ルチルを探しに彼女が最後に向かった方向へと走るものの見失ってしまったジェムカはひとりで街中を彷徨っていた
「あーあ・・・ここどこなんだろ、ルチルどころかリゼルグもソムニルもどこにいるか解らないし・・・・・・どうしよ」
マツカゼは東側の国々の中でも勢力が大きく街も広い上に右も左も解らないと大半は迷子になるほど入り組んでいる、ジェムカ自身王子でいた頃は何度か国王であった父親に連れられた事はあったはずなのだが記憶がない上に最後にマツカゼに来たのがかなり昔の話のせいか何度も同じ所を回っている始末だ、それだけならまだいいがその頃は殆ど街中を見て周るほどの余裕もなかったのか街中を殆ど知らないのがさらに災いし30分ほど歩いただけで10箇所近くの袋小路を回りながら歩く羽目になっている状態だった、何とか人通りの多い道に出ても今度は最後にパーティの別れた地点に戻っているためまた同じことの繰り返しになる
「・・・・・・リゼルグ?・・・ソムニル?・・・・・・ルチル??みんなどこ行っちゃったんだろ、もしかして俺だけこのあたりから動いてなかったりして・・・」
完全に迷子と確信したのか動揺を隠せなかった、だがこのままではせっかく組んだパーティの意味がないことも解ったのか考え直すために近くの茶屋で休みながら考える事にしたジェムカの隣にはお茶をすすりながら物思いにふける女性がいた、彼女は誰が見ても美人に入る様な容姿とそれに似つかわぬほど立派な刀をいつも携えている・・・その瞳はまるで何か強いものを追い求めるかのように鋭く・・・そして残酷なほど輝いていた
「・・・(綺麗な人だなぁ・・・マツカゼにこんな人がいるんだ)」
ジェムカの視線に気付いたのか彼女はふとこちらを見る、想わずジェムカは赤面し目線をそらすが彼女はそれに対し何事もなかったかのように話しかけてくる
「お主・・・マツカゼは初めてか?」
「え・・・あ・・・・・・まぁ、でも・・・本当は俺1人で来たわけじゃないんです・・・・・・仲間とはぐれちゃって」
「そう・・・見たところ異国の剣士と見た、拙者とお手合わせ願えぬか?」
「え・・・で・・・・・・でも、俺・・・」
「何・・・剣を持つ者は剣を持ってすればその者の心が解る、これは我が母の教えだ」
「そう・・・なんですか(この人・・・間違いなく強そう、こんな人相手に俺勝てるわけないよ・・・・・・)」
完全に彼女の気迫に負けたジェムカは彼女の言葉通りその場で剣を取る羽目になった、とは言えジェムカもエアルクの騎士であったリーチェから教えてもらった剣がある・・・ただ彼女はただの剣士とは違う殺気と剣士としての心構えがあった、それがジェムカと彼女の大きな違いでもあるが勝負となれば実際にやってみないと解らないもの・・・・・・成り行きで受けてしまった勝負事にかなりの戸惑いは見られるものの男としてはやはり戦わなければならないと言う想いも多少はあるらしい・・・かは解らないが2人が戦うその様子を見ようとする周りの人達も水を打ったように静まり返っていた
「言っておくが拙者は手加減せぬぞ、相手が何者であろうと・・・」
「・・・・・・そうだよね、でないと・・・真剣勝負の意味がないもの(って・・・この人確実に強そう・・・・・・成り行きで受けてしまったとはいえやっぱり怖気づいたらこの人に悪いよな、仲間の事も大事だけど・・・やっぱり今は戦いに集中しなきゃ)」
「また・・・がやってるよ」
「あの彼も可哀想だね、彼女と戦って勝てた人いないのに」
「お主のほうから来ても構わぬ、それまで拙者は剣を抜かず待つ事にしよう」
周りの大半は見慣れているらしくひそひそと話している様子も伺えるがジェムカにはそれが殆ど聞こえていなかった、彼の頭は殆ど彼女との戦いでいっぱいなのか周りを気にするほどの余裕など殆どなかった、一陣の風が舞い数枚の木の葉が2人の前を横切った瞬間ジェムカの方から動きを見せる
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ジェムカが駆け込んだ瞬間、彼女は持っていた剣を鞘から抜きジェムカの剣を受け止める・・・剣が当たった瞬間ジェムカは両腕から全身に衝撃を受け倒れこむ
「わぁぁぁ!」
「勢いはいいようだがその程度では拙者を倒す事など不可能だ・・・だが腕自体は悪くない、今のお主は・・・・・・迷いが多すぎる・・・ただそれだけだ」
彼女が剣を振り下ろした切っ先はジェムカののど元に突き刺さらんとばかりに光を帯びていた、一瞬怖気づくもジェムカは何か不思議な安著感も覚えていた・・・それは命が助かったと言う安心感と言うより彼女に見透かされた事で何かを悟ったような感覚だった・・・彼女は鞘に剣を収めるとジェムカも立ち上がり同じように剣を鞘に戻す、剣から手を離した瞬間彼はさっきまで戦っていたその両手が震えていた事に気付く・・・恐怖と不安が招いたその震えはまるでさっきまでの自分を写しているかのようにも見える
「・・・・・・あの、あなたは一体・・・?」
「拙者はただのしがない剣士、お主が気にする必要もない」
やがて周りにいた人達もその場から離れいつもと変わらぬ日々に戻る、彼女もまた同じように先ほどの場所でお茶を飲み物思いにふける・・・がジェムカはそれだけで納得する事が出来ず彼女の隣で考えてみる事にしてみた
「・・・どうした、まだ何か聞きたい事でもあるのか?」
「・・・・・・聞かせて下さい、どうしたら・・・俺は・・・・・・俺達は・・・その前に何をすればいいのか・・・俺にも解らないんです」
「それもまた・・・人の道、拙者にはお主を助けるだけの言葉は持ち合わせてはおらぬ・・・」
「そうですか・・・」
「それに・・・何もすぐに答えを出せとは誰も言わぬ、答えの出るタイミングなど誰にも解らぬもの・・・それが人というものではないのか?」
「・・・・・・」
先ほどよりは緊張感はないもののやはり不安は消せなかったのか、ジェムカの顔色は明らかに動揺しきっていた・・・それでも彼は自分なりに答えを見つけようと考えては見るがリゼルグやルチル、ソムニルの考えが食い違ってしまってもそれを自分が修復出来るのかとつい想ってしまう、そこから沈黙が続き何を想ったのか・・・しばらくして彼女は立ち上がりジェムカの前に立った
「お主の様な想いは拙者もよく抱いてしまう時がある、もし答えを見つけられないのなら実際にどうあるべきか・・・そこから答えを作ればいい・・・拙者も手伝おう」
「・・・・・・いいんですか?」
「ああ・・・それにマツカゼに吹くこの風も・・・・・・なにやら不穏な気配を運んできている、拙者にはそれが気になって仕方がないのだ」
「・・・そうですか、あ・・・そう言えばまだあなたの名前聞いてなかった・・・俺はジェムカ・ランクスです」
「拙者は・・・春美弥紫乃、よろしく・・・ジェムカ殿」
ジェムカとシノ・・・2人は堅い握手を交わし行動を共にする事を誓った
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