す・・・リゼルグ自身も本当はジェムカにそう聞かれるまで話す事をずっと躊躇ってもいた、もしそれがリーチェの願いであってもジェムカが納得するはずなんてない、それに・・・リゼルグ自身ジェムカの事はリーチェからしか聞いていないため殆ど彼の本当の姿を知らない・・・だからこそリゼルグはそんなジェムカの悲しい顔を見るのが・・・何よりも辛かった、だからと言ってここで全てを投げ出すほどリゼルグは無責任な男ではない・・・だからこそリーチェはリゼルグにジェムカや騎士団の事を託していたのだ・・・自分が成しえなかった夢のために

「(リーチェ・・・あなたはなぜそこまでして彼を・・・・・・ジェムカを想うのか、今なら解る気がします・・・でも今の俺では全てを解るほど彼を知らない・・・・・・だからこそ俺は彼を護ろうと想っているのです・・・たとえ・・・何があっても)」

ジェムカに対する想いを胸にリゼルグはそっと彼の肩に腕を回す、リーチェは自分の死をどう想ったのかを知っているのは自分だけ・・・と言う皮肉気な事実もあってか内心罪悪感にも追われたがリゼルグにとってそれはジェムカと自分を繋げるひとつのきっかけに過ぎない事も知る事になった、もっともリゼルグ本人は自分がどうしていいのかまだ迷ってはいるがジェムカを想う気持ちに変わりはない・・・それは彼も解っている事だ

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2006年9月 3日 (日)

第1部(第3話)

リゼルグの乗った馬は主人が来るのを待ちわびるように首を振るわせる、愛馬の頭をなでてやるとリゼルグはジェムカの腕を引き馬の背に乗せる

「こいつは比較的おとなしい性格だから心配しなくていいよ」

「・・・あの・・・・・1つ聞いてもいいかな?」

「なんだい?」

「・・・・・・どうして俺なんかの為に、ここまで・・・」

「・・・何言ってるんだい、これからじゃないか・・・俺は君のためだったら何だってやるってリーチェと約束してたしそれに何より・・・・・・君に興味があるから

・・・って言ったら君は信じてくれる?」

「・・・・・・解らないけど、リゼルグは悪い人じゃない事くらいなら俺には解る」

リゼルグの言葉に一瞬顔を赤らめ思わず顔を背けるジェムカ、2人で1頭の馬に乗り込みエアルクを目指すためインセルを離れる・・・

「ジェムカ・・・本当に行くんだね?」

「うん・・・俺やっぱり行く事に決めたよ、それに・・・リゼルグと一緒なら何か・・・・・・やり遂げられそうな気がするんだ」

「そうかい・・・気を付けて行くんだよ、何があっても決して挫けるんじゃないよ」

「ありがとう・・・」

「さびしくなったりしたらいつでも戻っておいで、あんたの家は・・・このインセルなんだから」

「・・・・・・うん、俺・・・絶対無事に戻って見せる」

リーチェを慕っていた街の人達はジェムカの旅立ちを静かに見送った・・・街を出るまでの間最後にジェムカを見るため半数近くが集まりいつか彼が戻ってくる事を祈りながら遠ざかる馬を見守るだけだった、街の手前まで彼らを見送る長老はかつてリーチェと交わした約束の事をふと想い出している・・・あれはリーチェがジェムカを連れて街に来た時の事だ

「長老・・・私はこの街で彼を・・・・・・ジェムリクア王子を護ろうと想ってます、ただ彼は王子としての記憶を失っているようで・・・今は私が彼を弟子として育てる事にしました・・・・・・ジェムカ・ランクスとして、長老お願いです・・・ジェムカの事は私と貴方だけの秘密にしていただけないでしょうか・・・・・・今王子の事が知れればまた命を狙われかねない、ならばいっそ・・・王子である事を知らないまま育てられた方がまだ幸せです、でもいつか時が来れば彼は本当の自分を探す事になる・・・それまででもいい・・・・・・私は彼を無事に自分の道を歩ませたいと想っているのです」

「リーチェ殿・・・貴方がそこまでおっしゃるのなら約束しましょう、ですが・・・よいのですか?エアルク1の騎士である貴女がいきなり子供を育てるなど・・・」

「・・・私とて不安がないわけではない、ただ・・・子供の未来を護るのもまた騎士の使命・・・・・・私の父の教えです・・・それにあの人の事もあったから私は決めたのですよ」

「そうであったか・・・ではリーチェ殿には酒場の上の階にある空き部屋を用意させましょう、あそこなら情報もすぐ集められる」

「ご協力・・・感謝します」

「(あれからもう10数年・・・ジェムカ殿は立派に成長された、だがリーチェ殿は命を賭けてボルクの野望を阻止するべく立ち上がり・・・そして散っていった・・・・・・ジェムカ殿がリーチェ殿を失った悲しみはあまりにも深く重いものになってしまったがジェムカ殿ならきっと乗り越えられる・・・私そう確信しているよ)」

杖を強く握り締めながら長老はそのまま姿が見えなくなるまでその場を動かなかった・・・やがて馬の走る音も遠ざかり人々はいつもの生活に戻る、そして長老も家に戻るため歩き家の前に置いてある揺りイスに腰掛け静かに街の様子をいつものように眺めながらも暖かい日差しの中で飽きる事のない日々を繰り返している

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2006年8月26日 (土)

第1部(第2話)

自分を育ててくれた師リーチェ亡き後自分の行く道を見失いかけたジェムカはエアルクの騎士団長リゼルグと共にエアルクへ行く事を決意、旅立ちの朝を向かえ2人は同じベッドから起き上がる

「・・・いよいよ・・・・・・だね」

「・・・・・・なんか・・・久しぶりだな、寝る時に誰かがそばにいてくれたの・・・マスターは俺が寝るまでずっとそばにいてくれたのが懐かしいよ」

「リーチェは面倒見のいい性格だったからね、彼女は・・・君を拾ってから騎士である事を捨て母として君を育ててたんだ・・・きっと」

「そう・・・なんだ」

「俺は今でも惜しい人を亡くしたと想ってるよ、彼女のような人なら・・・ずっと一緒にいたいとも想うし」

「リゼルグも・・・そう想ったの?」

「・・・・・・いや、俺では無理そうだな・・・何しろ年が離れすぎてる」

ベッドを降りたリゼルグはジェムカの前で身支度を済ませるとジェムカの前に手を差し出す、ジェムカも差し出されたその手を握り締めベッドから降りるが勢いが付きすぎてリゼルグに飛び込むように倒れこんだ

「・・・やっぱり君は俺が護らなきゃダメだね、君1人でよく旅が出来たとは想いたいけど・・・・・・君にはまだ誰かの力がいる」

「俺って・・・・・・そう想われちゃうのかな?」

「ああ・・・多分、それに・・・・・・君みたいな子を放って置くほど周りの連中は黙ってないよ」

ジェムカは立ち上がると簡易鎧(プロテクト)の近くに立て掛けてある剣を眺めふと想った・・・師であったリーチェが始めて自分に剣を教えてくれた時の事を、そしてその時にもらった剣と防具が今時分の目の前にあってそれが長い間自分と戦ってくれた事を・・・・・・

「随分と感傷に浸ってるね、やっぱりリーチェは君にとっていい師匠でいたの?」

「・・・なんて言えばいいか解らないんだけど、俺にとってあの人は多分師匠である前に母でいたと想う・・・あの人に拾われる前までの記憶が殆どなくてね、解っているのは燃え盛る炎と斬りつけられる人々・・・それから・・・・・・凍りつくような恐ろしい男の笑顔、まるであれは・・・人殺しを楽しんでるような眼だった・・・・・・それが誰なのか・・・想い出せない」

ジェムカはリーチェに拾われる前の・・・幼少の記憶はほとんどない、自分は本当は何者で何のために今までこうして生きているのか・・・そしてこれから自分がどこへ向かうのか・・・・・・出発を直前にして不安が募る、だがそんな彼をリゼルグは優しく後ろから抱きしめた

「君は・・・これから自分の記憶をたどればいい、自分の本当の姿を探せないなら・・・俺も手伝うから・・・・・・だから心配しなくていいよ」

「リゼルグ・・・でも・・・・・・」

「君が何者であろうとも・・・俺は君を護る、君と逢った時からそう決めたから・・・」

リゼルグの言葉を聞きジェムカは一瞬俯きながらもその眼から小さく零れた雫がリゼルグの鎧の篭手にぶつかる・・・一瞬の出来事だったがリゼルグは何かを感じたのか心の中で彼に対する暖かい感情が芽生える・・・その想いがさらにジェムカを愛おしく感じさせる、リゼルグはそれが「何か」を知らない・・・知らないからこそ彼もまたそれを知るために旅に出る・・・もしかしたらジェムカを傷つけてしまうかもしれないと言う恐怖と戦う事を覚悟で・・・・・・今リゼルグが想っている事は国の事と・・・目の前にいるジェムカの事だけだった

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2006年8月20日 (日)

第1部(第1話)

さすがにこのまま放っておくには忍びないので早速小説を載せようと想います(なおこの文はご挨拶と代えさせて頂きますのであしからず)

全ては1つの国が消えた事から始まった・・・国王の死と同時に反乱が国の各地で起き王子は自ら生き延びるために国を出た、正確には反乱を起こした者達から追われたためだが彼は単身滅び行く自分の国を眺めながら何を想うでもなく全てを忘れるようにその場を去っていった

月日が流れ・・・その国のあった場所に新たな国が作られた、それまでの王族を追い出した者達で作られたその国は新たな政権を打ちたて歴史の中で紡がれた悲劇を打ち消すかのように世界の大半の国がその国と同盟を結んだ・・・だが偏狭の国やそれらに反発する国にとってはあまりいい事ではないのか同じように別の同盟を結ぶと均衡が一気に破壊されるように再び戦争の火蓋が切って落とされようとしていた・・・・・・

世界の東の果てにある「インセルの街」・・・そこには一人の青年が剣1つで数々の冒険を繰り広げ焼く数年ぶりにこの地へ戻ってきた、幼少の頃の記憶のない彼はとある女騎士に拾われ持っていたペンダントから『ジェムカ』と名づけられ剣士として育てられる、だが彼が今回の冒険に旅立つ前に彼女は戦争に向かい死んでいった・・・その時ジェムカは彼女が死んだ事を知る由もないが出先の港町でその噂を聞きやっとの思いでインセルへ戻ってきた

「マスター・・・本当に死んじゃったんだね、俺未だに信じられないよ」

ジェムカにとって自分を知る人間は彼女だけだったが突然の死により彼は行き場をなくしたかのように彼女と暮らしていた酒場の部屋で閉じこもりきりになるとしばらく出ることはなかった

「ジェムカ・・・これで1週間出てきてないねぇ」

「下手したら体壊すかもしれないと言うのに・・・参ったわねぇ」

街の人達も気が気じゃないようなざわめきを立ててはいるもののこれ以上声を掛けて何になるのかと想っているのか酒場でもあまりにぎやかな声は聞こえない・・・・・・そんな毎日が繰り返されるかと想われていた、そして・・・・・・しばらく後ジェムカを拾った女騎士の知り合いと言う「エアルク帝国」の騎士団長がインセルへと入ってきた

どうやらジェムカの噂を聞きつけ遥か遠くから来たのだろう、彼の乗っていた馬は少し息を切らしていたが酒場の主人の差し出した水を飲むとそのまま座り込み眠る

騎士団長はその間酒場のカウンター横にある階段を昇ると突き当たりにある部屋の前に立つ・・・そこはジェムカの部屋だった

「ジェムカ・ランクス君だね・・・私は君を拾ったリーチェの古い友人でリゼルグ・ガルトと言うものだ、君の事を風の噂で聞いてここまで来たのだが・・・・・・」

彼の言葉を聞き、ジェムカはリゼルグのいるドアを開けようとするが一瞬躊躇う・・・彼は自分以上にリーチェを知っている・・・それだけで信用出来るはずもない事を心のどこかで想ったのだろう・・・ドアノブに手をかけようとする手が思わず震える

「ジェムカ聞いて欲しいんだ・・・私は君をわがエアルク帝国に迎え入れたい、そして私の騎士団に入ってリーチェの教えたその剣の腕を私達のために使って欲しいんだ」

「・・・そんな事出来ないよ、だって・・・マスターは死んだんだよ・・・・・・それなのに俺に何が出来るって言うんだ!もう・・・何もかも捨てたい・・・・・・放っといてくれ」

「・・・・・・その剣の腕前があったから君は冒険を続けられたんだよね、実は俺も君と同じようにリーチェから剣を教わってね・・・おかげで騎士団長になったはいいけど本当にそれが俺のためになるのかって聞かれるとちょっと迷うな・・・どうだろう、エアルクへすぐに行こうって言うわけじゃない・・・俺と一緒に旅に出ないか?そういった名目なら君もリーチェの事で悩む必要もないし何より彼女は俺達の成長をずっと見てくれると想うんだ・・・どうだろう?」

「(・・・マスター・・・・・・俺はどうすれば・・・)」

ドア越しで壁に寄りかかりながらジェムカは考えていた、このまま閉じこもっていても何も始まらない事は解っていたはず・・・でもリゼルグを完全に信用したわけじゃない

彼が本当にエアルクの騎士団長であったとしてもなぜ彼が自分のためにこんなところまで来たのかと頭の中で想わず考え込んでしまう、そう想った時ふとリーチェの残した言葉を想い出して見た

「世界の全ては自分ひとりで作れるものじゃない、自分の世界を自分ひとりで作れる人間なんていやしないのさ」

「・・・・・・?」

「全てを生かすも殺すも・・・自分を育てるのも手放すのも全て自分だけでは出来ない事なのさね、アタシは今まで全て自由になれないことを悟ったよ」

「全て・・・自由に・・・・・・」

「アンタにはまだ解らないだろうけど、人間なんて不器用な動物に過ぎないんだ」

「・・・マスター・・・・・・」

ジェムカの眼からは下に目線を向けた先に小さな後をいくつもつける、思わずその場に座り込みドアノブの真下にあった魔力制御(ロックチェイン)が解除され扉が開く

リゼルグは突然開いたドアの先で泣き崩れるジェムカにそっと寄り添うとその目の前に手を差し出す

「・・・・・・ジェムカ、泣かなくてもいいんだ・・・君はもう1人じゃないだろ」

「・・・リゼルグさん・・・俺・・・あの・・・・・・」

「リゼルグでいいよ、それに実質俺のほうが君より1個下だし」

「・・・・・・あ・・・あの・・・」

「・・・それに、本当言うとね・・・・・・リーチェが戦場で死ぬ間際に俺・・・君の事頼まれてたんだ・・・・・・その遺言のために俺はここまで来たってわけ」

「でも・・・・・・いいの、かな・・・?」

「大丈夫、君はこれからが本当の意味での始まりで・・・俺はそれを手伝うに過ぎない」

「・・・・・・」

「さぁ・・・行こう、エアルクへ・・・そして、君の未来へ」

リゼルグに励まされると一瞬躊躇いながらも彼の手を取るジェムカ、彼らはこれから先自分達の運命を決める冒険へと出発する・・・・・・だがこの時彼らは知らない・・・この世界を巻き込むほどの想いをお互い伝える事を

リーチェ・ランクス 46歳(享年)「5月7日生」
・ジェムカを拾った女性騎士、ジェムカを拾った時騎士を引退をした後ジェムカに剣を教える、彼が旅に出る前後に再び騎士として戦争へ向かい戦死する
ジェムカ・リゼルグの剣の師匠でエアルク帝国で彼女の腕前を知らない人はいない

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2006年8月14日 (月)

想った以上に・・・

キャラのイラストを公開したいのですがメインキャラのイメージが思い浮かびません(爆)私としてはストーリー毎に挿絵を・・・と言うのは難しそうなので出来ればキャラだけでも載せたい所です(でないと書いてるこっちもストーリーを創造できないかと・・・)こっちはもうほぼ見切り発車に近いような状態なのでなんていっていいか解らない所ですね(笑)

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2006年8月12日 (土)

メインキャラ紹介&第1部あらすじ

黎明のカタルシスは私達リュシフェルジェネレイションにとっては初めてのオリジナルBLストーリーとなります、ちなみに内容は私達お得意(?)のファンタジーものになりますが応援よろしくお願いします

第1部 「終焉と始まり」

1つの国が滅び新たな国が作られる・・・だがそれは新たな終焉への幕開けに過ぎない、青年は仲間達と共に戦いその先に待つ真実を手にする・・・・・・

メインキャラ

ジェムカ・ランクス(ジェムリクア・レイス・アスティル) 17歳「6月28日生」
・本編の主人公、アスティル国王子であったが幼少の頃に国が崩壊し一人逃亡と同時に王子であった事さえも忘れてしまう、インセルで倒れていたところを師匠リーチェ・ランクスに拾われ持っていたペンダントからジェムカと名づけられる、リーチェの死後彼女の古い友人と言うリゼルグと逢う事で自分を取り巻く運命を変える事になる

リゼルグ・ガルト 16歳「9月13日生」
・エアルク帝国の騎士団長、先代の騎士団長リーチェにも負けない腕前は帝国近辺で知らぬものはいないほど、近隣の国でジェムカの話を聞き彼と共に旅をする事を決意する・・・そして冒険を進めていくうちジェムカに対する特別な感情をが芽生えさせるが・・・

この2人を軸にストーリーを展開、BLらしい展開を見せたいのですがWebではちょっと落ち着かせぎみな感じでやってます(同人誌版ではもちろんマジでBL主体に修正して出します)ちなみにストーリー本編では最後にそれぞれの部の主要登場人物の紹介を1人ずつ紹介しますので乞うご期待(爆)

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2006年8月11日 (金)

「黎明のカタルシス」あらすじ

メンバーの書き込みも一通り終わったので今日から「黎明のカタルシス」を載せる事になりました!とはっても今週末はあらすじとキャスト紹介でストーリーはその後になりますのでその辺はご了承のほどを・・・(何しろアッシュと相談した結果の通りなので・・・)

黎明のカタルシス

「全ては絶望から生まれ、そこから希望を作り上げる」

自分が王子である事を知らないまま育てられたジェムカ、リゼルグや旅で知り合った仲間達と共に本当の自分を探すため戦う・・・・・・だがそれは悲劇を目の当たりにした事を知らない自分を見つける旅でもあった・・・それを知った時自分は果たして自分のままでいられるだろうか、そして・・・ジェムカのたどり着く未来とは・・・・・・

「PARADOX LABYRINTH」が送るBLドラマ第1弾! 

原作:アスカ 神羅(リュシフェル・ジェネレイション) 

シナリオ構成:アスカ 神羅・アッシュ(リュシフェル・ジェネレイション)

と、このようになっています・・・ちなみに「Cafe’d Lucifer」では小説を載せる事自体企画されていませんのでその辺はあしからず(笑)

明日は第1部のあらすじとメインキャラを紹介します

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